蹴速、再び。
「おおおおおおお!」
高知市の、道路標識!!!
「亜意!有難う!!!」
「お、おお・・」
そこまでか?
亜意は故郷へ帰っただけで、こうも興奮、感動している蹴速がよく分からなかった。
これは、この雑踏は!スーツ姿の通行人、高知駅、路面電車。
帰って来た!!
蹴速は思わず涙ぐんだ。
「おい」
亜意は何となく、自分のハンカチを差し出した。
「おお」
蹴速は受け取り、涙を拭った。
「・・・ありがとうな」
「そこまで、感激されちゃあな。サービスだ」
「・・豪勢なことよ」
「礼は素直に言いな」
「言ったはずだがなあ?」
「そうだったか?」
くはは
男らしい笑いをこぼす、亜意と蹴速。
「来たはいいが、これからどーすんだ?」
「とりあえず、おれの家に行く。親に会う」
「ほー。ま、適当に付いて行くぜ」
「おお」
蹴速と亜意は歩いて20分、蹴速の家に着いた。
「戻ってないかあ」
「親は何やってるんだ」
「慈善事業家」
「あ」
「慈善事業家兼武器商人。儲かってるらしいぜ」
「いい趣味じゃねーか。気に入った」
「おれの武器も作ってほしかったがな。無いんよな」
「ほう。何か好きなもんでもあんのか」
「剣には憧れた。向こうでも皆使ってるやつ」
「ああ。でもお前には必要ねーだろ。素手でアホみたいに強いじゃねえか」
「まあなー」
おれが素手で戦う事、を知ってる。御徳さんに聞いたのでなければ、こいつ表面通りの人間じゃない。心が読めるとか、そういう。
ん?視線に熱がこもったぜえ?モテる女はこれだから!
何だか1人で盛り上がってしまった亜意を見て、絶対スパイではないな、と確信する蹴速であった。
こんな頭の悪そうな間諜が居るか。
「親居ないな。書置きして、次行くか」
「おう」
蹴速、亜意は祝寝の家に向かった。
ぴんぽーん
「蹴速君!祝寝は!」
「大丈夫です!無事で居ます!ちょっと面倒事に巻き込まれましたが、全然元気ですから!」
蹴速は玄関に走ってきた、祝寝のお父さんに全力で弁解した。
「そ、そうか。それで祝寝は?」
「異世界です。事情があって、祝寝だけ残しておれはこっちに帰ってきました。人数引き連れてまた、向こうに行ってきます。祝寝は必ずこっちに帰りますけ、待ちよってください」
「お、おお。祝寝を、祝寝を頼んだよ」
「はい。おばさんは」
「うん。今は仕事に行っている。心配していると祝寝に」
「はい。伝えます」
僅かな時間で辞した。
「ふう。一仕事終わった」
「ご苦労様だな」
「まあなー。赤の他人ならともかく、お世話になっとるからな。心苦しいぜ」
「なんだか知らねえが。お前のせいじゃ、ねえだろ」
「さあなあ。おれが狙われてこうなったと、思わなかったわけじゃない。原因は知らん。祝寝ではないやろう。おれに巻き込まれたか、と」
「メンドクセー」
「人と生きるのはそういうことよ。お前やち、メンドクセーなりに人と何とか、やっていきゆろう」
「んー」
魔神に拾われたこと。目に付いた魔族を片端から殺し尽くしたこと。魔王達との日々。
全てどうでもいいことのはずだが。亜意は何となく心から離れないのが不思議だった。
「次、行くぞ」
「おー」
とりあえず、出張してくると届け出。期間未定。
「ゆるいな」
「まあな。おれ達の動向をつかむのが目的やからな。報告を怠らなければ、面倒にはならん」
「ふーん」
「次は外国。パスポート無しで突っ切るから、離れるなよ」
「あいよ」
とりあえずアジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカを周り日本に帰宅した時は、夕方を過ぎていた。
「そこそこ揃ったな」
「5人か。強いのか?」
「おお。3名家に劣らないレベルに声をかけた。ただ、おれと五分のやつは」
「あいつか。あんなの要らねーだろ」
「好き嫌いならともかくよ。あいつは強い。何ならおれの盾になってもらっても良かった」
「おお!そういう使い方なら賛成できるな!」
「何言ってんだテメー」
突如話に割り込んでくる青い髪の白人。赤い目が燃えている。
「なんだこの下品な青は。あたしの青を見習えよ」
同じ青色同士で張り合うものがあるようだ。
「蹴速。お前の連れか」
「おお。おれの今の仕事仲間よ。来てくれて、まずは感謝」
「ふん。お前より強いのが居るってほんとだろうな」
「居る。洒落になってない。相手が本気なら3回死んでる」
「ほおお・・・」
「この、如何にも役に立たなさそうなやつを、本当に連れていくのかあ?」
「役に立つ。いざとなれば、1回分の盾にもなる」
「!?」
「しょうがねえな」
「お、おれは、お前のこと、そんな嫌いじゃないし」
「冗談よ。一緒に協力しような」
「お、おお!任せろ!」
本当に大丈夫か?
んー。神無を強くして、人格を崩壊させると、こいつになる。
神無って誰だ。
おれの嫁。
はー。
「嫁ェ!?」
「おい。こっちの会話に割り込んでんじゃねーぞ」
「あー、うん」
「お、お前、祝寝さんは」
「祝寝もよ。6人くらい嫁をもらったけ」
「ほう・・・・・・・・・・・・・・」
「おい。邪魔じゃないか?」
青い髪の白人は、歩道を転げまわっていた。
「ぶっ殺す!!!!」
飛びかかってきた白人。蹴速は美麗なカウンターを返す。それは魔王アオアイの目を以ってしても、魔王より強い、としか分からなかった。
「・・・・・・お前。強くなった?」
「ああ。一回りな」
「クソ・・」
「こいつ、置いていこうぜ」
「そう言うな。明日、皆揃う。お前はどこに泊まる」
「・・・知らない」
「何でここに居るんだよ」
「久々に蹴速見たから、付いてきた」
「相変わらずだな」
「だろ?」
「なんでいい顔なんだよ」
「おれんち泊まるか」
「パジャマパーティー!行く!」
「パーティーは知らんけど、まあ来いや」
「あたしもか」
「そのつもりやったけど、ホテル代は出せるぞ」
「ま、いい。部屋は別なんだろ?」
「おお。親の部屋使ってもらうが」
「おれは?」
「お前は広間で寝てろ」
「・・・蹴速の部屋で良い」
「おれの部屋は狭い」
「1人で広間とか、怖い」
「蹴速。舐めてんのかこいつ」
「いや。本気だろう」
だから苦手なんだ。
なるほど。
「おれも混ぜて!」
「もう、行こうぜ」
「ああ」
蹴速、亜意はそいつを置き去りに蹴速の家に行く。1人、付いてくる者が居たが。
「あいつ、名前なんだっけ」
「ジーニアス・エンペラー・カイザー・フォーエバー・シューティングスター」
「なっげえ」
「ジン、と呼んでくれ」
「芸名か?」
「本名」
「ま、どーでもいい」
「そうやね」
「蹴速ァ!」
「大人しくしよったら、一緒に寝るわ」
「うん」
こいつで、本当に大丈夫なんだな?
実力はある。使い潰しても惜しくない人材でもある。だから貴重なんよ。
なるほど。
ジンはその後、借りてきた猫のように大人しく付いてきたそうな。
「晩ご飯買ってくる。リクエストある?」
「あたしも行くぞ。興味あるしな」
「おれも、おれも」
「いいけど」
別に大丈夫だよなあ?自分に問う蹴速。
蹴速と五分の力を持つ非常識人と、元魔王を引き連れスーパーに。
「へえー。そんなに変わらねえな」
物珍しげだが、言葉通りさほど驚いてもいない亜意。
「これも!これもいいなあ!ねえ蹴速、これも!」
カゴに片端から持ち込んでくるジン。
「食える分だけにしちょけよ。明日には向こうに行くんやけ」
思ったより大人しいな、と思う蹴速。
とりあえず3人でごちゃごちゃ晩ご飯をかき込み、眠りについた。
「蹴速」
「なに」
「あの子、何」
「ん。協力者よ。言うたろ。こっちとあっちを繋げるゲートを作れるけ、絶対必要な人よ」
「ふーん」
「聞いた割に興味なさそうやん」
「好きなの?」
「何を言うの?」
「だって。蹴速が女の子を傍に置くなんて。祝寝さんでも連れ回さないのに」
「うーん。亜意はかなり使える。ゲートの他に、治癒も出来るし」
「治癒?すごいね。初めて聞いた。でも蹴速は弱いなら近づけさせないでしょ」
「どれだけ孤高や。んな事もない」
「じゃ、じゃあ、おれも」
「はあ?お前はお前の仕事あるやん」
「ないない。そんなのすぐ辞めるし。文句言ってきたら消すし。ね」
「そこまでせんでもいいわ。まあ、どうせお前に用が有ったんよ。おれと一緒に戦って欲しい。昼間も言うたけど」
「おれ死んじゃう?」
「分からん。可能性はあるぜ」
「報酬は」
「何が欲しい」
「蹴速」
「それ以外で」
「欲しいもの、ない」
「お前よ。人と仲良く出来る?」
「祝寝さんとなら」
「もう9人くらいと。全員とベタベタせえとは言わん。祝寝に嫌な思いさせるなよ」
「うん」
「じゃあ、おれの嫁になれ。7人目やけど」
「うん。えええええええ!」
「うるさい。亜衣が起きる」
「祝寝さんお前のせいで怒るだろ!!!」
「何も言い返せん」
「お前何してたんだよ!!」
ジンは泣きながら怒っていた。
「お前が、祝寝さんと結婚するって言うから!!」
「おお。言うたな」
「だから、おれ」
「諦めさせたな」
「・・・殺す」
ジンは布団から跳ね上がると、蹴速を襲った。布団に包まっている蹴速を突き殺すつもりだった。
「おい」
ぬ、っと布団から手を出した蹴速は、高速行動中のジンを無造作に抱き寄せた。
「馬鹿」
久々の蹴速の体温と、手加減してない自分をあっさり捕らまえた手際に惚れ直した。仕方ない。
「祝寝さんの次なら、結婚しても、いい」
「うーん」
「了解しろよ!」
「はいよ。でも順番とかはともかく。お前は妹になるぞ」
「それは、まあ。祝寝さんのが年上だろう?」
「お前幾つやったっけ」
「同い年だよ。誕生日も同じ」
「誕生日同じは覚えちょった。年も同じやったんか」
見た目かなり老けて見られる蹴速と同じく、体格のいいジンもまた実年齢より年上に見られていた。
「私達は同じだった」
「かもな」
「これからは」
「同じよ。そう変わりもせん」
「そうかな」
蹴速はジンと話をしつつ眠りについた。
「すげーな。お前」
「うん。自分で自分が怖い」
「?」
朝一番。朝ご飯を一緒に食べている亜意は、蹴速にぴったりくっついているジンを見て、蹴速を当代一の馬鹿だと思った。
「出先で早速女こしらえやがったか。面白いやつだな」
「こしらえたっつうか」
「元々かなあ」
付き合いは長い。お互い仕事現場で出くわしたのは、10才の頃。先に現場に出ていた蹴速の動きを見習うという名目で、ジンの親が連れてきていた。あの時から、ジンは蹴速の追っかけになり、それだけの実力も勝手に身に付けてきた。祝寝とも顔見知りで何度か遊んだことがある。
「おれは蹴速とはずっと付き合ってる。お前よりな」
「ほお」
亜意は少しむかついた。そんな必要は全くないのだが。いつだって張り合って生きてきたのだ。
「こいつにはあたしが必要らしいぜ。なあ蹴速」
「それはまあ」
「蹴速に必要なのは、おれと祝寝さんだけ」
「その祝寝に会うためにも亜意が絶対必要なんよ。聞き分けてくれ」
「ううん。蹴速、甘えさせてくれる?」
「おお。いいぞ」
「うん!亜意さんよろしくね!」
しなだれかかるジンをそのままにしておく蹴速。
「なんだこいつ」
「こういうやつよ。本当に亜衣、よろしく頼む。今日全員揃ったら」
「任せな。仕事はちゃんとやる」
仕事はやる、と言ったものの、ゲートの維持が出来るかどうか、若干不安があった。コツは掴んだ。だが魔力が回復しきってない。全くの異世界である。あちらの世界ならば亜意も回復出来た。だが、この世界に来てから回復が恐ろしく遅い。魔王アオ アイであった頃は1日で全快していたし、全力を発揮していてもその辺の魔族を食えば即回復していた。こちらの人間にはどうやら魔力がない。いくら食べても回復しないだろう。
「不安が」
蹴速は何となく悟ったようだ。亜意の空元気を。
「ねえよ。だが聞いてやる。魔力の回復方法はないのか」
「魔力?治癒とかゲートとかの力のことか」
「それだ。それのエネルギーが欲しい」
「残念なことに、おれはさっぱり分からん。多分こっちに知ってる人は居らんと思う」
「ふん。仕方ねえな。期待もしてなかったぜ」
「すまんな。前もって準備しておくべきやった」
「飯さえ食ってりゃ、そのうち回復する。1月もあれば全快するだろ」
蹴速のせいではない。人間如きの責任で、あたしは動いているのではない。
「魔力って何?」
「ああ。向こうの世界では、治癒能力が実在しておるんよ。ワープとかもあるぞ」
「うわああ!すごい!」
ジンが驚く。
「未開の地かよ」
「まあな。魔力関連はそう言って過言じゃない」
「ゲートも作れねえしな」
「それは、向こうの世界も人間レベルなら同じやろ」
「あたしは、作れるぜ」
「ふん」
「この人、すごいの」
「何度も言ゆけど、こいつが居らんといかんレベル」
「ふーん」
「なんだ。デカイ図体して、言いたいことがあるなら言いな」
ジンは身長が190を超えている。
「別に」
蹴速への言動と行動からして、奇矯な人間と思われがちだが、ジンは人見知りだ。初対面の人間とは喋りたがらない。亜意との会話で、多弁な方だ。
ピンポーン
「来たか」
呟くと蹴速は玄関に向かう。ジンは蹴速の座ってた座布団を枕に寝転がった。亜意はヘンなものを見た目をした後、食後のおやつを取りに行った。
玄関先。4人の人間が居た。
「来たぞ」
「来てやったぞ!」
「来ましたよー」
「参上しました」
「本当にありがとう。おれのために命を懸けてくれて」
「お前のためじゃない。報酬のためだ」
「友の危機!行かねば男がすたる!」
「そうですね。女もすたります」
「先に命を救われたのはこちら。私が貴方の盾になります」
軽兵。手に入れた金銭を片端から使い尽くし、また稼ぐ必要に迫られ戦場を転々とし、そのため不要な程実力を身に付けた傭兵。
無双双児。主にアジア地域を縄張りとする兵。実力は折り紙つきだが、調子に乗りやすく、トラブルメーカーとしては世界トップクラス。小火を災害級の山火事にするのが得意。
超騎士(偉大なるイギリス及び世界を守る英雄にして騎士の中の騎士。総ての騎士を代表する騎士。知恵、勇気、信仰において並ぶものなき者。その名、超騎士)。1人でブリテン諸島に迫る100万の敵を食い止めた、生きる伝説。その時、たまたま手空きの蹴速は海上で1000万の敵を殲滅していた。ジンも参加している、全人類の滅亡のかかった1日の決戦だったが、世界中で兵共が名誉名声金銭を求めこぞって参加したため、人類は生き残った。
「お前らが来てくれたら百人力よ」
「当然だろー!どんな化け物が敵か知らねーけど、任せろ!」
「全くです。私達兄妹に任せれば、どうとでもなります」
今まで数々の災厄を、引き起こしてきた人間達、が言うと説得力が違う。
「貯め込んでるんだろ?頼む!使ってくれ!何でもするから!」
有能な癖に万年金欠の人間に言われると了解してしまう。
「今しばらく貴方の盾、貴方の剣となりましょう」
本当に守りきった人間に言われると安心してしまう。
「よろしく!実際、敵はおれより強い!それでも、ついて来てくれるか」
「お前は金払いがいい。何処にだって行くぜ」
「おれ達が付いてるって!」
「大船に乗ったつもりで」
「存念なく、お任せください。我が主」
どいつもこいつも一騎当千。有我と同格の強者ども。古強者のじーさんは引っ張り出すわけにはいかんし、このメンバーで完成とするか。最悪ジンが居てくれれば、まあ。どうにかなるか。
親に会えず、武器の都合がつかなかったのが、唯一の心残りか。
「蹴速様。これをご両親から」
超騎士が差し出してくる、2メートル程のでかい箱。
「?なんだこれ」
「武器、と」
蹴速の両親は実はイギリスに滞在していた。そこで超騎士を筆頭としたイギリス精鋭の武装を調整していた。超騎士も新武具の調整に入っていた。両親と蹴速が会わなかったのは、単純に蹴速の行動が早すぎたためだ。イギリスに着いた蹴速は超騎士を即座に口説き落とし、イギリスを発ってしまった。だから、両親は蹴速のために作った武装を超騎士に預けた。
「ほおおお」
「蹴速の武器か」
「興味深いですね」
「使わないなら売ってきてやる。マージンは・・」
見物客は相手にする必要はあるまい。早速荷解きする。
「おお」
武器は具足だった。蹴速にぴったりだが。
蹴速の武装はこの世に存在しなかった。如何なる素材を用いようが、蹴速についてこられなかった。己の身体以外には武器等なかった。
今回のこれは?蹴速をよく知っている両親が作ったものが不良品である可能性は低いが。
「蹴速様。私の勘ですが、使えるものだと思います」
「ふうん」
超騎士の目利きは知らない。だが、適当な事を言う人間ではない。ここに居る人間で最も出来ている人なのだ。
「使ってみるか」
無論、魔神戦で。その辺のザコにどれほど効こうが意味はない。一発で砕けたら、それはそれで良い。足枷がすぐに外れるのは良いことだ。
「ちょっと待ちよってくれ。早速旅立つ」
蹴速は家の中の亜意とジンを呼びに行った。
「亜意、頼む。全員来てくれた」
「了解。腕がなるぜ」
「蹴速、荷物持ったよ!」
ジンは昨日買った物を全部袋詰めしてくれていた。
「おお。助かるぜジン」
「うふふ」
「早く出ろよ」
ちょっとイラっとしている亜意であった。
「じゃ、開くぜ」
蹴速の家の玄関先。幸いにも、道路から見えない位置に開けそうだ。
亜意が集中する。またしても玉の汗が吹き出る。蹴速はそれを拭き取る。
「おい」
「すまんな」
今度は蹴速が触れている必要はないのだが。蹴速は亜意がそれ以上言わないので、拭き続けた。
必ずやってみせる。この女たらしに、使えないと評価されるのは、我慢出来ない。
亜意は魔力に気合と根性を乗せてバーストさせた。
ぐおん
「出来た!入れ!すぐに閉じちまう!」
「皆来い!」
蹴速は言うや否や、飛び込んだ。ジンが間髪入れず突っ込む。他の4人も誰も怖じけることなく、我先に跳んだ。最後に亜意が飛び込む。
「・・・・・・成功」
見覚えのある風景。昨日潜った場所だ。
「やってやったぜ。崇めろ、あたしを」
言いつつ、座り込む亜意。
「本当にすごいぞ。帰って、何でも食べてくれ」
蹴速は亜意を担ぐ。そして全員で二神に向かった。