第二十一章:呪いと残光(カース・アンド・アフターグロウ)-1
あの重苦しい、「金」を巡る口論は、アイリーンの静かすぎる眼差しによって幕を引かれた。
彼女の沈黙は鋭利な刃物となり、崩壊寸前の家をさらに細切れに切り裂いていった。
翌朝。まだ夜明け前。
アイアンソーン家の台所は静寂に包まれていた。
アイリーンはすでに身支度を整えていた。
軽装鎧が蝋燭の光を弾き、冷たく輝いている。
彼女は眠っている父や弟たちを起こすことはせず、早起きしていたサラとだけ、短い別れを告げた。
彼女は、ずしりと重い革袋を、トールの部屋のドアの隙間にそっと差し入れた。
それは「大師」の徒弟となるための保証金。
彼女が無数の冒険で流した血と汗の結晶だ。
銅貨の一枚一枚に彼女の傷跡が染み付き、銀貨の一枚一枚に、深夜に一人で傷を縫った時の涙が浸透している。
サラは手を止め、ゆっくりと娘に歩み寄った。
震える手が、アイリーンの肩当てに触れる。
そこには無数の細かい傷――死と擦れ違った印――が刻まれていた。
指先が冷たい金属に触れた瞬間。
氷の錐で刺されたような悪寒が、指先から心臓へと走った。
それはただの朝の冷え込みではない。
魂の深層から発せられた、不吉な予感だった。
サラの手が弾かれたように引っ込む。その目に恐怖が走る。
この鎧は、これまで何度も娘を守り、生還させてきた。
だが今、そこからは、かつて感じたことのない「死の気配」が漂っていた。
行かないでと言いたい。お金なんてどうにかなると言いたい。
お金より家族が大事だと泣き叫びたい。
だが、喉に何かが詰まったように言葉が出ない。
千の言葉は、たった一言の無力な定型句へと圧縮された。
「……気をつけてね」
その声は羽毛のように軽かったが、同時に山のように重い、不吉な予言のように響いた。
「大丈夫よ、母さん」
アイリーンは笑った。その笑顔は美しく、そしてどこか悲壮だった。
彼女は母に、温かい、しかし永遠の別れを含んだような抱擁をした。
そして振り返り、荷物を背負い、夜明け前の最も深い闇の中へと歩き出した。
一度も振り返ることなく。
彼女の出発は、一つの合図だった。
アイアンソーン家の春は訪れることなくスキップされ、次の氷河期へと突入した。
ドアが閉まる音が、この家から最後の温もりを奪い去った。
時間は意味を失い、単調な繰り返しだけが残った。
トールは自分を工房の炎と騒音の中に埋葬した。
自傷行為に近い強度で鉄を打ち続ける。
汗が小川のように流れ、焼けた鉄床で蒸発し、白い霧となる。
彼は練習しているのではない。
極度の疲労によって、心を蝕む「嫉妬」と「屈辱」という毒虫を麻痺させようとしているのだ。
一撃一撃が自分への怒号であり、一滴の汗には悔恨が含まれている。
ブレイクはそれを誤解し、満足げにサラに語る。
「トールの奴、ハンマー捌きに俺の面影が出てきたぞ! あと数年で鉄城一の鍛冶師になれる!」
息子が完璧な一撃を放つたびに、自身の弱さを贖罪しているとも知らずに。
アーガスは、世界から忘れ去られた石ころのようだった。
昼は居間で静かに本を読み、夜は部屋に鍵をかけ、図面とガラクタで構築された王国で、誰にも知られない戦争を続行していた。
『試作魔導盤V2.1』。醜悪だが、希望の塊。
そこには「有用性」と「安全性」への執念が詰め込まれている。
壁の羊皮紙は増殖し、床の廃棄物は堆積していく。
蝋燭の下、彼の影は痩せこけ、孤独だった。
彼は時間と戦い、運命と競り合い、そして自分自身の深い自責の念と格闘していた。
この家は、船底に穴が空いた難破船のようだ。
表面上は航行を続けているが、内部は冷たい沈黙の海水で満たされている。
全員が「正常」を装っている。
だが全員が、窒息しそうな絶望の水位が上昇していることを肌で感じていた。
真冬の夜。
暴風雨が神の怒りのように、アイアンソーン家の屋根を打ち据えていた。
窓の外で風が泣き叫び、雷鳴が石屋を震わせる。
空そのものが、来るべき悲劇のために泣いているようだった。
家族は暖炉を囲み、嵐の音を黙って聞いていた。会話はない。
アイリーンが発ってから一ヶ月近く。音信不通。
雷が鳴るたび、それは死神の足音のように聞こえた。
急促で、暴力的なノック音が、風雨の喧騒を切り裂いた。
死の宣告書のような響き。
ブレイクの顔色が変わる。彼は戦斧を掴み、大股で閂を外した。
バァァン!




