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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
1章

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16/26

16話 ラナァ、実況する


「そんなわけで、これから第二王妃の宮殿に突入するところ~」


 本体ラナァが、分体ラナァとイリナの現状をみんなに話した。


「ワクワク……」


 シエルは手に汗握って話の続きを待った。


「人間の権力闘争、おもしろ~いのじゃ~♪」


 パメラがクルクルと舞いながら言って、妖精たちも次々に「おもろー!」と叫びながら舞った。


「ワシは少しも興味ないが」アビスが言う。「早く突入するのだ」


「あ、今入ったよ」とラナァ。



 分体ラナァたちは第二王妃の宮殿へと足を踏み入れた。

 まぁ、ラナァはイリナの胸に挟まっているだけだが。

 宮殿に入ってすぐ、メイドたちが寄ってきた。


「王妃様!? それに騎士たちまで、何事でしょうか!?」


 この宮殿のメイド長が言った。


「第二王妃はどこです!?」と王妃。


「第二王妃様は寝室にいらっしゃいますが、今は誰も入れるなと……」


 メイド長の言葉の途中で、王妃が歩き始める。

 騎士たちもそれに続く。

 ラナァは魔力の視界を広げて、宮殿全体を把握。

 そうすると、交尾している人間たちがいた。


(わぁ! 人間の交尾だ! パメラたちに詳しく話してあげよっと!)


 ラナァは交尾している人間たちの動き、声、その他もろもろを認識し、本体ラナァの方で実況中継した。


(あれ? 交尾してる人たちの方に向かってる?)


 もしかして、今交尾しているのが第二王妃なのかな? とラナァは思った。

 まぁ誰でもいいか!

 実況♪ 実況♪


 ラナァにとって、人間の交尾も他の動物の交尾も大差ない。

 どちらも見かけたらなんだか面白くて観察する。

 ラナァは交尾をしないので、余計に興味深く感じるのかもしれない。


 と、王妃たちが交尾している人間たちの部屋の前に到着。

 王妃が合図をして、騎士たちが扉を蹴破って中に入った。

 交尾をしていた人間たちが酷くビックリして飛び上がった。


「な、あなた! こんな昼間っから浮気を!?」


 王妃も酷くビックリした様子で言った。


「王子、見てはいけません」


 女性の近衛騎士が背後から王子の目に自分の手を置いた。


「しかも浮気相手が……宮廷魔導師!?」と王妃。


 どうやら、交尾をしていたのは第二王妃と宮廷魔導師だったらしい、とラナァは理解。


「ななな、なぜいきなりここに!?」


 第二王妃が急いで掛け布団を自分の身体に巻いた。

 はぁ、と王妃が溜息を吐いた。


「わたくしの息子を呪ったでしょう?」王妃が言う。「その痕跡を辿ってきたので、言い訳は無用ですわ」


 その言葉に、第二王妃が目を丸くした。

 それから宮廷魔導師を睨む。


「ちょっと! 絶対にバレないって話だったでしょう!?」

「そのはずだ! 痕跡だって消していたんだ俺は!」


 宮廷魔導師が全裸で叫んだ。


「聖女を甘く見ましたね」イリナが言う。「あたくしたちは単に属性が【神聖】なだけではありません。魔法使いとしても非常に優秀なのです」


「神殿の聖女とて……この俺の……いや、お前は聖女の中の聖女イリナか……」宮廷魔導師がイリナを見て言う。「クソ……聖域の調査だか何かで留守だったはずだ……」


 イリナは淡々とした表情で宮廷魔導師を見ていた。


(残念帰ってきましたー♪)

(ましたー♪)


 心の中ではラナァとハイタッチしてニコニコしていたけれど。


「2人を拘束しなさい!」


 王妃が命令して、騎士たちが第二王妃を拘束。

 宮廷魔導師は炎の魔法を放って騎士たちを攻撃した。

 もちろん全裸で。


「イリナ! よくも邪魔を! 許さんぞ!」


 宮廷魔導師はイリナめがけて強力な【ファイアーボール】を放った。

 それは宮廷魔導師の全魔力を込めたもので、この部屋ごと焼き尽くすほどの威力を秘めていた。

 いたのだが、パシュン、という情けない音とともに【ファイアーボール】は消滅した。


「は……? え……?」


 宮廷魔導師が固まった。

 他のみんなも固まった。


(……ラナァですか?)

(何が?)

(消しました? 【ファイアーボール】)

(うん。イリナがヤケドしちゃうでしょ?)


 ちなみに、ラナァはあの程度の炎では葉っぱの1枚も燃えない。


(ヤケドでは済みませんけれども! いえ、そんなことより! ありがとうラナァ! だいしゅき!)


 イリナは今すぐラナァに頬ずりしたい衝動に駆られたが、時と場合を考えて自重した。


「ば……化け物……」


 宮廷魔導師が震える腕を伸ばし、イリナを指さした。


「誰が化け物ですか!」イリナが怒って言う。「こんなに可愛いのにっ!」


 イリナはラナァのことを言ったのだが、みんなはイリナが自分を可愛いと思っているんだなぁ、と理解した。

 王子だけはラナァのことだと察したけれど。


「いいから早く捕まえなさい!」


 王妃が言って、騎士たちが宮廷魔導師を拘束。

 ひとまず、これで一件落着である。


「クソ……お前の息子を殺して……」宮廷魔導師が王妃を見ながら言う。「俺の息子を……」


「バカ!!」


 第二王妃が大声で叫んだ。

 宮廷魔導師がハッとした表情を浮かべる。


「もしかして……あなたの息子、第二王子も本当は彼の子なの?」


 王妃は酷くショックを受けた様子で言った。


(これ以上は関わりたくないですね。帰りましょう!)

(ましょー!)



「という感じで、ラナァたちは今、馬車で神殿に戻ってるよ。お仕舞い」


 本体ラナァが言った。


「こわっ! 権力闘争こわっ!」シエルが大きな声で言う。「でも面白かった!」


「特に交尾の実況!」とパメラ。


「「人間の交尾、おもろー!」」


 妖精たちがクルクルと宙を舞いながら楽しそうに言った。

 シエルはちょっと照れたように頬を染めて地面に視線を移した。


「ワシらは魔力の結合によって子を成す」アビスが言う。「故に、交尾というのは実に面倒そうだな、と思ったが」


「妾たちは魔力を結合するのに交尾っぽいことするのじゃ!」


 言いながら、パメラが近くの妖精を抱き寄せた。


「するする! 人間みたいに激しくはないけど!」


 妖精がパメラの額にチュ、と唇を当てた。


「ラナァはどうやって繁殖するの?」とシエル。


「ラナァ繁殖しないよ?」

「そうなの!?」

「うん。ラナァはラナァだけだよ」

「そ、そっかぁ……」


 残念なような、そうでもないような、よく分からない感情にシエルは陥った。



 イリナが神殿に戻ると、早速ディアに呼び出された。

 とりあえず、イリナは報酬の金貨をディアに渡そうとした。


「ご苦労だった。その金貨はあんたのもんだ」

「はぁ……別にいりませんけれど……」


 ここはディアの私室。

 ディアはキセルを吸っているが、窓を開けているので部屋が煙いということはない。


「まぁでも取っておけ」ディアが肩を竦める。「神殿にはあとでお布施があるんだろう?」


 ディアはソファに座って足を組んでいる。


「ですね。王子もあとで何か贈ると言っていました」

「そうか。ではこの件は終わりだ」

「……何か別の件が?」


 イリナが聞くと、ディアが頷いた。


「微妙な話とかなり微妙な話があるんだが、どっちから聞きたい?」

「どっちも微妙なんですか!? 片方はいい話なのが定番では!?」


 イリナはとっても驚いて突っ込んだ。


「事実、微妙なのだから仕方あるまい。それでどっちから聞く?」

「……では微妙な話から」

「うむ。実はな、告解に来た信者どもが『聖女ラナァ様と話したい』、『ラナァ様に話を聞いて欲しい』とうるさいんだ」


 ディアはイリナの胸元の白いお花――ラナァを見ながら言った。


「……ラナァ?」


 イリナが視線を胸元に落とす。


「はぁい」


 ラナァが可愛らしく返事をした。


「もしかしてですけど、告解……いえ、外の小屋で人間たちとお話とかしました?」

「うん」

「したんかーーい!!」


 ディアが勢いよく立ち上がった。


「ダメだった?」とラナァ。


「全然、ラナァにダメなことなんてありません」キリッとした表情でイリナが言う。「愚かな人間どもは、ラナァと話せたことを感謝するべきですよ」


「おい止めろ! 信者どもを愚かな人間とか言うな!」ディアが慌てて言う。「思ってても聖女はそれを口にしてはいけないぞ!」


「ディア様も思ってるくせにぃ~♪」

「可愛く言ってもダメだぞ! あとディア様は思ってても思ってるとは言わないぞ!」


(つまり思ってるってことじゃないですかぁ)


 しかし話が進まないので、イリナは言わないことにした。


「それでディア様、かなり微妙は話とは?」

「うむ……。あんたの進退だが……却下された」

「はい?」

「聖女を辞めるな、ということだ」


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