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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
1章

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12/25

12話 ディア、突っ込みが冴える


 イリナはベッドに腰掛けて、ディアはイリナの前に椅子を持って来て座った。

 ラナァはイリナの身体をよじ登り、頭の上に根付いた。

 その様子を、ディアがポカーンと眺めている。


「それで聞きたいこととは?」


 イリナは酷く真面目な雰囲気で言った。

 しかし頭の上には花が咲いている。


「ああ……その前に、頭にラナァが乗っているが……?」

「少し重いですが、問題ありません」

「そ、そうか……。あんたがいいなら、ディア様はいいけど……。ちょっと間抜けな見た目だな、と……」

「大聖女ともあろう方が、人の見た目をバカにするんですか?」


 イリナはキリッとした表情で正論をかました。

 しかし頭の上ではラナァがスヤァ、と眠っている。


「いやこれディア様悪くなくね!?」


 ディアは思わず立ち上がって突っ込みを入れた。


「はぁ……失望しましたディア様」


 やれやれ、とイリナが首を横に振る。

 頭の上のラナァも一緒に揺れる。


「いやでも、すんごい間抜けなんだけど! 聖女っていうか、もうなんか寄生された人って感じだけども!?」


 ディアは唾を飛ばしながら言った。


「ラナァになら寄生されてもいいです。むしろ永遠に一緒にいられるので、その方が……」

「何考えてんだい!? あんたそんな子だっけ!?」


「あたくしはずっとこんな子でしたよ」ニッコリと笑うイリナ。「みなさんが気付かなかっただけで」


「……なるほど……猫を被って……いや、今は花を被ってるけども……」

「上手いこと言いましたね」

「別にディア様そんなつもりじゃなかったけどな!」


 言ってから、ディアは再び椅子に座った。

 そして胸元からキセルを取り出す。


「禁煙です」とイリナ。


 ディアはしばらくイリナと見詰め合ったが、小さく溜息を吐いてキセルを仕舞った。


「それで? 本題に入りましょうディア様」

「ああ。まずは、あんたなんで念環に応じなかった?」

「え? あたくし寝てましたので、普通に気付きませんでしたが? 急用だったんです?」


「急用に決まってるだろ!? めっちゃディア様1人で念環に話しかけてたわ! イリナー! イリナー! この堅物聖女! とかってな!」


「全然、聞こえませんでした」イリナが言う。「でもそう言えば、ディア様の夢を見た気がしないでもないですね」


「うーん、夢じゃないんだなぁ! ディア様、必死で呼びかけたんだなぁ!」

「はぁ……。それで何の用だったんです?」

「緊急会議だったんだよ……もう終わったけどな」


 ギロッ、とディアがイリナを睨む。

 イリナは涼しい顔で受け流した。


「終わったのなら、あたくしまた寝ても?」

「どんだけ眠いんだよ! 会議は終わったけどまだ話は終わってねーから!」

「はぁ……。すみません、以後、気を付けます。以後があればですが」

「辞める気満々!」

「ディア様、今日は突っ込みが冴えてますね」

「誰のせいかな!? ディア様は本来、突っ込み役じゃないんだけども!?」


 事実、ディアは型破りな大聖女としてみんなに突っ込みを入れられる側である。

 ディアは一度、大きく深呼吸して精神状態を落ち着ける。


「あんたの進退については、今頃司祭が大神殿に連絡入れてる。今日の事件の報告と一緒に、な」

「事件ですか? 何かあったんです?」

「ああ。あんたがスヤスヤ寝てる間に、ドラゴンが出現したんだよ」

「ああ、そうですか」

「興味うっすー!」

「ええ、まぁ、さほど興味はないですね」


 だって、イリナは冥竜帝アビスと会話を交わしたことがあるのだ。

 歴史に残っている限り、人類が知る限り、最強のドラゴンである。

 なんならこの先、アビスとも一緒に暮らすのだ。

 そんなわけで、イリナは普通のドラゴンになど興味が湧かないのであった。


 それに、魔王だった過去を思い出した今、ドラゴンなんかに恐怖は感じない。

 感じないのだが、戦ったら普通に負ける。

 前世を思い出しただけで、前世の能力が戻ったわけではないのだ。


「とにかく、会議はドラゴンへの対応を考える会議だったわけさ」ディアが肩を竦めた。「んで、そのドラゴン、なぜか孤児の女の子を攫ったみたいなんだよ」


「へぇ」

「……薄い! 反応が薄い! あんた聖女だろ!? 女の子の心配ぐらいはしよう!?」

「攫ったのなら、何か意図があるのでしょう。ドラゴンは雑食ですが、食べるだけなら連れて帰らないでしょうし。無事だと思いますよ」


 ドラゴンが女の子を攫う理由を、あとでアビスに聞いてみよう、とイリナは思った。


「うーん、冷静!」

「焦っても仕方ありませんよ。すでに聖騎士たちが調査に乗り出したのでは?」

「ああ。あんたって本当、頭いいし可愛いしムカつく」

「どうも」


 イリナは両手を広げた。


「んじゃあ、次はあんたとラナァの関係を聞こうか?」

「聖域でラナァを見つけて一緒に暮らしたいと思いました」


 親子だと説明するのは少し面倒なので、そう言った。

 ちゃんと説明するなら前世にも触れる必要があるのだが、そこは話したくないのだ。

 魔王という存在が人類の敵だから……ではなく面倒だから。


「……え? もしかしてあんた、聖女辞めたい理由って……」


 ディアが言うと、イリナが力強く頷く。


「ラナァと聖域で暮らすからです」


「なーんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!」ディアが両手で自分の頭を抱えた。「それならもうここでラナァと暮らせよ! ってかラナァって何!? どういう存在!?」


「ラナァはお花ですが?」


 見て分かりませんか? という雰囲気でイリナ。


「それは分かるけどもぉぉぉぉぉ! ディア様が聞きたいのはそうじゃなくてな!」

「聖なる存在、美しき存在、愛おしい存在、無垢な存在。そう、ラナァを表現するには人類の言葉では足りません。なぜ人類はラナァを表す素晴らしい言葉を創らなかったのか!」


 イリナは拳を握って熱弁した。


「あんた、大丈夫かい? 洗脳とか、精神系の魔法にかかってないかい?」

「かかってるように見えますか?」


 イリナが真面目な表情で言って、ディアが小さく首を振った。


「いや、ディア様やあんたを欺くほどの魔法はそうない」

「ですよね。ディア様はまだしも、あたくしを欺くなど人類最高の7星魔法使いの人ぐらいでしょう。名前忘れましたが」

「なんでディア様が『まだしも』なのかという疑問は置いておいてやるが、あんた自分を過大評価しすぎじゃね?」


 7星というのは魔法使いのレベルのことで、1星から始まる。

 そして7星に達した人間は現在1人だけ。


「そうですか?」

「そうだ」


 言いながら、ディアはイリナの頭の上のラナァに視線を送った。

 ラナァは気持ちよさそうに寝ていた。

 寝ているのが分かることを、ディアは不思議に思った。


「ラナァが気になりますか? あたくしを欺けるほどの存在だと?」

「……いや。ただの可愛いお花だろう……。大した力があるようにも見えないしな」


(ディア様! 節穴じゃーーーん!)


 イリナは心の中で盛大に突っ込みを入れた。


(ラナァは今や世界最強の存在! 大した力どころか、ラナァは王都を1秒で消してしまえるというのに!)


「なんだ?」とディア。


「いえ、別に」イリナはコホンと咳払い。「とにかく、ラナァは危険な存在ではありません。ただ、珍しいので悪者に見つかったら面倒でしょう? なので、ラナァの存在は秘密にしてください」


 でもよく考えたらこのラナァは分体なので、危なくなったら本体に戻ればいいだけだ。

 いやいや、とイリナは考える。

 分体だろうが何だろうが、ラナァにはほんの少しの危険もあってはならない。


「良かろう。ラナァはこの世界に唯一の種かもしれん。お前が守ってやれ」ディアが言う。「それはそれとして、本当に聖女を辞めるのかい?」


「はい。もう決めましたから」

「分かった。ディア様の方からも、大神殿に伝えておこう」


 言ってから、ディアは立ち上がる。

 もう用は済んだ、という雰囲気で。


「ありがとうございます」

「それと、騎士隊長と世話役があんたを心配してたぞ」

「ん?」


 キョトンと首を傾げるイリナ。


「あんたが変だって。白い花に魅入られてるみたいだってな」


「なるほど。それはこちらでフォローしておきます」イリナが言う。「まぁ、魅入られているのは事実ですが」


「そうかい。ま、辞めるまでは普通に聖女の仕事をしておくれよ」

「分かりました。聖域の調査以外でお願いします。次に聖域に入ったら、あたくしはもう戻らないでしょうから」


 イリナは曖昧に笑った。


「では病人の治療に当たれ。ちょうど、王子様が風邪を引いたらしく、王家に呼ばれている。あんたが行きな」


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