第3話 苛立ちの上に輝くヒカリ
聖奈視点です☆
「ったく、苛つくなぁ!」
八つ当たりするように節ちゃんはサッカーボールを蹴った。でも、賢明はそれを軽々と足で受け止めた。
「何がだよ。この短気。」
「短気じゃないし。」
「いや、絶対短気だよ。すぐ不機嫌になるし。」
「そーそー!うちら何も悪いことしてないのに~」
私たち3人で責めまくると節ちゃんはすねたようにそっぽを向いた。
「あっそうかよ!」
「だからよ、何があったんだって訊いてるじゃん。」
「あっ、もしかして昨日のこと?」
「昨日?」
私のほうを向くのは賢明と美和。
「昨日って、節来なかったよな?」
「そうそう、どうせ寝坊でしょ。なのになんかあった訳?」
「私のスクールバッグ届けてくれた。」
私はそう言いながら賢明からのボールを受け取る。
「へー、気が利くじゃん。」
「そうだよ、俺めっちゃいいことしたんだからな!」
「じゃあなんで苛ついてんのサ。」
「あれでしょ?うちの兄ちゃんと気が合わなかったんだよどうせ。」
「どうせって言うな!ホントなんだよあの兄貴!」
美和にボールを蹴ると、呆れた表情を節ちゃんに見せてみた。
「まぁ、うちの人変わってるのは認めるけどさ、初対面でそこまで言わんでよ。妹としてヘコむ。」
「聖奈の兄ちゃんってあの人でしょ?前に遊びに行ったときにあった人。」
「そうそう。」
「え、別にいいじゃん。真面目そうで、聖奈とは真逆だけど。」
「ぜんっぜん!俺は嫌いだね、ホント駄目だわああいう人。しかも教師だぜ?何言われるか堪ったもんじゃねーよ!!」
「まぁまぁ、落ち着けよ節。ただ会っただけなんだろ?大丈夫だって!」
賢明は面倒くさそうに言った。
「でもまた会うぜ?きっと。」
「もう、他のこと考えようよ。節そればっかり。」
美和が節ちゃんにボールを受け渡した。
「あっそういえばさー」
節ちゃんが回転させるように蹴ったボールが空に上がった。
「今夜、花火しねぇ?」
「いってきま~す。」
玄関口でそういうと、兄ちゃんはそれなりに慌ててリビングのドアを開けてきた。
「待て聖奈。どこへ行く?」
「だから友達と花火だって。」
「・・・まだ明るいぞ。」
「いいよ、暇つぶしなら余るほどあるんだから~。」
「友達と言うのはアイツとかか?昨日の・・・津田。」
「なにその言い方!何も悪いことしてないじゃん。節ちゃんは。」
「でも不良だろう、あの男。そんなやつと一緒にいただなんて見損なったぞ。」
「身なりとか態度とかはそりゃ悪いかもしれないけど、でもいい奴なんだよ。兄ちゃんにそれがわかるかっ!!」
兄ちゃんは壁に寄しかかり、馬鹿にしたような口調をし始めた。
「それはわからないさ。俺はいつだってお前を監視してるわけではない。だがな、一つだけ言えるのはそれは仲がいいからだよな?それでああいう態度を取るのであればどっちみち同じことだと思うが?」
「最低・・・・」
私はめいいっぱい兄ちゃんを睨んで玄関のドアに手を添えた。すると兄ちゃんの手が私の腕を掴んだ。
「しつこーい!!」
「待て、これだけだ。いつ戻る?」
「わかんないって。でも結構遅くなると思う。」
「なら約束しろ。門限10時30分。一秒たりとも見逃さない。」
「ハ!?」
「それくらいは守れ。じゃないと変質者がナンパしに来るぞ。」
「別にいいし!一緒に遊んだら楽しいカモよ??」
「馬鹿か!?」
兄ちゃんは本気のキレモードになった。
「そうして危ない方向に進んでいったらどうするんだよ!」
「冗談だってば。そんな怒んないでよ。」
「本当だな?」
「兄ちゃん、ホントしつこいって。」
兄ちゃんは溜息を吐いて腕を放した。
「気を付けて行ってこい。」
「は~い。」
少し反抗的な態度で私は家を出た。だって、過保護だよ。節ちゃんの言ってることわかるかも・・・
「おっせーぞ聖奈!」
「ゴメン!!」
河川敷にはもう3人は集まっていた。そうだよねー・・・ハハ。
「聖奈待ってたら暗くなっちゃったね。もう始めちゃう?」
「そうするかー。」
「あれ、私のせい?」
「当ったり前だろ!!」
「ゴメンチャイ♡」
地面を見ると、たくさんの花火があった。
「これ全部用意したの?」
「2袋は美和の。妹がもらってきたんだと。」
「あとは俺と賢明で買ったんだぞ。その分はあとで何とかしろよな!」
「わかってますゼイ☆」
私は手をグッチョブさせた。
そんなこんなで小さな花火大会が開催された。
まずは手持ち花火。
そのままじゃつまらないから、ここは高校生風。ってかうちら風☆
何本もいろんな種類の花火を持って、一気に振り回す。これは毎回やってることだ。
節ちゃんなんて花火を股に挟んで「小便小僧」とか言いやがったよ。アホ!賢明は文字書いてるし。とにかく楽しい!
いつの間にセットしたのか、節ちゃんは打ち上げ花火に火をつけた。
それらはパンッと音を立てて空に舞った。そしてパァッとヒカリが輝いた。
「やっぱいいな。パァーッとなってさ。モヤモヤしてたことなんて吹っ飛んじゃうし!」
「確かにー♪」
兄ちゃんのことなんてすっかり忘れていた。
でも、その楽しさは一瞬にして消えてしまった。気が付けば門限の時刻だった。
「あーっ!私帰んなきゃ!!」
「なんでー?まだこんな時間じゃん。」
「門限つけられたんだった。」
「ま~たあの兄貴?」
「いくらなんでも厳しすぎるだろう。もう子供じゃないんだしさ。」
「そうなのにね!あぁ、ホントヤバい。んじゃね☆」
私は急いで自転車に跨った。
「聖奈ー!明日も来るよな!?」
「うんー!!ゼッタイ行くから~!!」
そう叫んで足早にペダルをこいだ。
急がなきゃ。あと5分もない。
そう思いながら帰ってくると、やっぱりアウトだった。兄ちゃんはドアごしで腕組みをしている。
「ねぇ兄ちゃん開けてよ。」
「嫌だね。俺は言ったはずだ。3分7秒の遅刻だぞ。」
「そのくらい許したっていいじゃん!本当に入れてくれないの?」
「当たり前だ。自業自得。」
「なんで!?どうして友達と遊ぶことにそうやってケチつけるの?」
「ケチはつけていない。ただ約束事を守らないのが悪いんだ。」
「そんなに節ちゃんが気に入らないの!?でもだからって今まで許してたことをさ、厳しくするのはなんていうの・・・卑怯じゃない!?」
「・・・・・」
沈黙がうまれた。兄ちゃんは否定はしない性格だけどこうやって逃げる。
「・・・・そうか。それならそこで大人しくしていなさい。」
兄ちゃんはそう吐き捨てて玄関から消えた。・・・・信じらんない。
私も頑固だよ。そこは兄ちゃんを同じ。だから粘ってここで待ち続けるさ。さて、どっちが勝つだろうね。
夏だから、寒いってことはない。でも、じっとしてるのは結構キツイことだった。
負けないよ、兄ちゃん。私は悪くないから。
何分経ったかわからない。その時、玄関の電気が点いた。
と思えばドアが開いた。
「・・・お前ってさ、頑固だよな。そこだけは俺と同じだ。だが、今回は俺の負けだ。」
私はフッと笑ってやった。
「早く中に入りなさい。そして風呂入れ。顔に煤がついている。」
・・・もしかしたら兄ちゃんは私を心配してたのかな?やっぱ、過保護だよ。でも、なんか嬉しい気もする・・・・かな?
そのあと洗面所で顔を見ると、確かに顔は真っ黒だったりして(笑)
更新が遅れてしまい、すみませんでした>_<
次回もよろしくお願いします☆