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絶縁素材を求めて2

 木々の少ない平原とはいえ、地面の起伏が全く無いという事は無い。


 サーシャはわずかな起伏と茂みを利用し、呪象の群れに少しずつ近づいていく。


 太陽は中天に登り、風向きはサーシャの向かう方から吹いている。狩りには向いている条件だ。


 春先という事もあり、興奮した個体も何匹かいるものの、サーシャが狙っているのは年老いた一体だった。


 基本的に繁殖の適齢期を過ぎた個体は、群から徐々に離され始める。全盛の力もなく、子孫を残すことができない彼らは、最後の仕事として上位の魔物から若い個体を逃がすための囮となるのだ。


「……」


 サーシャは小石を拾い、呪象の感知できる範囲外からそれを投げる。


「ブォッ……?」


 何度も弓を引き絞ってきた強肩から放たれた小石は、放物線を描いて年老いた呪象に当たる。彼らは警戒心が強いものの、魔物としての性質を失ってはいない。つまり、縄張り内で人間を確認したら襲い掛かってくるのだ。


「ブオオオオォォッ!!!」


 サーシャの姿を見て、呪象は鳴き声を上げて周囲の仲間へ知らせる。彼女は一目散に逃げだし、群れの半数ほどの呪象を引き連れて平原を駆ける。


 何度か姿を隠し、追いかける隊列が延びたところでターゲットの呪象に再び石を投げ、逃げることを繰り返していくと、徐々に追いかけてくる個体が減ってくる。


 十頭ほどだったのが五頭になり、更に繰り返すともう老いた個体しか追いかけて来なくなる。そのタイミングでようやく、サーシャは姿を完全に晒し、モニカ達の待つ場所へと向かい始める。


 つかず離れず、相手に見失われないように絶妙な距離を取りつつサーシャは逃げる。走り詰めだった呪象は体力を切らせながらも彼女を執拗に追っていた。


「あああああああああああああっ!!!」


 唐突に耳をつんざくような雄叫びが聞こえ、呪象の注意が逸れる。アンジェの雄叫びによるものだ。


「さて、と……狩猟開始ね」


 今まで自分に向けられていた呪象の殺気が、他に向いたのを確認すると、サーシャはそう呟いて弓に矢をつがえた。


 呪象はその巨体を活かし、アンジェを押しつぶすように突進するが、騎士である彼女の大盾を吹き飛ばすことはできない。攻撃を防いで隙が生まれた呪象に、サーシャの放った矢が刺さる。


「ブオオオンッ!!」


 呪象が叫び声をあげると、周囲の小鬼や豚鬼たちが集まりだす。金等級以上の魔物は低級の魔物を呼び寄せる特性も持っていた。


拡散操電スプレッドエレキ


 モニカが魔法を発動させると、周囲に球電が発生し、近づく魔物たちに向かっていく。


「グゲッ!?」

「ギュビビビィッ!?」


 通常の広範囲魔法は敵味方を区別しないが、この魔法は対象を任意で選ぶことができた。それにより、攻撃を単身で受けるアンジェや、あちこち飛び回るサーシャを避けて攻撃できるのだ。


「モニちゃんナイス! サシャ姉! もう一回雄叫び使うから、それに合わせて打ち込んで欲しいっす!」

「了解! タイミングはそっちに合わせるわ!」


 アンジェが攻撃を堪え、サーシャが標的の体力を削り、モニカが雑魚の処理をする。パーティを組んで以来、続けていた連携の成果が出ていた。

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