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OCEANBLUE 碧い海  作者: 西光寺 龍
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OCEANBLUE 碧い海  第三章

第三章

 勇一郎が秀二に呼ばれ研究所に顔を出すと、興奮した表情で声を張り上げる

「勇一郎ゴウサインが出たぞ!おまえが長官に会いに行った日の夜長官から直接俺の携帯に電話を貰い計 画を早急に進める様にと、予算も施設も役所も自由に使え、邪魔する者が居た時は警察も指揮下に入れ ていいと凄い力を与えられたよ、内閣官房から任命書が送られて来た、これはまるで昔の水戸黄門の葵 の御紋の印籠と同じだよ!」

「へ~凄いね、肩書きの無いおまえにはこれからの動きには絶対必要だよ」

「これも勇一郎おまえが長官に会いに行ってくれたお陰だよ、本当に感謝している」

「秀二早く決定した事案の詳細を教えてくれ、俺の動きのプランを決める必要があるだろ」

「そうだな、こっちに来てくれ」

 勇一郎と秀二は秀二の部屋から大きなスタッフルームに入った、スタッフルームには四十人ほどの若い研究所職員が忙しそうに作業をしている、勇一郎は奈美を見つけ声を掛ける。

「横山さんこんにちは、忙しそうだね」

「あら大泉さんいらしていたんですね、原子炉の事少しは勉強しまして?」

「会う早々いじめないでよ、中々暇が出来なくて」

 勇一郎は頭をかきながら答える、隣で秀二がニヤニヤと聞いている、スタッフルームの会議用テーブルに勇一郎、秀二、飯田、横山の四人が座り秀二の説明が始まる

「まず一番にやらなくてはならない事は東京電力、中部電力等の休止中の原発を所有している電力会社の

 原子炉を廃炉にすると言う確約が必要です、廃炉と発表しても発電を止めるわけではなく天然ガスの火 力発電に切り替えるもので発電設備はそのまま使います、掛かる費用は全額国の負担で賄います」

「各電力会社は納得するのかな?」

「その説得を政治家の勇一郎に頼みたい、サポートは飯田君と横山さんに頼みます、『ハイブリッド・パ ワーステーション』の事はまだ話せないのできついかも知れませんがお願いします、国民の原発に対る 不安と世界に日本の危機管理の対応をアッピールするためにも各電力会社の協力は不可欠ですから」

「了解日本のために三人で必ず説得して見せるよ」

 横山が各電力会社のトップとの交渉の席をセット、三人で全国を回る一番抵抗が予想される東京電力は一番最後にした、他の電力会社は原発の再稼働が不可能に近い現状を考え発電所を動かすためには火力発電に変更するのは仕方ない、それに必要経費が国が負担するならと廃炉宣言に同意した、東京電力も福島原発の事故の対応を国で行う事で廃炉宣言を出す事に同意した。

 電力会社の合同発表は『ハイブリッド・パワーステーション』と同時発表になるため少し先になる、ベースになる強化プラスチック製のブロック造りの担当の日高、鈴木から制作会社が決定したと報告が上がってきた、茨城県の神栖に在る三井化学株式会社ですここは鹿島港にも近く会社の敷地面積も広く量産体制があり完成品の置き場も確保できます、置き場から直接船積みも可能で最適と思います。

「片岡所長一度視察をお願いします、必ず最適だと信じています、所長の確認とサインが有りませんと製造に掛れません」

「分かったこれから直ぐに行こう早い方がいい、勇一郎も一緒にどうだい?」

「茨城だと一日がかりになるな!」

「いや二時間もあれば十分だよ」

「日高君先方にこれから行くと連絡して、鈴木君は基地司令にヘリの手配を」

「秀二ヘリで行くのか?」

「あ~時間がもったいないからな」

 五分後には四人はへりの中に居る、三十分ほどで神栖の三井化学に到着、先方も自衛隊のヘリが来たので驚いている、工場長の案内で工場の中を確認し港を見て発注書にサインをし研究所に戻る、秀二の言った通り二時間以内で戻ってきた。

 秀二と勇太郎が所長室に戻ると直ぐに電気担当の木谷と松本が報告のため所長室にやってきた、

「秀二!俺は席はずそうか?」

「いや構わない勇一郎も一緒に聞いて貰った方がいい、大事な話は特にね、じゃ~木谷君報告を始めて」

「はい、分かりました所長に指示された原発の送電用の超電導の件ですけど、色々調べたんですけど現段 階では今回の計画には適さないという結論です」

「なるほどその理由は?」

「まず超電導の電流を送るには送電管を真空状態にしマイナス196度に冷やし維持安定させなければな りません、長い距離の送電管を新設するには今の技術基準では20キロごとに冷却設備を整えた施設を

 造る必要が有ります、送電ロスは限りなくゼロに近くなりますが、送電管の耐震、保守点検を考えると

 送電ロスが5%有っても現行の方が万一の場合の復旧等が早く地震国日本ではまだ超電導の送電システ ムは危険が有ります」

「なるほど良く分かった、送電システムは現行で決定しよう!」

「それから所長、発送電分離の件ですが、長期に渡り新設から保守管理を行なって来た電力会社から新会 社に変更することはリスクが大きすぎます、もし新会社による送電が出来ても保守管理で旧電力会社が

 協力して資料等の大切なノウハウや経験という財産は提供されず、郵政や北海道の鉄道の教訓を生かす

 上にも発送電分離は避けたほうが懸命だと思います」

「たしかに発送電分離は木谷君の言う通りかも知れないその件は私も良く考えよう」

 木谷、松本の二人と入れ替わりに、飯田、横山の二人が所長室に報告に入る

「所長、お時間宜しいですか?」

「時間は心配しないでいいです、飯田君と横山さんの最終的な考えを報告して下さい」

「はい、まず原子炉の建設に当たるメーカー選択ですがもちろん日本のメーカーに限定しています、原子 炉が小型で高出力の最新式で安全性も高い先日お話したスーパー軽水炉が最適と考え担当メーカーを選 びました、東芝です、東芝は先日英国に拠点のあるフランス、スペインの合弁会社「二ユージェン」を

 買収しました、この会社はスーパー軽水炉原発の技術は世界トップクラスです、アメリカの原発メーカ ー大手の「ウエスチングハウス」も認めています、先日東芝の技術者と会い打診しましたら、金属キャ

 スク(容器)を含めスーパー軽水炉建設に全力協力を確約しています、私としては最良の選択と考えてい ます、どうでしょうか?」

「横山さんも同じ考えですか?」

「はい、私も数社の人に会いましたが、東芝が一番今回の計画には適任と考えています」

「分かりましたお二人が決めたのなら間違いないでしょう、原子炉は東芝に決めましょう」

 だまって聞いていた勇一郎が質問をする

「今の話の中で分からない事が有るけど、聞いても良いかな?」

「どうぞ何でも聞いて下さい」

「金属キャスクてなんですか?」

「金属キャスクは中間貯蔵施設で使う使用済み核燃料の貯蔵に使われる鋼鉄製の専用容器のことです、今 回の『ハイブリット・パワーステーション』には中間貯蔵設備も建設しますから、金属キャスクも重要

 なんです」

「なるほど良く分かりました」

「勇一郎、横山さんの授業さぼってるな」

「いや~時間が無くて、申し訳ない」

 そこに居る四人が大きな声で笑う・・・・




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