後編
ミナの死を皮切りに、場はパニックに陥った。
貴族達は血相を変えて逃げ出す。
そこに獰猛な顔のアーキーが襲いかかった。
彼女は割れたワイングラスを振り回す。
鋭利な断片が貴族の首を描き切り、腹を捌き、胸を滅多刺しにする。
臓腑をマフラーのように巻き付けてアーキーは高笑いした。
グラスを投げ捨ててテーブルを持ち上げ、また別の貴族に投げつける。
逃げ遅れた貴族が軒並み死んだタイミングで、槍を持った兵士達が駆け付けた。
彼らは逃げる貴族を押し退けて一目散にアーキーのもとへ向かう。
互いに指示を出しながら兵士達は戦闘態勢に入る。
「あの女を止めろォッ!」
勢いよく突き出された槍をアーキーは目視で躱した。
彼女は兵士を蹴って槍を奪い取ると、ひらりと回転させて彼らを薙ぎ払う。
まるで曲芸のような挙動に誰もついていくことができなかった。
兵士達が次々と攻撃しても、アーキーは華麗に避けながら反撃を繰り出していく。
そのたびに犠牲者が爆発的に増えていった。
「くそ、なんて動きだ!」
「囲め囲め! 同時に攻撃するぞッ!」
四方八方から迫る刺突をアーキーは紙一重で回避していく。
彼女がカウンターで放った槍は、兵士の顔面を貫通した。
アーキーはそのまま力任せに振り回す。
人間ハンマーが他の兵士を吹き飛ばした。
倒れた兵士達は慌てて起き上がろうとする。
そこにアーキーが獣のような跳躍で掴みかかった。
彼女の手にかかった者は、頸動脈を噛み千切られるか、首を踏み折られて絶命する。
そうしてものの一分足らずで、アーキーは兵士を皆殺しにした。
死体だらけの荒れ果てた室内で小さな悲鳴が上がる。
アーキーが顔を向けると、そこには玉座で唖然とする国王がいた。
「わ、我が王国が……」
アーキーは満面の笑みで近付く。
落ちていた儀式用の剣を拾い、問答無用で国王の首を刎ねた。
絶望に満ちた生首が床を転がる。
断面から噴き上がる血飛沫が雨のように降り注ぎ、アーキーの全身を染め上げる。
彼女が満足感に浸っていると、すぐそばに真紅の魔法陣が発生した。
発光する魔法陣から羽と角を持つ男――最上位の悪魔が出現する。
悪魔は不敵に笑ってアーキーに話しかける。
「ククッ、面白い女だ。どうだ、特別に我輩の妻に――」
アーキーは会話を聞かずに剣を振るった。
仰天する悪魔の首が宙を舞った。




