討伐開始!
日が沈み、随分と時間が経った。周囲はいやに静かで、動いているのは俺を含めた三人だけだった。
つまり、俺、モニカ、そしてユナ……魔物集落を潰すための少数メンバーだ。
「……モニカ、視界は?」
「大丈夫、夜眼は共有できてる」
夜眼、暗所でも視界を確保できる支援魔法だ。明かりの消された洞窟内などでも使える便利な魔法だ。
ただ、この魔法には欠点があり、かなりの集中を要する為、同時に他の魔法を使うことができない。つまり、完全な偵察用という事だ。
「ユナは……」
「不死種だもの、夜目は利くわ」
彼女たちは夜に活動する種族だ。暗闇でも視界が確保できなければ生きていけない。
……いや、不死種に「生きていけない」なんて概念があるのかは分からないが、まあなんにせよ、夜の間ユナは絶対的な力を持っている。
「ニール、どうする? モニカが撃っちゃっていい?」
万一、魔法の素養がある魔物がいた場合を考えて、探査眼は飛ばしていない。見える範囲にいるのは小鬼や豚鬼、そして犬鬼の混成部隊だ。火を焚いているものの、そこまでの明るさを確保していない。魔物は比較的夜目が利くのだ。
「正面からやり合っても良いが、お前の消耗を抑えたい。俺が急造杖で陽動するから、集まったところで広範囲魔法を打ち込んでくれ」
「わかった」
モニカは力強く頷いて、集中を開始する。コンセントレーションのスキルは持っていないものの、精神を落ち着かせるのは魔法の効果に一定以上の影響がある。
「ユナは……陽動を頼む。不死種の特性を存分に生かして暴れてくれ。そして、集落の主が居たら倒すかこちらに誘導を頼む」
「わかった。でも、ニールも無理しないようにね、あなたは昔から――」
「い、今はそういうのいいから!」
ユナの説教が始まりそうだったので、無理矢理話を打ち切った。
「とにかく、俺が加速で突っ込んだ後からだ。もう一度使えるようになったら、それで離脱する。モニカはディレイとクールタイムを意識して魔法を撃ち込め、じゃあ行くぞ……三、二、一――」
俺は夜眼を解除し、加速を発動させる。
ナイフを抜き放ち一歩、モニカの瞬きよりも早く、地面を蹴って距離を詰め、門番をしている小鬼の首をはねる。
片足でバランスを取りつつ、ナイフを握りなおし二歩、豚鬼の太い喉笛を切り裂く。
飛沫となった豚鬼の血を浴びる前に広場の中央へ三歩、着地すると同時に魔物たちへナイフを向けて威嚇する。
「ギャギャッ!?」
「ブギギッ!!」
俺が何をしたか理解できていないようだったが、彼らは何をされたかはすぐに理解できたようだ。すぐに角笛が吹き鳴らされ、起きた魔物たちが続々と広場の方へ集まり始める。
「さて」
ここまでは予定通り、ここからも予定通りになるかは連携と、判断次第ってところか。
「獄炎!」
一本目の急造杖が壊れる感触を感じつつ、集まりだした魔物たちを焼き払う業火を発生させた。
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