魔物集落討伐3
地を割るような棍棒の一撃が振り下ろされ、俺とユナは左右に飛び退いて避ける。巻き上がる土を身体に受けつつ、体制を整えると俺はナイフで、ユナは素手で攻撃を仕掛ける。
「グゥ……」
しかし、ナイフの刃渡りでは致命傷を与えられず、不死種の剛腕で以っても体格差の不利を埋めることは敵わない。
動きが鈍重なのが唯一の救いだ。俺は可能な限り切り傷を作ってから大鬼から退避する。
――大鬼
人型の魔物で、身長は約四メートルから六メートル。太った下腹部と丸太のような四肢を持ち、禿げた頭が特徴の魔物だ。
性格は陰湿にして狡猾、自分のテリトリーからは出ることなく、侵入者にのみ攻撃性を示す。しかし、その性格からは想像できないほど個体の戦闘能力は高い。
「ゴアアァァッ」
地面にめり込んだ棍棒を引き抜いて、大鬼は横方向にそれを振り回す。大質量の丸太が高速で叩きつけられるようなもので、俺とユナは慌てて別方向へ大きく飛び退く。
これから先、モニカには合図の花火を上げるまでは最短で魔法を打ち込むように言ってある。不死種は魔法ごときでは死なないが、俺は身を護るか加速で安全圏まで避難しなければならない。
つまり、俺はモニカの準備が整うまでこの大鬼と、着かず離れずで戦い続けなければならないのだ。
「ニール!」
一瞬の油断で、大鬼の棍棒が眼前に迫る。既に回避は不可能、受ければ間違いなく戦闘不能、下手すれば即死。取れる選択は一つだった。
「防壁っ!」
ばちん、と弾かれるような音と共に、大鬼の棍棒が弧を描いて飛んでいく。手の中で急造杖が砕け、切り札が無くなった事を実感する。
「っ!!」
大丈夫、まだ加速は使える。広範囲魔法の回避は間に合う。
自分の冷静さを取り戻そうとして、頭を高速で整理していく。しかし、次の瞬間目に入ってきたものは俺の思考を全て押し流してしまった。
棍棒を弾かれた大鬼は、鈍重な動きながらも、足の速い獲物に対する行動を学習していた。
「ユナっ!!」
棍棒が弾き飛ばされたのは、防壁で防いだからではなかった。そもそも大鬼の握力ならば、棍棒を落とすなどありえない事だった。
つまり、俺への攻撃はあくまでフェイント、あわよくば殺そう程度で、本当の目的は別にあったのだ。
ユナは大鬼に足を掴まれ、宙吊りになっていた。俺に危害が及ぶことへの動揺で、彼女に隙が生まれてしまったのだ。
「ニール――っあああああっ!!」
彼女が声を上げると同時に、ユナの足が握りつぶされる。そして、大鬼はそのままもう片方の手を彼女の頭に添えて――
「加速っ!!」
思考するよりも早く、身体が勝手に魔法を唱えていた。
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