はずかしさを捨てて
シンヤは、自分の家の自分の部屋にいた。
そして、考え事をしていた。
自分が、ユキのいろいろな発音に萌えたりするのは、やっぱり変なのかなあと。
そしていつの間にか、自分でもその発音ができるように練習し始めてる。
これって、僕がユキさんに近づこうとしていることになるのかなあ?
ユキさんのいろいろな声や音を聞いていたい気持ちもあるけど、二人でいろいろな声や音を出してお話し?したくもある。
考えるほど、よくわからなくなる。
そして、学校で、シンヤはユキと二人だけの遊びの時間になった。
「とぅるるるるるるる…………、やっほー」
ユキが長く激しい巻き舌であいさつ代わりの発音をした。
「こんにちは、今日もよろしく」
シンヤが普通に挨拶する。
「シンヤ君もはずかしがらずに、とぅるるるるるるる……、だよ」
ユキが思っていることを言った。
「わかった、とぅるるるるるるる……、やっほー」
シンヤは、少しはずかしいのを忘れて、ユキのまねをした。
「じゃあ、さっそくお口遊びをしよう。ふごごごー、ごごー」
ユキは、鼻を鳴らした。
「ブタの鳴きまねみたいだ」
シンヤは言った。
「ブー、ブー。じゃダメ? そんなはずかしいです」
シンヤの鳴きまねは、日本語発音だった。
「はずかしい? それじゃあ、また一緒に練習しようよ、まずは、鼻で息を吸って、鼻の奥で、『ごごごー』っていびきの音みたいに出してごらん」
ユキが実演しながら、説明する。
「ごごごー」
シンヤの鳴きまねは、まだ日本語発音だった。
「そうだ、言葉をしゃべるんじゃなくて、音を出す気持ちでね。ふごごごごごごーー」
ユキも熱くなって、鳴きまねも激しくなってきた。
「ふごごご」
シンヤも頑張る。
「まあ、今回はこんな感じでいいかな」
ユキが言った。
「さて、ブタさんの他にもいろいろな動物の鳴きまねをするね」
ユキはそう言うと、ネコの鳴きまねをした。
もちろん、「にゃー」といった、日本語の鳴きまねじゃなくて、文字であらわすのが難しいリアルな鳴きまねだ。
「他のもあるんだけど、今日はこれくらいかな」
ユキは、他にも動物の鳴きまねができるようだ。
そこでシンヤが、ユキに言う。
「ユキさんって、本当に口とかが器用だよね。すごいと思う」
「まあ、個人差はあると思うけど、練習すれば結構できるようになると思うよ。あと、楽しみながら発音することかな、はずかしさを捨てて」
ユキはそうシンヤに返した。
突然、
「か゚き゚く゚け゚こ゚」
と、ユキが言うとシンヤも、
「か゚き゚く゚け゚こ゚」
と返した。
二人は、意味不明だけど笑った。