OCEANBLUE 碧い海
第四章
十二月に入り片岡はベースプランをまとめ報告のため勇太郎と一緒に首相官邸の柳田官房長官に指示された午後一時に官房長官室を訪れた、長官室には三名の先客が居た、
「長官、来客でしたら又後にしましょうか?」
「いや、良いんだ皆君の話を聞きに来たんだから」
「あ、そうですか、分かりました」
官房長官と一緒に同席していたのは、資源エネルギー庁の新エネルギー対策課の菅野課長と石油、天然ガス課の山谷課長、原子力安全技術センター技術課の佐々木課長と紹介された。
「皆さん大泉君は知っているから、紹介はいいよね、片岡君、皆さんは君の計画書を確認し画期的なアイデアで素晴らしいと絶賛してますが何点か君に質問したい事が有るらしいから答えてほしい、
「分かりました、何でも聞いて下さい」
「資源エネルギー庁の菅野課長からどうぞ」
「菅野です、はじめまして片岡さん今日は幾つか質問させて頂きますので宜しくお願いします、最初に片岡さんはこの『ハイブリッド・パワーステーション』を何処に造るつもりですか?」
「最初にと考えているのは、茨木県の東海村の沖を考えています」
「それは何故ですか?」
「今東海村の原発は発電していません、しかし送電システムは生きています、『パワーステション』で発電した電力を受け取るには最適です、東京にも近く2020年に開かれる東京オリンピック時に消費される大電力をカバーするにも絶対必要と考えています」
「なるほど良く分かりました、次に二キロ四方の大きな用地に原発をたった一基しか設置しないのはもったいない気がするのですが?」
「それは前に提出した計画書にも記載して有りますが原子炉の他に中間貯蔵施設、再処理施設、火力発電施設職員宿舎などを造る事も有りますが、万が一の時複数の原子炉が設置されていると小さな事故が連鎖的に大きな事故につながる危険が有ります、福島の教訓を日本は生かさなければ世界の笑いものにされます」
「全くその通りですね、私も賛成です、しかし将来の日本の消費電力を計算するとかなりの『パワー・ステーション』を造らないと電力が不足すると思いますが?」
「日本の消費電力を全て原子力にすると計算するとその通りですが、私が考えているのは原発の電力は商業用使用で一般家庭用の電力は天然ガスを燃料にした火力発電でカバーする、もちろん既製の水力発電、ソーラー発電、風力発電も家庭用と考えています」
「なるほど、日本の電力システムを二系統にするわけですね」
「はいその通りです家庭用と商業用を一緒に考えているのが私には不思議です」
「ありがとうございました私の質問は以上です」
次は石油、天然ガス課の山谷課長お願いします
「山谷です、宜しく、今在る原発を全て天然ガスの火力発電に変更するのは電力会社の抵抗が有ると思いますが?」
「電力会社の方はすでに同意書を取って有りますから心配はいりません」
「あ、そうなんですか知りませんでした、行動が早いですね驚きました、何も存じ上げずに申し訳ありません、私はアメリカ・カナダ・ロシアからの天然ガスの供給が安定するように頑張ります」
「機密事項ですのでご存知ないのは、当たり前です、天然ガスの輸入宜しくお願いします」
最後に原子力安全技術センターの佐々木課長
「安全技術センターの佐々木です、どうぞ宜しく、私はスーパー軽水炉はまだ技術的に完成されていないと承知しています、片岡さんはどうお考えですか?」
「確かにスーパー軽水炉は実際に稼働している実績はありませんが日本の将来を支える原子炉としてはスーパー軽水炉以外には最適な原子炉は見当たりません、小型で建設費も維持費も低く抑えられ、発電量は既存の大型原子炉の三基分に相当します、安全性も高く最適と私は考えています」
「分かりました、次に『パワー・ステーション』の位置を安定させる方法を教えて下さい?」
「『パワー・ステーション』は基本的には水深100メーター以上在る海上に位置を固定させます、固定させる方法はアンカーではありません、『パワー・ステーション』は自走能力が有りJPSを利用してコンピューターが常に位置を維持します、放射能漏れ等の事故が発生した場合は『パワー・ステション』自体が安全エリアに移動して人や環境には放射能汚染は起こりません」
「なるほど、自走出来るのは驚きですね、人が避難しないで原発が遠くに行くとは考え付きませんでした
最高の方法ですね」
「ありがとうございます、この方法ですと原発製造の工場を固定出来、専用港から出来上がった『パワーステーション』を日本のどの場所にでも移動させる事が出来るのです」
「すると外国に輸出する場合も日本で製造してその国迄自走で行ける事も出来ますね」
「もちろん可能です」
「これは日本だけでなく世界の原発革命かも知れませんね、ありがとうございました今日は大変勉強になりました、計画が一日も早く実現するのに最大限の協力を約束します」
官房長官室のドアがノックされ総理補佐官が入室して来た
「失礼します官房長官、総理がお見えです」
(つづく)