熱い海の日
会話文のみで構成されています 嫌いな方はご容赦を
冒頭を除き男女が交互に喋っています
「うーみーはーひろいーなーおーきーなー……。
あつい…………
…………………そうだ、京都に行こう!」
「と、いうわけでホイホイ京都に来ちゃった私は至って普通の女子校生!」
「おいマテこら、看板に偽りありすぎるだろ」
「おっと道行く通行人A、モノローグに突っ込むのはマナー違反よ」
「ツッコミ待ちですと言わんばかりに口に出してたじゃないか……」
「この口煩い上にうだつの上がらない中肉中背の微妙ハゲも昔はちょっとイケメンだったのよ」
「ハゲてないよ?」
「それがいまでは腰も曲がって目は腐り、世にも恐ろしいゾンビのような体臭に……」
「なってねぇよ! つかさっきから誰に対して話し掛けているんだよ」
「え? そりゃ天空に座するという全知全能の神、かな?」
「一応聞くけど、なんで?」
「今から成仏する魂がどんな姿形で人となりか分かっている方が地獄に落としやすいでしょ?」
「殺す気かっ! そして地獄行きは確定なのか!」
「乙女の柔肌を弄んだ罰よ」
「乙女(笑)」
「はーなーでーわーらーうーなー」
「気持ち悪い、年齢考えろ。大体弄ぼうにもお前の胸は絶壁じゃぶげらっ!?」
「失礼ね! 私は永遠の17歳よ!」
「いたたた……。17歳と120ヶ月だろがべらっ!?」
「そしてちょっとはあるわー! あと119ヶ月と29日じゃー!」
「ぐぎぎ、鳩に入ったぞコラ」
「反省した?」
「お前はしてないよな」
「可愛いは正義だからね」
「ぷ。可愛い(笑)
まてまて、ループする」
「むー」
「むくれるな。あー、とりあえず昼飯でも食うか」
「いつまでも駅前でじゃれてる訳にもいかないしね」
「んじゃなに食う?」
「お寿司!!」
「へいへい」
「なーんーで回転寿司なのよー」
「寧ろ回らない寿司だと思ってたのか?」
「大きくなったら本物のお寿司をご馳走してあげますよって言ってたじゃない!」
「過去を捏造するな」
「悲しいけどこれ真実なのよね」
「マジで?」
「大きくなったらなにかしてくれるってところだけ」
「ほぼ嘘じゃねぇか」
「99%が嘘でも1%の真実を見抜くのよ」
「どこの探偵だ」
「確かコ〇ン」
「言わんでいい!」
「コーロwww」
「そのネタ万人が分かると思うなよ。あと律義にダブリューダブリューダブリューまで言わんで良い」
「じゃあどうしろって言うのよ!!」
「いきなりキレた!? なにゆえ!?」
「ふ、キレやすい今時の若者なのよ。ギザギザハートなのよ」
「少なくともそれは今時の若者のセリフじゃねーな」
「そう?」
「ああ。むしろ20代かも怪しいな」
「その台詞で私のハートブレイクショット」
「意味分かって言ってんのか?」
「NOよ」
「カッコつけてるのが逆にカッコ悪い」
「人の揚げ足ばかり取る男に言われたくないわー」
「なに、ほっといていいの?」
「もろちんよ!」
「…………」
「あ、ごめん。やっぱり相手して下さい」
「真っ赤になるくらいな言うなよな」
「うるさいうるさいうるさい!」
「うお、がっついて食うなよ! あくまで寿司だぞ!!」
「所詮一皿百円じゃーい!」
「いや、そういうことじゃなくて、がっついて食う種類の食べ物じゃないだろ」
「私の寿司が食えねーのかー!」
「酔っ払いも真っ青だな……」
「ううぅ……悔しいけど美味しい……百円の癖に」
「百円をバカにするんじゃない」
「まあそろそろお腹いっぱいだからそんなでもないけどね」
「満腹に美味なしってな」
「そそ。それじゃそろそろお勘定をお願いするよ」
「俺が払うのかよ……二人で35皿か。よく食ったな」
「美味いものは別腹ってね」
「普通『甘いものは別』腹だろ」
「じゃあ美味い物も別腹」
「腹何個あるんだよ」
「私の胃袋は宇宙だー」
「百八と返ってくると思ったんだがな」
「ふふん、まだまだ甘い! ということで甘〜いデザートを」
「太るぞ」
「胸にいくから良いのよ」
「それを言って良いのは中学〜高校までだ」
「む、胸にいったから良いのよ」
「……本当に胸にいってたら良かったのにね」
「しみじみ言わないでよ! 悲しくなるよ!」
「悲しいくらいないもんなスパン!」
「余裕のある叫び声ね」
「そりゃハリセンで叩かれた程度じゃな。つかどっから出した」
「四次元ポケットから」
「ほほう、他に何か入ってるのか?」
「テテテッパパーン! おーさーいーふー」
「うろ覚えな上に棒読みかよ」
「や、まあそうだけど、あんたも覚えてないでしょ?」
「当然だっ!」
「威張って言うな!」
「スリッパまで用意してたのか」
「ふふん、ツッコミ職人と呼んでちょうだい」
「親方! 胸の残念なおばさ……まて、バールのようなものをしまえ」
「にこにこ」
「台詞と表情が一ミリたりとも一致してねぇ!」
「10%ほど冗談よ」
「九割がた本気じゃねぇか……。
全く、冗談の通じない奴だ」
「そんなことないわよ。冗談みたいな顔したあんたに付き合ってるんだから」
「これでも顔は普通だ。というか、付き合わされているのは俺の方だっつーの」
「そういえばそうだったわね」
「……で、わざわざなんの用だ?」
「京都に来てやることなんて決まってるでしょ。観光よ」
「俺ここ、地元なんだが」
「だから呼んだのよ。案内しなさい」
「やだ」
「えー」
「なんで貴重な休日をそんなことに潰さにゃならんのだ」
「いいじゃない。こんな美少女と街を回れるんだから」
「言ってて痛々しくない?」
「は、恥ずかしいけど痛々しくはないわよ!」
「本当に?」
「うぅ……。本当はちょっと無理があるなと……」
「わかってるなら美人ぐらいで止めとくように」
「え」
「ほら、いい加減でるぞ」
「あ、ちょっと待ってよ!」
「結局割り勘になったか」
「そりゃそのためにお財布だしたからね」
「別に奢りでも構わなかったんだがな」
「私が構うわー。図々しい女みたいじゃないかー」
「え、なにを今更」
「ぐぬぬ」
「はいはいむくれるな。お前は図々しくないよ」
「そして清楚でおしとやかよね」
「図々しいわ!」
「で、目的地はどこなのよ」
「自分でふったボケをスルーするのかよ……。
とりあえず……延暦寺かな」
「ここ京都でしょ!?」
「当たり前だろ? もしかしてお前の地元には延暦寺ないのか?」
「ないよ! ていうか京都にもないでしょ!」
「おっくれてるー。全国津々浦々の延暦寺を知らないのかよ」
「嘘だっ!!」
「嘘だけど」
「やっぱり!」
「と、馬鹿な事言ってる間に着いたぞ」
「延暦寺に?」
「清水寺に」
「寺しかあってないじゃない」
「三分の一も合ってりゃ上等だ」
「その理屈だと大体のお寺は大丈夫なような……」
「ちっさい事は気にするな」
「何故だろう、視線が釈に障るわ」
「ちっぱい事は気にするな」
「清水の舞台からたたき落としてやろうかしら!」
「そこは飛び降りろよ」
「あんたの首に命綱を付けて飛び降りようか?」
「死ぬわ! 俺もお前も!」
「私は死なないわ。パラシュート付けるもの」
「この程度の高さでパラシュートが意味を成すか!」
「じゃあ飛ばない」
「そもそも飛んじゃだめだろ」
「じゃあ何しにきたのよ」
「観光っていったのお前だろ!?」
「こんな有名所義務教育の遠足で来たことあるに決まってるでしょ。
もっと地元の人間しか知らないような極秘スポットないの?」
「ふ……平日は仕事、休日は半引きこもりの俺がそんな場所知ってるとでも?」
「思わない」
「デスヨネー」
「こいつに頼った私が馬鹿だったのかな」
「ばーかばーか」
「欝陶しいわ!」
「まあ落ち着け」
「散々煽ったのあんたでしょうが……」
「とりあえず涼しい所に行こう」
「同感。叫び過ぎて喉も渇いたし」
「とりあえずこれで我慢しとけ」
「冷たっ!?」
「つめたーいのボタンを押したからな」
「缶ジュース……いつのまに」
「男に秘密はつき物さ」
「うざっ! 取り殺されてしまえば良いのに」
「それじゃあ憑き物になるだろうが!」
「貴方の背後に長い髪の……」
「美少女なら許す」
「マッチョが!」
「悪霊退散!」
「マーッチョマーッチョまちょマッチョ」
「なんの歌だ」
「マッチョの歌」
「ストレートにも程があるよ!」
「……ストレートじゃないわよ」
「どこが!?」
「実はマッチョじゃなくて、いやマッチョなんだけど……」
「なんだよ」
「ホモなの」
「チョットオハライニイッテクルネ」
「……ばーか」
「やっと落ち着いたな」
「文明って素敵ねー」
「人力車の兄ちゃんにも感謝しないとな」
「そうねー」
「駅とか観光名所じゃなくて、喫茶店までって頼まれたの初めてだろうな」
「どうかしらねー」
「うん、まあ」
「ねー」
「脱力しすぎだろ!」
「いいじゃない」
「お前は何しに京都まで来たんだ……」
「いやーぶっちゃけこの時期に観光は無謀だったわ」
「本当に無計画だな」
「照れるわ」
「褒めてねぇよ……。
ほら、とりあえず何か注文するぞ」
「あいすみるくてーよろしく」
「はいはい……すいません、アイスミルクティーとアイスコーヒーをお願いします」
「あとイチゴパフェもお願いします」
「……初めから自分で注文しろよ」
「店員がいなくなるまで待つあたり紳士的じゃない」
「つかまだ食うのか」
「さっきは結局デザート食べられなかったし、歩き回って小腹も空いたし」
「ほぼ人力車の旅だったけどな」
「それに飲み物だけで時間潰すのも悪いでしょ?」
「コーヒーだけで5時間居座る猛者もいるらしいぜ」
「超迷惑な客!」
「俺の事だが」
「案の定!」
「まあそこが知り合いの店だったからってのもあるな」
「それでもどうかと思うけどね……。
と、どうも」
「んーなかなか旨い」
「通ぶっちゃって」
「これはブラジル産の豆だな。深い味わいにも関わらず後味に透明感がある」
「え、本当に解るの?」
「いや、適当 」
「あんたねー」
「俺は今ならお得用のインスタントコーヒーでも絶賛出来る自信があるね!」
「安上がりな舌……」
「今なら、だよ」
「普段は違うの?」
「一人で飲んでも味気ないからな」
「なら私に感謝しなさい」
「だが断る」
「言いたいだけでしょ、それ」
「逆に考えるんだ、理由なんてなくてもいいんだって、そう考えるんだ」
「まったく……。あ、でも本当に美味しい」
「俺に感謝するんだな」
「はいはいありがとうありがとう」
「もっと愛を込めて!」
「調子にのるなー」
「それでもツッコミをくれるお前が好きだぜ」
「もっと愛を込めて!」
「立場逆転してんじゃねぇか!」
「わ、私は好きだなんていわないんだからね!」
「しょぼーん」
「口で言っても説得力がないわー」
「まあ別にショックでもないし」
「それはそれで私がショックだ」
「ダウト」
「正解」
「……パフェもきたことだし、ちょっとのんびりするか」
「……あげないわよ」
「ケチ」
「んーもう良い時間ね」
「夏の夕暮れって不思議な気分になるよな」
「というと?」
「性欲を持て余す」
「変態!」
「よし、ホテルに行くか」
「靭帯!!」
「うおっ危なっ!? なんでハサミなんて持ってんだよ!」
「切ろうかと」
「靭帯はハサミで切るものじゃありません!」
「大丈夫、痛みは一瞬よ」
「どこの達人だよ!
冗談だから仕舞え仕舞え」
「……チッ」
「普通に声に出すなよ。余計に傷付く」
「計画通り」
「ぺらっぺらな計画だろうな」
「結果が全てなの」
「だが過程を経ずして結果はでーぬ」
「結果のみを論ずるのは馬鹿のすることよ」
「封神演技は面白かったよな」
「私個人としては太公望はやっぱり受けだと思うの。誘い受け」
「やめて、俺の思い出を汚さないで」
「なら今どこに向かってるのか教えなさいよ」
「川」
「右手にもう見えてるわよ」
「その幻想を……」
「はぐらかすなー」
「誰が?」
「あんた以外に誰がいるのよ」
「……お前、今日はなにしに来たんだ?」
「観光……」
「仏の顔も三度までだぞ」
「ならあと一回大丈夫ね…………」
「俺は仏じゃないから二回が限度だ」
「……」
「……」
「疲れたのよ」
「ん」
「昨日と同じ今日。今日と同じ明日」
「世の中そんなもんだろ」
「それなのに、得体の知れない焦りだけがどんどんと増えていく」
「焦り……ねぇ」
「真っ暗闇の泥沼を、手探りで歩いている気分。
誰も助けてはくれない。支えてはくれない」
「それで?」
「それだけよ。疲れたから、息抜きに来たの」
「若々しい悩みだな」
「そうかしら」
「そのくせ、対処の仕方は大人だ」
「そうかもね」
「わからないでもないよ」
「ん」
「俺も時々、自分の存在を疑問に思う。考えれば考えるほど消えたくなる」
「中二病」
「そ、中二病」
「いい年こいたおっさんが中二病とか……」
「子供心を忘れないと言ってくれ」
「中二病がなおらない、でしょ?」
「ぐぅう、鎮まれ俺の右腕!」
「解放したらどうなるのっと」
「多分世界的なものの危機を救う」
「解放したほうが良いじゃない!」
「そのかわり俺が大ダメージを受ける」
「何の問題もないわね」
「痛いのやだ〜」
「駄々をこねる方が痛々しいわ!」
「知ってる」
「うざっ!」
「……疲れるな」
「……疲れるわね」
「やめる?」
「ん、やめない」
「そうか」
「今日はちょっと休憩するだけ。また明日からはがんばる」
「良い心掛けだ」
「なんで上から目線なのよ」
「俺の方が年上だからな」
「同学年でしょ」
「俺は年齢の話をしているんだ」
「二ヶ月だけでしょ」
「日付が変わるまでは一つ上だぜ」
「やーいおっさん」
「ほぼ同じ言葉がお前に跳ね返るぞ」
「あんたより若いから良いの」
「そうだな、若いからな。
若いんだから、年上に甘えとけ」
「頼りになる人がいたらね」
「俺オレ」
「詐欺?」
「オレ、オレダヨオレ、ってなんでじゃ!」
「……ばーか」
「素直じゃねぇな」
「人の事言えるの?」
「俺は素直だぜ?
ただ本音を飲み込むだけで」
「それ、素直じゃないわね」
「大人だからな」
「言ってること無茶苦茶じゃない?」
「そうかもしれない」
「自覚あるのね」
「ないと思ってたのか?」
「あんた馬鹿だから」
「関西圏ではアホを使え」
「だが断る、よ」
「お前も言いたかったのか」
「実はちょっとだけ」
「お前は次に『なかなか楽しい』という」
「なかなか楽しいわね……ハッ!?」
「ノリが良くて助かる」
「感謝しなさい」
「お前も俺に感謝しろよ」
「何を?」
「今日一日付き合ってやっただろ」
「あんたに取ってはご褒美でしょ」
「まあな!」
「本当に!?」
「俺はお前が大好きだからな!!」
「え?」
「やっと言えたぜ」
「え、なにこの告白」
「青臭いのもいいだろ?」
「いきなり叫ばれたら恥ずかしいでしょ!」
「はっはっはっ。安心しろ、俺もだ!」
「このドアホ!」
「とりあえずここから離れるぞ!」
「そうね!」
「駅前まで来たら大丈夫だろ」
「なんだってこの糞暑い日に全力疾走しなけりゃならないのよ」
「何故だろうな?」
「あんたの冗談のせいでしょうが!」
「おっと勘違いするなよ、俺はいつだって本気だ」
「嘘ばっかり」
「でもさっきのは本音だぞ」
「っはいはいどうも!」
「なんか学生みたいで楽しいな」
「私は筋肉痛が怖いけどね」
「なに、二日後にくるから今日は大丈夫だろ」
「学生は絶対に言わない台詞ね……」
「おっさんだからな」
「中二病のね」
「それで素直に生きられるのなら、俺は別に構わない」
「よ! 大根役者!」
「やめて、文化祭での黒歴史が!」
「あんた本当に演技下手だもんね」
「だから本音で生きることにしてる」
「恥ずかしい奴」
「お前もだろ」
「私は演技が得意よ」
「爆発しなかったらな」
「爆発する前にガス抜きに来るわよ」
「……そか」
「そうよ」
「ならいい」
「だからなんで上から目線なのよ」
「俺の方が年上だから」
「あと四時間だけね」
「四時間あればいろいろ出来るさ」
「そうね……ならちょっとだけ」
「ん」
「甘えて良い?」
「……どんとこい」
「ん……」
「……」
「……」
「顔、真っ赤だな」
「あんたもでしょ」
「本当に学生の恋愛みたいだな」
「中身が成長してなかったってことね」
「とっくに気付いてたけどな」
「まああれだけアホなやり取りしてたらね」
「アホで結構!」
「開き直るな!」
「だが……」
「断る」
「よろしいならば戦争だ」
「その飛び方は予想外!」
「はっはっは。こりゃ一本取ったな」
「それ取られた側の台詞じゃないの?」
「台詞も取られたってことで」
「上手くないからね」
「上手くなくても良い」
「えー」
「時間稼ぎだからな」
「なんの?」
「言ったら意味がなくなる」
「諦めなさい」
「よし諦めた」
「潔いのかただのアホなのか」
「ちゃんとバカじゃなくてアホを使ってくれるお前にゾッコンラブ」
「また古いわね」
「おっさんだからな」
「中二病のね」
「以下ループ」
「抜ける条件は?」
「日が変わる」
「長いわ!」
「俺もそこまで待てそうにない」
「ならやるなー」
「ちょっと恥ずかしい事言うから覚悟がいるんだよ」
「このやり取りも充分恥ずかしいと思うけど?」
「比べ物にならない恥ずかしさなんだ」
「そんなに?」
「というか、ベクトルの違う恥ずかしさなんだ」
「というと?」
「本当は誕生日プレゼントとして渡すつもりだったんだけどな」
「気を使わなくていいわよ」
「本当はせびりに来たくせに」
「大体いつ用意したのよ」
「一週間くらい前かな」
「……私昨日までなんの連絡もしなかったわよね」
「そうだな」
「なんで来るって分かってたのよ」
「男の勘ってやつだ」
「そういうのって女の特権じゃないの?」
「じゃあ中二的に予知能力」
「なんでも中二病って言えば済まされると思ってんじゃないわー」
「……じゃあ、好きな女の誕生日に会いたい男の願望」
「うぐ、不意打ちで恥ずかしい台詞はやめてよね」
「お前から連絡なかったら俺の方から会いに行ってたよ」
「え、ちょっと」
「お前の方から連絡がきて、嬉しかった」
「なにこの空気」
「数時間だけ早いけど、誕生日おめでとう」
「一応ありがとう」
「産まれてきてくれて、ありがとう」
「それって親が子供に言う台詞じゃない?」
「もうちょっと雰囲気に乗ってくれよ」
「乗れるか! 唐突なうえに恥ずかしいわ!!」
「結婚してくれ!!」
「本当に唐突過ぎる!!」
「ぷ、はは。やっぱ俺達には真面目で甘ったるい雰囲気は作れないみたいだな」
「勝手に私も巻き込むなー!」
「ほい、プレゼント」
「私の気分おいてけぼりなんですけど……まあありがとう」
「欧米よろしく今開けてくれ」
「はいはい……」
「出来れば薬指にはめてくれたら嬉しい」
「小指にはめてやろうかしら」
「えー」
「冗談よ。まだ結婚諦めてないわ」
「お相手は?」
「……」
「……」
「……ばーか」
「知ってる」
「そうね、とりあえず今日は帰るわ」
「そうか」
「ほとんど何も持って来てないし」
「ハリセンとかどうでもいい物はもってきてるのにな」
「あら、使ったんだから要る物だったでしょ?」
「バールのようなものは?」
「使ってあげようか?」
「勘弁してくれ」
「仕方ないわねー。
今度こそ回らないお寿司を食べさせてくれるんなら許してあげる」
「んー給料出たらな」
「期待していいの?」
「最高の江戸前寿司を食べさせてやろう」
「江戸前って」
「今度は俺が遊びに行くよ」
「……ん、待ってる」
「東京観光楽しみだぜ」
「案内なんてしないわよ?」
「いいよ」
「いいの?」
「計画立ててもどうせ今日みたいになるだろうしな」
「……来るなら涼しい季節に来てね」
「だが」
「それはもう良いから」
「せめて最後まで言わせろー」
「だが」
「話が進まねえよ」
「それもそうね」
「まあ言いたいことはほとんど言ったんだけどな」
「……そっか」
「おう」
「んじゃ、そろそろ帰るね」
「明日も仕事だしな」
「そゆこと」
「うだうだやってても明日辛いし、終わっとくか」
「そうね。それじゃあまたね」
「ああ、またな!」
「ああちょっとまった」
「なに……んぅ?」
「……」
「……」
「ふぅ」
「いきなり何すんじゃー!」
「明日からも頑張れるようにおまじない」
「バカじゃないの!? 漫画の世界じゃないんだから!!」
「俺には効くから問題なし!!」
「最悪……」
「俺の貰えなかった誕生日プレゼントの代わりと言う事にしといて」
「……はぁ、なんでこんなの好きになったのかしら」
「こんなのだから好きになったんだろ?」
「あほ。どあほ!」
「痛っ! おもっくそ突き飛ばすなよ!」
「恥ずかしい奴め! 死んじゃえ!」
「僕は死にません! お前を愛してるから!!」
「微妙な改ざんするな!」
「ほら、電車出るぞ」
「このばぁぁぁあっか!!」
「行ったか……ん、Happy Birthday」
会話文だけだとシリアスっぽいものが書きづらい
どうしてもふざけてしまう
そしてオチに無理が出る
ただ一発書きだからテンポだけは良い、はず
そんな感じですが暇つぶしになれば幸いです