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殺人鬼令嬢  作者: 結城 からく


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1/2

前編

「キャドル・ミスティア! お前との婚約を破棄する!」


 披露宴の最中、皇太子は勝ち誇るように宣告する。


 ところが告げられた張本人、キャドルは虚空を眺めていた。

 間の抜けた表情のまま微動だにしない。


 キャドルという人間は、高飛車で高慢、あらゆる身勝手を体現した令嬢である。

 婚約破棄などされた日には、即座に泣いて怒鳴り、相手を延々と糾弾してもおかしくない。


 しかし現在の彼女は不自然なほど静かだ。

 それは、前世の記憶が蘇ったのが原因であった。

 キャドルの異変も知らず、周囲の貴族達は見下した様子で嘲笑する。


「憐れね。ショックで言葉が出ないみたいよ」


「自分が陰で悪役令嬢などと呼ばれていることも知らなかったのでしょうね」


「いい気味だわ」


 皇太子は近くにいた少女を抱き寄せる。

 そして動かないキャドルに言った。


「お前みたいな悪女との縁は切らせてもらう。そしてミナと輝かしい未来を歩むことにした」


「ごめんなさいね、キャドル様」


 少女ミナは、少なくとも表向きは上品な笑みを浮かべる。

 ただしその目は愉悦に浸り切っていた。


 何度も馬鹿にされながらも、やはりキャドルが反応することはない。

 さすがに不審に思った皇太子が眉間に皺を寄せる。


「おい、キャドル。何を呆けている。私の話を聞いているのか。返事を――」


 皇太子がキャドルの肩に手を置く。

 その瞬間、彼の手の甲に食事用ナイフが突き立てられた。

 突然の激痛に皇太子は喚く。


「ぐわぁっ!? な、何をするッ!」


 ナイフを引き抜いたキャドルは笑っていた。

 爛々とした目で舌なめずりをする姿は、腐っても令嬢とは言い難い狂気を漂わせている。


 この時点で、悪役令嬢キャドル・ミスティアの人格は消滅していた。

 現在の彼女は、前世の記憶である"史上最悪の殺人鬼"アーキー・ポーキーに支配されていた。


 アーキーは笑いながら踏み込み、食事用ナイフで皇太子の喉を切り裂いた。

 溢れ出す鮮血に溺れながら、皇太子は静かに倒れて絶命する。


 返り血を浴びたミナは呆然とする。

 彼女は婚約者の死を前に凍り付いていた。


「えっ、嘘……なんで……こんなシナリオ、原作には……」


 アーキーが跳びかかり、ミナの右目にナイフを突き刺した。

 そしてコンマ数秒の早業でくり抜いてみせる。

 ミナは甲高い悲鳴を上げた。


「ひいいいいいぃぃぃっ」


 アーキーは同じ要領で彼女の左目も奪うと、首を掴んで投げ飛ばす。

 人形のように宙を舞ったミナは、いくつかのテーブルをひっくり返しながら転がり、ステンドグラスを突き破って夜空に消えた。

 遠ざかる断末魔は、血肉が爆ぜる音を最期に途切れた。

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