第二十一章:呪いと残光(カース・アンド・アフターグロウ)-3
サラが崩れ落ち、泣き叫んだ。獣の咆哮のような慟哭。
ブレイクの手が震え、戦斧が床に落ちて虚しい音を立てた。
トールは立ち尽くし、心が壊れたように涙を流し続けている。
冒険者たちは頭を垂れて去っていく。外は暴風雨。
世界は回転を止め、絶望だけが部屋を満たしていた。
その時。
微かな足音が響いた。
アーガスは無言のまま自室へ戻った。
家族の張り裂けんばかりの泣き声の中、彼はすぐに戻ってきた。
手には、いつも持ち歩いている分厚いノートと、鋭く削った木炭ペン。
その動作はあまりに平然としており、あまりに冷淡だった。
まるで部屋の悲劇など、彼には関係のない出来事であるかのように。
彼はアイリーンのベッドサイドへ歩み寄った。
母の絶望的な泣き声も、父の憤怒の視線も、兄の驚愕の表情も、すべてを無視して。
彼はしゃがみ込み、感情の一切ない、氷のような黒い瞳で、姉の身体を蝕む黒い呪いを至近距離から観察し始めた。
「アーガス! 何をしているんだ!」
ブレイクが怒鳴ったが、アーガスには届かない。
彼はノートを開き、猛烈な速度でスケッチを開始した。
炭が紙を走る。
呪いがアイリーンの体内を侵食していく正確な経路図を描き出していく。
肩の起点から脊髄神経を伝い、腹部の毒素と第四・第五脊椎の節で合流、融合、変異する過程。
図の横には、減衰率、エネルギー属性、毒素濃度を示す記号がびっしりと書き込まれていく。
誰にも読めない、彼だけの言語。
「気でも狂ったか!?」
トールが突き飛ばそうとしたが、アーガスは冷ややかに彼を一瞥しただけだった。
その目は凍った湖面のようだった。
温度がない。感情がない。
あるのは、背筋が凍るほどの絶対的な理性だけ。
トールはその目に射抜かれ、動けなくなった。
アーガスは作業を続行した。
呪いの拡散速度を計測し、毒素の反応サイクルを計算し、あらゆる変数を記録する。
彼の目には、瀕死の最愛の姉は映っていないように見えた。
そこにあるのは、貴重な、生きた「実験サンプル」。
未知の呪い構造を解明するための検体。
サラは息子の非人間的な振る舞いを見て、ヒステリックに叫んだ。
「お姉ちゃんなのよ! あなたのお姉ちゃんが死のうとしているのに、あなたは……あなたは……!」
アーガスは答えない。
彼は静かにノートを閉じた。
立ち上がり、グレン医師の足元に散らばるルーン石の粉末を一瞥し、そして部屋の隅に置かれた、あの醜い『試作魔導盤V2.1』を見た。
そのガラクタの山が、突然、救済の可能性を孕んだ装置に見えた。
拳を握りしめる。
瞳に、決然とした光が宿る。
それは不可能に挑む若きエンジニアの、傲慢さと勇気の光だった。
「……彼らのやり方は……すべて間違っている」
彼の声は恐ろしいほど静かだった。
「だが、僕のやり方なら、いけるかもしれない」
窓の外、雨は泣き続けている。
部屋の蝋燭が震え、アーガスの背中を照らした。
この瞬間、彼は傍観者でも、無視された末っ子でもなくなった。
問題の本質を見抜き、解決策をもたらす唯一の「破局者」。
運命の歯車が回り始めた。
彼こそが、すべてを変える者となる。
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