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友情の刹那  作者: wokagura
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第5話 青葉・砂浜・恋心?

津田節視点です☆







 昨日、夜遅くまで遊んだせいか、今日はやけに眠っちまった。


 気づけば時計は11時半だからな・・・・(呆)やっぱ、ちゃんと睡眠時間はとるべきもんだ。うん。また賢明に説教されて、聖奈と美和に茶化されるんだろうな。ま、もう慣れたんだけど。


 ふとケータイを見てみると、メールが入っていた。賢明からだった。


〈遅い!(笑)ま、寝坊だってことは言わんでもわかってる。それより、今日からの集合場所はあの草原だってな。やっと二人に教えたんだな。早く来いよ! _賢明_〉


「ふんっ。」


 思わず笑ってやった。言われんでもわかってるし!


 俺は服を着替えて、階段を下りた。











「よぉーっ!」

「あ、寝坊助節子がやっと来た!!」

()、付けんなって何回言えばいいんだよっ!?」


 笑いながら、3人のいる木陰に身を寄せる。


「あっちーのに、ここは涼しいよなぁ。」

「節ちゃんも偶にはいいとこ見つけるよね。」

「偶にってなんだよ!」

「でも、前みたいに高校のグラウンド使わないでいいから、楽だよホント。今日は何する?」


 そう賢明が俺たちを見ると、聖奈が不意に言う。


「夏休みってさ、もうそろそろ終わっちゃうよね。」

「あー、あと何日だっけ?一週間切った?」

「うは、俺宿題ぜんっぜん終わってねえや!」

「だから言ってるじゃんかよ。初めのほうに終わらせとけって。」


 俺と聖奈と美和はムッと賢明を睨んだ。


「そんな早くおわんの、賢明くらいだろうが!」「病院の跡取り息子と一緒にすんな!」「どうせ成績トップの奴とアタシらは違うんだよ!!」


 皆、言いたいことは同じみたいだ。同時に言われて、賢明は苦笑する。きっと何言われたかハッキリわかんないだろうな・・・。


「んでぇ、話戻るけど、もう少ないじゃん。なのにさ、まだやり残したことなるなーって感じしない??」

「ん、確かに。なんかこのまま終わるのもったいねーよな。」

「来年受験だしさ。楽しめんの今だけじゃん!だから、やり切ろうよ!!」


 正論だと思うな、ホント。偶にはいいこと言う!←仕返しだ。


「じゃ、思いつくもん言ってこうぜ。」

「あ、私海行きたい!!」

「だよねだよね!夏といえば海じゃん!!」


 女子二人は勝手に盛り上がってた。そんなにいいもんかぁ?海。


「えー、あっちーだろ?」

「それにここ内陸部だし遠いじゃん。川ならあるけど。」

「川で泳ぎたくない~!!」

「遠いけどいけない距離じゃないじゃん!!同じ陸なんだもん。」

「そんなこと言ったらなんだってアリになるだろー・・・?」


 2人の活き活きした顔を見詰め、俺と賢明は顔を見合わせた。












「きゃっほー!!ねぇ、海が見えるよ!!」

「うわ、キレー!!」


 案の定、海には行くこととなった次の日。なんでも・・・


『いやぁ、ダメもとで親父に頼んだらさ、アッサリOKだったさ。海の近くに別荘もってるからそこ使えって。』

『流石病院の跡取り息子っ!よろしくお願い!!』


 みたいなことになったらしい。ナイスなのかKYだったのかわからんが、思い出作れるんだったらいいか。恩に着るぜ、賢明☆


「ふと考えたんだけどさー、海の近くに住んでる人ってこれが当たり前だから、こんなに喜ばないんじゃねぇ?そうかんがえりゃ、こいつら、ま、俺たちも含めて幸せ者だよな。」


 あぁ、そう考えたら言えてる。バスに揺られながら、俺は苦笑せざるをえれなかった。


「聞こえてねーようだよ。」


 聖奈と美和の顔が、無邪気だった。









 バシャン!!


 みたいな感じに波のしぶき音が聞こえたかと思えば、もうはや女子二人は泳ぎ回っていた。


「泳ぐの早っ!?」

「だって、もうお昼だよ?なんかこんかやってるうちに日が暮れちゃうよ!」

「・・・それはいいんだけどさ。」

「ン?」


 俺は聖奈の辺りを見てブフッと吹いてしまった。


「うきわってなんだようきわって!」

「だって泳げないんだもん!海の水ってしょっぱいから尚更飲みたくないでしょ?」

「泳げなかったんだ・・・・」


 聖奈は例のうきわでばしゃばしゃ泳ぎながら、美和と何やら話しごとをしていた。不思議に思ったその瞬間____


「「えいっ!!」」


 俺たちは二人にみとも簡単に水をかぶされてしまった。


「こらーっ!節も賢明もちゃんと泳がないとダメじゃん!!」

「早くきなよ~」


 賢明は苦笑して、服を脱ぎ棄て海に飛び込んでった。・・・マジかよ。


「おい、節!!お前も早く来いって!結構気持ちいぞ?」

「わ、わかってるし!」


 慌てて服を脱ぐ。海パン姿になってもまだためらいたかった。


 我慢できなくなった美和が俺の腕を引っ張る。


「ゲッ、待てって!心の準備が・・・・」

「心の準備だァ!?どーせ節はスイスイ泳げちゃうんだしいいじゃんか!」


 み、美和!そんなに引っ張るなよ!!う、うわうわ・・・波が・・・・・


 バッシャン!!


「あ~!!!やめろやめろ!!俺はヤだから!!死ぬって(恐)」


 自分でも驚きだ。こんなにパニくるとは・・・。


「せ、節ちゃん・・・・?」

「も、もしかして節も・・・・」

「「「カナヅチ??」」」


 俺はやっとの思いで砂浜に上がると、息を上がらせた。


「マジかよ!?お前スポーツ万能じゃないのかよ!?」

「聖奈みたい・・・」

「私はまだいいじゃん!水怖がんないんだもん。」


 俺はムッとした。


「俺だってプールだったら泳げるし!でも・・・海は駄目なんだよ!!ガキんとき、おぼれかけて、しかも目の前魚泳いでて・・・・トラウマになっちゃったんだよ!!」


 3人は顔を見合わせてプッと笑いやがった。


「なるほど、そっちね。」

「ご愁傷サマっ!」

「節にそんな過去が・・・www」


 馬鹿にしたように笑われたが、妙に腹立たしい気分はしなかった。一応、いじけたようにそっぽを向いておいたけどな。


「それじゃ、海で泳げない節のために、違う遊びでもすっか!」

「「そーしてやろー!!」」

「なんだよ、そのイヤミ・・・・」


 っということで、ビーチバレーをして思う存分遊んだ。そこらへんにいる海水浴客のなかに、俺たちくらいの歳だったり、大学生みたいな人がいるが、俺たちのように楽しんでいた。多分、そちらからもそう思われてるんだろ。


「聖奈、そっち!!」

「おうよっ!」


 ベグシャッ・・・・


 あぁ・・・こんな立派な転び方をした聖奈を褒めてやろうじゃねーか。








 あっという間、そんな言葉もあったな。今思えば、この時が一番当てはまった気がする。気が付けばもう夕方だ。


「え!?なんかもう夕日が海を沈んでく言わば美しい光景になってるんすけど・・・今何時!?」

「6時・・・・40分。」

「早い・・・。」


 お互いに顔を見合わせた。


「まだ遊び足んない~・・・」

「何のための別荘だよ。まだ遊べるって!」

「そっか。」

「でも・・・海はもうだめだね。皆テント張ってる人ばっかり。」

「んじゃ、別荘に行こうぜ。」


 何故か、後ろ髪が引かれる思いだった。友達と行く海は格別だったのかもな。







 別荘についても、大して楽しいこともしないで、飯食ってトランプやったり軽い遊びしかしなかった。


 案の定、聖奈をはじめ美和も俺も退屈感を感じた。賢明は苦笑した。


「仕方ねぇなー。あ、ここ少し歩いた場所に心霊スポットあるんだけど・・・・」


 その言葉に、聖奈はガキのように反応した。


「なになにっ!?そこホントに出んの??」

「ん~・・・出るらしいよ。体験者いるんだってよ。」

「マジでぇ!?ね、いこいこb」


 勿論美和は大賛成。


「節は?」

「あ、俺も行く。」

「ヤッタネ☆」


 っということで、俺らはその心霊スポットやらに行くことにした。意外にサラリと行く感じになったけど、そんで悪霊に憑りつかれたらどうすんだかな。



















 でも、俺たちは忘れていた。この日の、夜の天気は・・・・・大雨、嵐だってこと。





 ザァーッ・・・・





 あとそんなにない距離だってのに、こんなに降られたら、そりゃガッカリするじゃねーか。俺も心霊スポット結構楽しみにしてたんだぞ!


「しゃーねーな。戻るか?」

「え~」

「今からいこってのかよ!?」

「だってさぁ、初めてじゃん。行きたい~。」


 確かに初めてだよな。そりゃわかるぞ。でもこれじゃあな・・・・。と心の中で思いながら俺はただ黙ってた。不意に足元を踏んでみると、微かにぐにゃとした感覚があった。


「おい、なんか地面もヤバくなってきたけどー?」

「マジィ!?」

「あぁ、思い出したけどここって崖の上並みにもろかったっけ。もしかしたら崩れるかも・・・・」


 途端に皆の顔が青ざめていくのがわかった。


「ホントヤバいじゃん!いや、マジで!!標高高いじゃんよ!!!」


 思わず叫んじゃった。その時、足を賢明のほうに踏み込んだからその振動で、なんちゅうの・・・とにかく地面が崩れた。


 ガシャッ!

 大きな音。


「ギャ~!!!」

「ワァ~!!!」


 それよりも大きな音と言えば、聖奈と美和の叫び声だった。地面は真っ二つに割れて、引き裂かれてしまった。


「節!?」

「ちょっと、どうなってんだよ!?」


 そう言ってる間もなく、目の前が真っ暗になった。


 なんか・・・ヤバくね?














___________________・・・











「___っちゃん、起きてる・・・?」


 ん・・・?なんだ、この声。


「節ちゃん、しっかりしてよ!」


 あぁ、この呼び方は・・・・・・


 意識がしっかりしてきて、目の前のものが見えるようになった。そして、俺のすぐ目の前にいたのは・・・・・


「あっ、節ちゃん・・・!よかった、生きてた・・・。」


 聖奈だった。


「聖奈・・・・」


 そういえば!と、俺はガバッと起き上がった。すっげぇ頭痛いんだけど・・・・


「ってぇ・・・ここどこだよ。」

「洞窟みたいだよ。私も気が付いたらここにいた。」

「洞窟?あれ、美和と賢明は!?」


 聖奈は立ち上がって洞窟の外を覗いた。


「あの土砂崩れで別れちゃった。無事かな、二人とも・・・・」


 なんだろう、この感じ。いつもの聖奈じゃない。瞳自体が違うし、声も暗いじゃねぇか。


「・・・・・」


 思わずバリバリ頭を掻いた。居心地悪いじゃねーかよ、どうにかしてくれー。


「見てよ、まだ天気治まってない。」

「だな。」


 俺も外を覗いた。なるほど、こんな大荒れの天気も偶にしか見ないな。


 不意に、聖奈が俺に振り向いた。


「節ちゃん・・・」

「あん?」

「ねぇ、ちょっと。」


 ギュッと俺のリストバンドを掴んでくる。


「なんだようっせーな・・・・・っ。」


 聖奈の顔を見た瞬間、息が詰まった。目に涙を溜めて、小刻みに震えていたわけだ。


「なっ、何泣いてんだよ。らしくねーじゃん!」

「どうしよ・・・節ちゃん。」

「ハァ?」


 今度はリストバンドどころじゃねぇ。俺の両腕を掴んできやがった。


「二人死なせたらどうしよう!?私の責任だよぉ・・・・・!!!わぁぁぁ!!!」


 聖奈は泣きじゃくり始めた。こうなっちゃ、止められねぇのはわかってる。


「チッ、どうしてテメーの責任になるんだよ?」

「だって、天気荒れてきたのに無理にいこって言ったの私だよ?ひっく。それで・・・こんなことになっちゃって・・・私が二人を殺したんだァ!!」

「まだ死んだって確実じゃねぇし!勝手にダチ殺すな!」


 俺はつい荒々しく言ってしまった。聖奈ってこんなに自分責める奴だったんだな。今更気づいちまった。


「それも・・・そうだね。」


 ま、そのおかげもあってか聖奈は泣くのを止めた。泣き虫。聖奈の性格がまた一つ増えた気がした。


















「でもさ、これからどうする?節ちゃん。」


 洞窟の中にあった岩で背中合わせにして、俺と聖奈がそれぞれ服の水を絞っていた時だ。


「天気治まんの待つしかねーだろ。」

「だけど、やっぱ二人心配じゃん?」

「この天気で外で歩こってのかよ!?」

「・・・ごめん。」


 やっぱりいつもの聖奈じゃねーのは確かだな。


「今、暇つぶしする物なんてもってなし・・・ヒマだね。」

「ホント、ヒマ。」


 このまま二人で無言なまま雨の音を聞くわけにもいかによな・・・。いや、俺が嫌だ。


 その時、また聖奈が話し掛けてきた。


「ねぇ、会ったばっかの頃、覚えてる?」

「そんなもんいちいち覚えてられっかよ。」


 俺のペシャッとした言葉にも動じずそのまま話し続けた。


「節ちゃん、工業系のこと向いてんのに普通科の高校入ったじゃん。何でって訊いたら”馬鹿だから”って答えたの。」

「ふぅん。」


 そんなこと言ったかも。


「馬鹿だからって具体的にどんなことなの?この高校、工業高校よりずっとランク上じゃなかった?」

「まぁ、そうなんだけどさ。」


 俺は仕方なく話すことにした。


「俺も、中学の頃は工業に入るってゼッテーに決めてたんだ。技術の授業は一番好きだったし、実力もそれなりにあったからさ。」

「うんうん。」


 岩ごしでの会話は、不思議な感じがあった。


「でも、親が反対してきたんだ。将来には普通科のほうが絶対いいってさ。自分のランクに合った高校にしろって何度も何度も。」

「え、なんで!?」

「知らねぇよ。でも、今まで俺に何も言わなかった親だったんだよ。自分のことは自分で責任取れ、ただ他人にだけ迷惑はかけるなって。このときだけ、うるさく言ってきた。よっぽどのことだって思って俺は言うとおりに受験しちまった。」


 聖奈が押し黙っている気がする。


「馬鹿だよな、俺。そういうときこそ自分で決めるべきなのに。そうしたら、毎日がきっと楽しかったかもしれねぇ。」

「今の毎日、楽しくないの?」

「なっ、なんでそうなるんだよ!?違うって。今は後悔してねぇよ。工業に行けば、こんなに女のコもいなかったし、何より賢明と美和と、そして聖奈の様なやつに巡り会えなかったからさ。」

「そっか。」


 聖奈の声質が明るくなった。そして、不意に岩の陰からぬっと顔を出してくる。


「なんだ。そんな、節ちゃん馬鹿じゃないじゃん。そう思えるんだからさ。私もねッ、今思ったよ。高校って巡り会いなんだなって。実は、この高校、ランクより上だったんだ。」

「え?」

「どんなテストうけても、判定はCかB。ギリギリ受かる可能性があるって感じだったの。でも・・・受かっちゃった☆そんで、美和と賢明と節ちゃんに会えた!」


 満面な笑顔だった。天気を覆すような、この時期に咲く、向日葵のような・・・・


 俺ももらい笑いした。







「お、嵐止んだみたいだぞ。」

「マジ!?」


 洞窟の外から差し込む光に、俺と聖奈は顔を見合わせた。

















「いやはや、あの時は凄かったねぇ・・・・」

「オジサン染みた物言い・・・」


 ここは俺たちの秘密基地。なんと、あの後二人と合流して無事に戻ってこれたってわけだ!!


「皆、風邪ひいてないのがスゴイ。」

「ほにゃららは風邪ひかないんだな。」

「言えてる。」

「俺、バカじゃないんだけど・・・」

「別にバカって言ってないしー?」


 日常のお喋りだ。なんか、こういうのもささやかな幸せってやつなのかな。


 でも、やっぱり・・・・






 あの砂浜でのことはいい思い出になったかな。






次回もよろしくお願いします☆

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