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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
1章

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3話 ラナァ、小芝居を覚える


 ラナァとアビスが出会う数年前。

 パメラは妖精の里で毎日ダラダラと日々を過ごしていた。


「妾! ここの生活! 飽きたのじゃぁぁぁぁぁ!」


 パメラが大きな声で叫んだものだから、妖精たちがワラワラと寄ってきた。


「あ、ちょ、ちょちょ、埋まる、妾が埋まる、近い、近いのじゃ」


 パメラを押し潰す勢いで集結した妖精たちを押しのけながら、パメラが言った。


「女王様、暇なの?」

「女王様、遊ぶ?」

「女王様、バカなの?」

「今、妾をバカにしたやつどいつじゃ!?」


 パメラが言うと、妖精たちはサッと全員が目を逸らす。

 まぁ怒っても仕方ないか、とパメラは長く息を吐いて心を落ち着ける。


「ちょっと妾、外の世界を旅してくるから」とパメラ。


 妖精たちが驚き、ザワザワする。


「もうね、ずっとこの里にいるであろう? さすがに飽きたのじゃ」


 妖精の里は森の奥深くに存在していて、色とりどりの花が咲き乱れる綺麗な場所だ。

 でも、他には何もない。

 平和で美しいが、それだけだ。


「えー? 女王様、死ぬの?」と妖精。

「なんでじゃ!?」とパメラ。


「外の世界は危険がいっぱい」

「だけどそれがいいのじゃ!」

「きっと人間に捕まって、あんなことやこんなことを……」

「されないから! 妾、捕まるほどドジではないのじゃ!」


 パメラたちは滅多に外に出ないが、外の知識がないわけじゃない。

 時々、好奇心旺盛な妖精が外の世界を旅して、その土産話をみんなに聞かせたりしているから。

 ちなみに、パメラは過去に一度だけ、前の女王に連れられて外の世界を見学したことがある。


「女王様が死んだら、どうしよう?」

「そしたら、ぼくが新しい女王になるよ?」

「むしろあたちがなるよ?」


 ワイワイと、妖精たちはパメラが死んだあとのことを話し始めた。


「死なないって言っておろうが!」


 パメラは両手をブンブンと振り回した。


「きゃー! 怒ったー!」

「短気♪ 短気♪」


 妖精たちが笑いながら散っていった。

 蜘蛛の子を散らすみたいに。

 はぁ、とパメラは溜息を吐いてから、外の世界へと向けて飛ぶ。


 とりあえず森を真っ直ぐに進む。

 2日ほど飛び続けると、開けた場所に出た。

 そこには白い花が揺れていた。


「おー、綺麗な花じゃ! 蜜もらおーっと」


 パメラが白い花に近寄る。

 そうすると、


「わぁ! 羽虫だ!」


 白い花が喋った。


「花が喋ったのじゃぁぁぁ!?」


 パメラは仰天して宙返りしてしまう。


「ラナァはラナァだよ! 羽虫さんこんにちは!」

「羽虫ちゃうわい! こーんな可愛い妖精さん捕まえて、羽虫とは何じゃ!」


 めっちゃ煽ってくるじゃんこの花、とパメラは思った。


「わぁ! 妖精初めて見たよ! 妖精は可愛いの?」

「もっちろん! 妖精は可愛いし、その中でも女王である妾は特別に超可愛いのじゃ!」

「ほえー、可愛いの形覚えておこうっと」


 うんうんと白い花、ラナァが頷く。


「つまり妾を覚えておくってことであるな。それは覚えておいて損はないのじゃ!」パメラが胸を張って言う。「ところでラナァ、妾はパメラじゃ」


「パメラは妖精の女王で可愛い!」

「その通り! 賢い花じゃなお主! 今日から妾の子分にしてやろう!」

「わーい! ラナァ子分になった!」


 ラナァが楽しげに左右に揺れる。

 パメラも釣られて左右に揺れた。

 しばらく2人はユラユラとして、そしてパメラが正気に戻って咳払い。


「それでラナァ、お主はなんで喋れるのじゃ?」

「ラナァ分かんない。生まれた時から喋ってたから」

「そ、そうか……じゃあ仕方ないのじゃ」


 妖精に向かって、なんで飛べるの? と聞くぐらい愚問だったか、とパメラは思った。


「それじゃあ別の質問。ラナァはここで何してるのじゃ?」

「根付いてるよ」

「そ、そうであるな……根付いておるな……」


 そうであろうな! お花だし! とパメラは思った。


「パメラは何してるの? 呼吸?」

「呼吸はしてるけども! とゆーか普通してるのじゃ!」

「そっかぁ、普通はしてるかぁ。ラナァもしてるかも?」

「うーん、疑問形! 分かってないのじゃ! まぁどっちでもいいけども!」

「ラナァもどっちでもいい!」


 ラナァは茎を右に捻って、次に左に捻った。


「さて、妾は外の世界を旅しようと思って、通りかかったのじゃ」


「外の世界?」とラナァ。


「うむ。この森の外。人間たちの街とか見に行こうと思っての。そんで、悪戯とかしちゃおうと」

「ふむふむ。元気でねー」


 ラナァが葉っぱをフリフリした。


「ちょっとぉぉぉ! それは薄情なのじゃ! もっと別れを惜しんで! それはもう惜しんで!」

「なんで?」

「妾が寂しいから! てか、しばらくここに居て、話し相手になってあげてもいいのじゃ!」

「なんで?」

「妾がラナァを気に入ったから……ってゆーか! ラナァは子分であろうが! 子分と親分は親睦を深めるものなのじゃ!」

「へー。そうなんだ。じゃあ、深めよう! 親睦!」


 ラナァが楽しそうに言った。

 それから1年ほど、パメラはラナァと一緒に過ごした。

 雨の日はラナァの葉っぱの下で雨宿り。


 眠る時はラナァの葉っぱをベッド代わりに安眠した。

 パメラは妖精の里に伝わる歌や踊りをラナァに伝授した。

 そしてある日。


「てか、妾そろそろ旅に出るのじゃ」

「うん、いってらっしゃーい」

「だから惜しんで! 妾を惜しんで! 親分を惜しんで!」


「おやびん……ラナァは寂しいっす……」ラナァが項垂れて言う。「一緒に、任侠道を極めるって、そう言ったじゃないっすか……おやびん……」


「これも漢の道よぉ」キリッとした顔でパメラが言う。「ラナァ、寂しがるんじゃねぇ。たとえ別の場所にいても、おれたちの見上げる空は同じだぜ」


 パメラがラナァの葉っぱを握り、ラナァは別の葉っぱをパメラの手に重ねた。


「じゃあ、行ってくるぜラナァ!」

「おやびん、また会える日を、楽しみにしてるっす」


 こうして、2人は小芝居で別れた。

 もちろん、こういう小芝居はパメラがラナァに教えたのだ。



 さて、ラナァと別れてから数年後、パメラはあっさりと人間に捕まって鳥籠に閉じ込められてしまったのだった。

 ここはとある商会のゲストルーム。


「ぐすん……妾の自由が……気ままな旅が……」


 部屋の隅に置かれた鳥かごの中で、半泣きになるパメラ。

 しかし、ある意味では自業自得でもあった。

 パメラは人間の街で、喜び勇んで悪戯を繰り返したのだから。

 パメラ的には「妖精の悪戯ぐらい、笑って許せよ人間」って感じではあるが。


「くくくっ、元気か妖精ちゃん」


 パメラを捕まえて監禁した商人の男が部屋に入って来た。

 男は悪そうな笑みを浮かべているが、普通の商人である。


「……ふん」


 パメラがそっぽをむく。


「妖精ちゃんは、今夜オークションにかけられる」

「売られるってことぉ!?」


「声も可愛いね妖精ちゃん。これはいい値が付きそうだ」商人の男がくくくっ、と笑う。「言っておくが、その籠の格子はミスリル製で、君の力ではどう頑張っても逃げられない。大人しくしておくことだ」


 商人の男は部屋から出て行った。


「結局、あやつ何しに来たのじゃ……?」


 やれやれ、とパメラは肩を竦めた。


「はぁ……ずっとラナァと暮らしてた方が良かったかもしれんのぉ?」


 ラナァと過ごした日々を思い返すと、本当に幸せだった。

 もし無事に逃げることができたら、もうラナァから離れないぞ、とパメラは思った。


「ラナァ! 会いたいのじゃぁぁぁ!」

「はーい!」

「……えええええ!?」


 突如、目の前にラナァが現れたので、パメラはビックリした。


「ああ……根付いてないとなんか調子が……」


 しなしな、とラナァが萎れていく。


「ラナァ!? 大丈夫かの!?」

「うん、慣れた」


 ラナァはムクムクと元気になった。


「慣れるの早いんじゃーい!」


 パメラは思わず突っ込んだ。


「それで何の用? ラナァのこと呼んだでしょ?」

「呼んだけど! 呼んだけどね!? てか、ええ!? どういうこと!? どうやって来たのじゃ!? てか、根っこで立ってる!?」

「これラナァの分体だよ。本体はいつもの場所に根付いたまま」

「そっか分体かぁ! 分体!?」

「ラナァは最近、【分身】を覚えたの」


 ラナァは茎に葉っぱを当てて言った。

 人間が両手を腰に当てて胸を張るような感じで。


「すごいの覚えたのぉ! ビックリした! それでどうやって来たのじゃ!?」


「分体を【転移】させて来たよ!」ラナァが言う。「【転移】は魔王様が使ってくれたから、ラナァはその時から使えるよ」


「うーん、一度見た技は使える系のお花かな!?」


 なにそれ強い、とパメラは思った。

 って、そんな場合じゃない。


「とりあえず助けて欲しいのじゃ!」

明日の18時に4話を投稿します。

以降、毎日18時に投稿します。


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