第十七章:膠(にかわ)-1
早朝の日差しが窓から差し込み、石床にまだらな光と影を落としていた。
だが、その光がどれほど強くても、アイアンソーン家の居間を覆う冷気を溶かすことはできなかった。
空気は凍った蜂蜜のように重く、呼吸をするたびに胸が詰まるようだった。
サラは、アーガスの閉ざされたドアの前に立った。朝食の載った盆を持つ手が微かに震えている。
石のように硬い黒パンと、冷めきったシチューの小鉢。
それが、彼女が息子にしてあげられる精一杯のことだった。
コトリ。
陶器が床に触れる小さな音が、静まり返った廊下に大きく響く。
それは、決して開かない心の扉を叩く音に似ていた。
彼女は背を向け、足音を忍ばせて立ち去る。工房の入り口にも、同じ食事を、同じ沈黙と共に置いていく。
その唇は一直線に結ばれ、瞳には生活に疲れ果てた色だけが映っていた。
この家の母は、言葉を使わずに愛を伝えることに慣れきってしまっていた。
正午。
ブレイクは居間の隅で、エールのジョッキを握りしめ、独り座っていた。
普段は力強い眼光を放つその瞳も、今は雨に打たれた炭のように光を失っている。
彼はエールを啜り、喉仏をゆっくりと動かした。
広すぎる居間は不気味なほど静かで、飲み込む音さえもが耳につく。
暖炉の残り火が時折「パチリ」と爆ぜる音だけが、時間の経過を告げていた。
この家だけが、終わらない冬の午後に取り残されているかのようだった。
ブレイクは杯を見つめる。液面に映る自分の顔は、ひどく老け込んで見えた。
かつて重いハンマーを軽々と振るった腕は、今や杯一つを支えるのにさえ全力を費やしているようだった。
深夜。
最後の一撃が止み、トールが工房から出てきた。全身が煤まみれだ。
薄暗い廊下を行くその影は、ひどく薄く、頼りなく見えた。
靴底が石板を擦る音は、この家の冷たさを訴えているようだった。
彼は屈み込み、ドアの前に放置された盆を回収する。
食事はすでに冷え切って硬くなり、スープには膜が張っている。
文句も言わず、顔もしかめない。
彼はただ淡々とそれを運び、自室へ向かう。
廊下の曲がり角で、帰宅したブレイクとすれ違った。
父と子の距離、わずか半歩。
だがその間には、底知れない深淵が横たわっていた。
視線を合わせることも、会釈することもない。挨拶さえ交わさない。
同じ屋根の下に住む、見知らぬ二人の同居人。
彼らはそれぞれの胸にわだかまりを抱えたまま、闇の中へと消えていく。
トールの手の中で、食器が微かに震えていた。寒さのせいではない。
言葉にできない惨めさと、無力感のせいだった。
これが、アイアンソーン家の新しい日常だった。
会話という温もりはなく、笑い声もない。
ただ四人の呼吸音だけが、がらんとした家の中で反響する。
これは戦争よりも残酷な「冷たい平和」だ。
みんな生きているのに、家族としてはもう死んでしまったかのようだった。
夕方。
台所に久々の活気が戻った。
サラが炉の前で忙しく立ち働いている。
野生の山羊が焼き網の上で脂を滴らせ、蜂蜜と香辛料の香りが広がっていく。
それは普段の質素な食事とは違う、お祝いのようなご馳走だった。
サラは肉を返しながら、祈りを捧げる。
料理の温かさで、家族の凍った心を溶かしたい。香りで、眠ってしまった感情を呼び覚ましたい。
これは愛という名の、不器用で、けれど真剣な儀式だった。
だが彼女は心のどこかで分かっていた。
どれほど良い香りがしても、アーガスの閉ざされたドアを通り抜けることはできない。
どれほど炉の火が熱くても、怒りで鉄のように固まったトールの心を溶かすことはできないと。
「帰ったぞ!」
粗野だが活力に満ちた吼え声が、突如として台所の静寂を打ち破った。
扉を押し開けて入ってきたブレイクは、汗と煤にまみれていたが、その顔には久方ぶりの燦爛たる笑みが咲いていた。
彼は大股でサラのそばへ歩み寄ると、背後から優しくその腰を抱き寄せ、焼き肉の香りを深く吸い込んだ。
「トールの奴、今日はついにやる気になったらしい!」
彼の声は太鼓のように響く。
「一日中工房に籠もってやがった! 俺が聞いた限り、叩いた回数は俺より多いぞ! それでこそだ! それでこそ俺の息子だ!」
サラは笑顔を作ったが、その瞳の奥には切なさが滲んでいた。
夫の喜びは、完全な誤解に基づいている。
その誤解は鈍いナイフのように、彼女のささやかな希望をゆっくりと切り裂いていく。
「ええ……あの子、頑張ってるわね」
彼女は小声で答えた。自分自身に言い聞かせるように。
再びドアが開く。
雪の匂いを纏った冷たい風がなだれ込む。
「ただいまー!」
春を告げる鳥のような、明るく元気な声。アイリーンだ。
彼女は頬を紅潮させ、亜麻色の髪に雪の結晶を乗せていた。
その翠玉の瞳は、淀んだ水面に投げ込まれた石のように、停滞していた家の空気を波立たせる。
彼女は笑顔で、ずしりと重い革袋をサラに渡す。
そして懐から、油紙に包まれた小さな塊を取り出し、ドアの隙間から顔を覗かせているアーガスに押し付けた。
「お土産よ、アーガス。渓谷の街で見つけたの。光る不思議な石よ」
アーガスは半開きのドア越しに、その温かい石を受け取った。
幽かな青い光を放つ原石。掌の中で、小さな星のように熱を持っている。
三日ぶりの、外からの温もり。
彼は溺れる者が流木を掴むように、その温かさを感じ取った。
この氷のような家の中で、この石だけが唯一の暖かさだった。
「ありがとう……姉さん」
声はとても小さかったが、そこには心からの感謝が込められていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
台湾出身の作者です。
職人が伝説級の道具を鍛え上げるためには、
技術だけでなく、赤々と燃える「炉の火」が不可欠です。
私にとって、皆様からの応援と☆☆☆☆☆評価こそが、
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それでは、次の章でお会いしましょう!




