第1話 切っ掛け
妹の部屋のドアに手を掛けると、
「ぐおぉぉ~・・・・」
といううめき声が聞こえた。逞真は不思議に思いドアを開けた。そこには妹・聖奈の背中があった。
「何という声を出しているんだ、お前は。」
軽く頭を叩くとビクッと振り向いた。
「うわっ、なんだ兄ちゃんか。バカになるから頭叩かないで。」
「もともと馬鹿だろう。」
「これ以上バカになりたくないの!受かんなかったらシャレになんないよ。」
「そうか、そろそろセンター試験だもんな。」
「そうなの。」
逞真は机のテキストを覗きこんだ。
「ところでどの教科をやっているんだ?」
「数学。」
逞真はじっと解答欄を見て、ニヤリと笑った。
「そこ、答えが違う。」
「・・・・・・・マジィ?」
「ケアレスミスだ。見落とすな。」
「あ、ホントだ。流石数学教師。早いねぇ~」
そう、聖奈の兄・逞真は中学校の数学教師なのだ。
「お前、大丈夫か?受かる自信ある?」
聖奈はガッツポーズして逞真に振り向いた。
「安心せぃ!それに、どうしても大学に受かんなきゃいけんしね。じゃないとアイツに会えないし。」
逞真はふと思い出したように言った。
「アイツ・・・本当に聖奈の所に戻ってくるだろうか?」
「大丈夫、そういうの絶対守るやつだからね。来ないなら逆にこっちが行ってやるよ。」
「そうか。」
「元気かな、節ちゃん。」
「ったく、急に思い出してしまった。」
逞真は今度は妹の頭を撫でて部屋を後にした。
自室に戻ると、ベッドに寝転がった。
「本当、らしくない。聖奈が、将来の約束をするなんてな。・・・いや、そう思い込んでいるだけか。」
逞真はその過去について思い出した。
初め・・・短くてスミマセン!!
いや、次から長くするつもりなんで、宜しくお願いします☆