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有我、頑張る。

 有我達は空兵の導きにより、本部らしき建物に到着。奥まで通される。武装解除も無しに。


「ようこそ!ここがナインライン南部地方、ミヤザキです」


「初めまして。コウチ代表、一一人有我です」


「ええ。コウチの活躍はかねがね」


 おおきい。身長3メートル程は有るか。ナインライン程、大きな大陸ともなれば、人間も大きくなるのか。


「私はミヤザキ代表、巨鬼咲黄きき さきです」


「では、話が早い。屈服して下さい」


「承知致しました。されど、1つ条件を飲んで頂きたい」


「うん、良いよ」


「器が大きい!いや、流石ですな」


「それで、条件とは」


「このミヤザキを。・・・救って頂きたい」


「魔族?」


「分かりません。ご覧になったかと思いますが、大地の白化。あれが止まりませぬ。様々な土、石、植物、あまつさえ魔族の血まで使って尚、止まらぬのです」


「ふうん」


 有我はアカ、アオミドリをちらっと見る。2人とも、心当たりは無さそうだ。


「承知。その問題、コウチが預かる」


「おおお!」


「解決の暁には、もちろん」


「はい。コウチの旗の下に集いましょう」


「では。解決したら、また来るよ」


「期待しておりますぞ!」


 有我達は出て行く。


「期待、しているのですか」


「しているとも。このままではミヤザキは人の住める地でなくなる。最も悪い結果は、我々の終わり。コウチに従う事ではない」


「出来れば。戦いたかった」


「私もだ。だが、今戦えば、ミヤザキは不毛の地。コウチの者は、ミヤザキの地を捨て、帰る。我々には、何も残らない」


「はい。英断でありました」


「よせ。私では、解決出来なかったのだ。・・・私の国の問題を!!!!」


「それでも、英断でありました。自分の手柄に拘るのは、若さでしょうか?」


「言ってくれるな」


 巨鬼咲黄は側近と、コウチの者を迎える準備をする。


「さっぱり分かんないや」


「はっは!おれも!」


「魔力の枯渇かなあ。うーん」


 役立ちそうなのは、アオミドリだけだ。


「一旦戻って、キにも聞こう。って言うか、家に戻って、皆に聞こう。シロに聞けば一発でしょ」


「いいね!」


「簡単に魔神様に頼って良いのかなあ」


「良いよ良いよ。仲間外れのが、嫌だよ、おれは」


「それは、そうかもだけど」


「ダメならダメで良いしさ。一応聞いてみよう」


 方針は決まった。船の側に戻った有我は、軍に待機を命令。恐らくミヤザキはコウチに付く。無闇に戦わないよう、魔族を警戒させる。


 そして4人は、家に帰る。アカは船でお留守番だ。


「え。良いの?てっきりキに甘えきりの、どうしようもない奴だと思ってたのに」


「へへへー。申し訳ない!まー、ね。夜はマアカに会えるしさ。今はおれがここを守るよ」


「助かるよ。今のアカは蹴速君並みなんでしょ」


「らしいよー」


 アカはまだ、力を使いこなせてない。復活から1月経った。そろそろ本気になってみたい。


「ならおれも、マキと遊んでくるか」


「行ってきなー。おれが居るからさ!」


「ふっ」


 今のアカには、1回り上の強さが見える。蹴速の力を持ったから、ではない。以前なら、人に譲ったりはしない。選択の幅が増えた。強くなった、とキは見ている。


 帰還した4人。皆、家に居てくれた。


「早いな今日は」


 海鶴と己黄が洗濯物を干していた。普段着に加えて、魔王達の儀式用衣装も陰干しされている。


「悪いな。おれ達の雑用をさせているようだ」


「気にするな。家族だ」


 キと海鶴の会話。ここまで巣の人数が増えるとは、思っていなかったが。やる事は同じだ。健全な運営、育成。それだけだ。


「シロは、起きてる?」


 有我がシロを呼ぶ。まだ寝ていたりは、するのか?


「シロならマシロにたたき起こされて、訓練しているはずだ」


 シロは蹴速と寝る日、他の者と寝る日以外は、ゲームを夜通しプレイ。昼まで起きてこなかったりする。恐らく昨日もそうだったろう。子供達の側で、音量最小でプレイしていたはずだ。ちなみにこの家でここまでゲームをするのは、シロだけだ。


「来たぞよ」


 子供達と訓練する時は、力を100万分の1に封じる魔神心。おかげで、ちょっとした怪我以上はせずに済む。


「聞きたい事が有るんだ。ナインラインに行ったんだけどさ。大地が白化していたんだ。土地の人が言うには、何をやってもダメだったらしいよ」


「ふむ」


 魔神シロには、複数の原因が思い浮かんだ。それこそ、己黄が蹴速と内緒のデートにでも行って、ナインライン上空で何か有った、とか。


 一応、最も可能性の高そうな原因を言ってみる。


「大地の力が落ちておるな」


「大地の力?」


「うむ。知っての通り、魔力に代表されるこの世界の力。それがナインラインから、抜け落ちておる。人間の技では止まるまい」


「ふーん。すごく、ヤバイんだね。解決策は?」


「もう一度、大地の力を蓄えさせる。電池交換じゃ」


 最近覚えた、テレビのリモコンの電池交換。ゲーム機の充電も1人で出来るようになった。


「それは、どうやるの?」


「ふうむ。確か、海の底にばらまいたはずじゃ。大陸の上には、何処にまいたか。忘れてしもうた、わはは」


 こいつ。


「交換って事だけど、取り替えた後の電池は?」


「ふむ。海にでも投げ込めば良い。また力を蓄えるじゃろう。魔界でも良いが、人間には不便じゃな」


「へえー。それは、ナインラインの近海でも?遠くの方が良い?」


「何処でも良いぞよ。海流は流れておる。何処でも一緒じゃ」


「それで、肝心要の電池は、どんな格好なの」


「うーむ。何か、統一した形にしたはずじゃ。なんじゃった・・?」


「もー」


「イカリか?」


 海鶴の発言。


「おお!そうじゃ!ふふふ、これでどんな船のイカリなのだ?と不思議がる顔が見れるぞい。そう考えたのじゃった。海鶴、ぬしのおかげで思い出せたぞ」


「知ってるの?海鶴」


「ああ。以前見かけた事が有る。確かに思ったものだ。このような大きな船が有るのか、と」


 してやったりのシロの顔。海鶴は船体下部の構造は、それなりに知っている。竜骨の大きさ、動力の有る無し、もちろんイカリが投錨されている所も見た事が有る。


「だが、大丈夫か。あれはこの家より大きかったぞ」


「まあ、魔王達に頑張ってもらうよ」


 有我は心配してない。蹴速なら間違いなく引き上げるだろう。つまり、アカ、キ、アオミドリが揃っている以上、上手く行く可能性は高い。


「交換の方法は?」


「ん。大地に投げ込めば、ひょいっと来て、ふおんっ、と来る。簡単じゃ」


「分かったよ。ありがとうね」


 上手く行かなかったら、魔神を連れてきてやらせれば良いだろう。


「キとアオミドリは?」


「キは子供達と遊んでおるぞ」


 アオミドリは蹴速と喋っていた。


「ねえ。次は、双子とか良いんじゃないかな」


「う、うん。でも狙っては作れんだろ」


「そこはさ、魔神様をおだてて、上手い事やろうよ」


「うーん」


 アオミドリは嫌な方向に成長していた。ただ、魔神の後ろ1メートルの屋外テーブルで話し込んでいるので、実は昔のままかも知れない。


 こやつの子には、角とか羽とか生やして、浮気を疑わさせてやるか。


 魔神は邪念がよぎったが、クロに睨まれてやめた。


 角が有れば、魔力を操りやすくなるし、羽が有れば、当然飛ぶのに役立つ。無益では無いが。


「行くよー」


「はーい。じゃあ、また夜にね」


「マキ、行って来る」


 子に見送られるキ。蹴速に何とも言い難い顔で見送られるアオミドリ。


 亜意はずっと祝寝と一緒に居た。


 4人はアカの下に戻る。


「それなら、海鶴に手伝ってもらえば良いのに」


「超騎士が居ない状態では、呼びたくないんだ。絶対に守れる自信が無い」


「なるほどー」


 今度は有我が軍勢と共に残り、魔王達にイカリを任せる事に。


「お腹空いたら、戻ってきて良いからね」


「分かってるって!」


「亜意も残っていろ。深海はきついはずだ」


「誰にものを言ってる」


 亜意は本気っぽかったので、キも、もう言わなかった。


 取りあえず近くの海に突入。海底を探し回る。


 なんと非効率な、そう思っていた者は居なかった。何処かに落ちてるなら、簡単だ。家程の大きさのイカリ。形状も明確。ヒトデだか、イクラだかと言われていれば、どうしようもなかっただろうが。


 そして4時間後、海底の散策ついで、蹴速とのデートコースを夢想していたアオミドリが、見つけた。


 魔力を開放、大渦を巻き起こし、異変を知らせる。合図にはなっただろう。そして、他の魔王を待たず、取りにかかる。


 重い!アオミオリはそこまで力持ちではない、が数百トン位はどうとでもなる。魔王なのだ。それでも、持ち上がらない。幸い、ボキッと折れたりはしない。力の込めすぎは心配しなくて良さそうだ。


 異変に気付いた3人が来てくれた。


 これ?

 うん。

 やってみるか。


 アカがメインで引っ張る。アオミドリ、キも左右で押し出す。亜意は邪魔になってそうな岩石を壊して回る。イカリは海底にめり込んでいる。


ぐ、ぐっ


 上がった!数十センチ程だろうが、確かに上昇を感じた。勢いに乗るアカ達。亜意も動き回り、サポートする。


ぐ、おおお


 上がる上がる!もう、スムーズだ。問題ない。亜意は、少し距離を取った。水中は塵が舞い散り、ひどい視界になっていた。


 完全に浮き上がり、海上に顔を出すイカリ。大きい。多分だが、蹴速の家、20人から住める家より、大きい。数万トンは有るか。


「重い!」


「ああ!」


「でも、力が湧いてくるよ!」


 アオミドリ、キはきつそうだが、アカは調子が良くなっていくようだ。


「行けそうなら、行くぜ!有我を待たせてあるからな!根性入れろ!!」


「おおー!」


「はいはい!」


「行くか・・・!」


 三者三様。それでも一致団結し、お化けイカリを抱え飛ぶ。


「おおお」


 ちょっとしたザワめきに顔を出した有我は、空中のイカリを見て驚いた。


「有ったよー!有我!」


「最高!最高の働きだよ!」


 有我は褒めちぎった。この魔王達の働きで、ナインライン南部はコウチのものだ。


「じゃあ、適当な所に投げ込もうか」


 亜意が有我を連れて飛ぶ。


 人気の無い大地。真っ白の国。そこに1イカリを投じる。


「やって!」


 有我の言葉、投げ込む3魔王。


どぼん


 大地の振動音ではない!確かに、水音が、聞こえた。


がらがらがらがら


 金属音!今、投げ込まれたイカリとは別物。やはり真っ白になってしまっているイカリが、飛び出した!


 アカが受け止め、アオミドリ、キも支える。


「よおーし!もっかい海に行って、似たような場所に投げ込んでみて!ボクはここを見てる!」


「おっけー!」


 3魔王はイカリを海に投げに行った。


「どうなるんだろうね」


「さあな」


 静かに、その時を待つ。


 特に、何も起きない。


「あれ?」


「間違えたか?」


「でも、あんなのが他に有るとは思えないよ。時間かかるのかな」


「ふん」


 しばし、待つ。水筒のお茶を飲みながら。


「お、どくだみ茶」


「あたしは、麦茶だ」


 誰が入れたかで、中身が変わることは有る。ちなみに魔神がどくだみ茶を飲むと全身が麻痺し、泡を吹いて倒れ、復活、ちょっぴりパワーアップしたりする。魔王達には、そのような面白可笑しい傾向は無いが。


ぼこぼこ


 またも水音。今度は沈み込むのか、浮かび上がるのか、泡音だ。


「来た」


「ああ」


 水音は止んだ。そして、緑が生えた。正確には、藻?数分後には苔。数時間したら、木の芽が。


「良いんじゃないか」


「うん」


 他の魔王達も一緒に見ている。地面も茶色になっている。


「知らなかったな。地面って魔力が含まれてたんだ」


「おれ達も知らなかったよ。空気中には含まれてるのは、知ってたけど」


「ああ。それはボクも。ひょっとして魔力って色んな所に有るのかな」


「それはそうだろう。空気から沈殿したり、浮遊したりしても、おかしくは無い」


「確かにねえ」


 それなりに難しいような、そうでもないような話題を繰り広げる一行。


 翌日を待ち、ミヤザキ代表の下に向かう事に。


「ども」


「お待ちしておりました!」


 既に白化していた面積の30パーセントは緑化している。無論、表面だけで、地の力の全てが、戻っているわけではないだろうが。それでも、初めての朗報だ。


「本日を以って、ミヤザキはコウチに付きまする」


「うん。よろしくね」


 その後、ミヤザキから見える範囲の情報をコウチへ流す事、ナインライン及び中つ国の情報等々を詰め、ナインライン南部制圧は終了した。


 ここからはナインライン北部攻略。


「北部制圧に関してだけど、何か意見は?」


「クマモトを叩く事です」


「ふーん」


 ナインライン主要本部は全部で7箇所。南部最大のミヤザキを手中に収めたわけだが。北部最大のクマモトは言う事を聞くのか。


「決して首を縦に振らないでしょう」


「まあ、会ってみるけどね。一応」


「はい。クマモト、トップは綺羅きら ざとう。ナインライン屈指の豪傑です。逆にこの者、そしてクマモトを叩けば、コウチに逆らうものはナインラインには無くなるでしょう」


「なるほどね。参考になったよ。あ、ついでなんだけどさ」


「はい」


「カゴシマ落としといて」


「は」


「田舎なんでしょ、確か。そっちで適当にお願いね」


「はっ!」


 試しか。確かにカゴシマに強者は既に居ない。だが、いきなりこのミヤザキに任せるとは。


「不安?」


「いえ。奮い立っております。活躍の機会を与えられて」


「成功の暁には、カゴシマ運営はミヤザキに任せるよ。もちろん美味しい所はコウチも、もらうけどね」


「それは元より。しかし、望外の事です。ミヤザキも一気に世を騒がせる事に」


「ふふん。コウチに付いた事で、上手く行ったケースも欲しいんだよね」


「ははあ」


「もちろん、どうしようもなくなったら、ミヤザキもカゴシマも消して無かった事にすれば良いしさ。だから、よろしくね。折角ミヤザキにも芽が出たんだ。ボクが潰すのは、もったいないねえ」


「は。心に刻んおきます」


「うん。それで良い。任せたよ」


「は!」


 話し合いは終わった。有我達は北部に向かう。

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