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§第22話 暁の幸せ・潤の不幸せ

潤  結婚。してくれ

紗綾  い・や・だ・よ!


 全米が――いや全員が突っ込んだ。そらびっくりするわ。潤の脳内音楽大失速だよ。ホワンホワンホワンホワ~~~だよ。


 潤は思わず起き上がって姿勢を正した。


潤  ちょっと!ちょっとちょっと!どういう事それ?ここまできたら涙ながらに『ハイ!わたしでよければ!』ってなるでしょ!ついさっき「その依頼受けたげる!」って叫んでたじゃん!こんなのおかしいじゃん!


 子供か。あれだけ泣き喚いていた紗綾は素面に戻り、潤に人差し指を突き付ける。


紗綾  な・に・言っ・てんの!たかがプロポーズでどんだけの人巻き込んでんのよ

潤  「たかが」って。いや あれは本当に遺言なんだって。ミサイルが爆発してもうだめだと思ったんだよ怖かったよ

暁  え 思い込み死んでたってことっスか

潤  あ~うんほら リスみたいなね。てへ

暁  ん?んん?


 これはあれか。リスがびっくりしすぎて仮死状態になることがあるって言いたいのか。筋肉ダルマなのに?


ゴウウ  はた迷惑極まりないわね

朔次  お前……俺達の沈痛な雰囲気を返せ。補償金で返せ


 全員から轟々たる非難である。さもありなん。潤はさすがに申し訳なさげに、


潤  いや~途中で生き返ったんです。それはいいんですけどすっかり死んだことになっちゃってて起き辛くって……なんかすんません。そちらさんにも


 潤は運び手の隊員に向かって頭を下げた。


潤  ここまで運んで下さってどうも有り難うございます

掃討隊員  あ 大丈夫です


 紗綾は何を感じたのか、周りの皆の顔を見渡している。


暁  仮死状態っすか。凄い能力っすね

潤  たま~になるんですよ。自転車で崖から転落した時とか。気付いたら夜中だったり。寝てるんだか死んでるんだか。アハハ

紗綾  え サクラ? みんなサクラなの?どこまで人をおちょくる気よ?あんたのおかげでアタシ一生分泣いちゃったわよ。ガガーッっと。もう死ぬまで涙出ないよ どうしてくれるのよ。ここ こんな茶番劇!


 泣きそうな雰囲気だ。もう涙でないとか言ってるのに。


紗綾  こんな茶番劇ぃぃぃ!ガー!


 ほら泣いた。泣き声の擬音が「ガー」ってのもどうかと。


 潤が近づく。脳内にはあま~い雰囲気のバラードっぽいのが流れてるぞ絶対。


 紗綾は泣きながら通信機の破片を潤にぶつけ始めた。ぶつけるぶつける連射する。部品がなくなるまでぶつける。


潤  い イタイ痛い。元遺体にぶつけたら痛いよ生だから。イッ刺さる刺さる刺さる改めて遺体になっちゃう


 と、暁が現実的な発言をした。


暁  あの~それ極秘開発中の機器なんで。散らかすのは困るっす


 攻撃一時中断。紗綾の目が光る。他に投げる材料を探し始めた。


 その後ろ、ライウがそっと近づいている。部品を拾おうとしているな。


暁  それ開発中なんで。触らないでもらえるっすかこっちで回収するんで。すんませんっす


 すかさず暁に釘をさされたライウは横を向いて小さく舌打ちし、後ろに下がった。暁は漸く朔次から離れるかと思いきや、朔次にくっついたまま貴重な部品収集を始めた。けっこう苦しそうだぞ朔次が。


 ゴウウが声をかけた。


ゴウウ  今回一番手の混んだ仕掛けが唯一最大の失敗って訳ね。お気の毒さま

朔次  あ~まああれだ。まあこういう事もあるさ。さ、撤収するか。暁


 おざなり(・・・・)かつなおざり(・・・・)だ。


 そして朔次は暁の気持ちを受け止めたのか受け止めてないのか。


暁  うぃっす。ちゅ


 仕事っぽい命令を受けて暁は漸く朔次から離れた。充電が完了したんだな。離れるついでに朔次の頬にキスをした。幸せだなぁおい。朔次は棒立ちだ。朴念仁とはこいつのことだ。


ゴウウ  ミスターサキサカ。詳細は明日にでも


 ゴウウはこう言って手早く撤収を始めた。


 一方、紗綾は暁に取り上げられた極秘通信機器部品の代わりに地面の石を拾って攻撃を再開した。


潤  それは磯の石だから尖ってるアタッ殺傷能力が。新しいテテッイタイイタイ遺体に


 紗綾の顔から表情が消えて投石ロボットになっている。ムキになって止め所を失っているぞ紗綾。


 と、そこに暁が割って入った。


暁  あのう。更紗さん。潤間さん 俺らの橋渡しを頑張ってくれたんで。勘弁してあげて下さいっす。ね?


 この「ね?」は朔次に向けられたものだ。あれだけの派手な告白をして無理矢理距離を縮めた暁。件の”朴念仁”朔次は明らかに困惑し続けている。これからの距離感をどう取ればいいのだ?お互いの立場はどうするのだ?……まあ、そんな顔だな。朴念仁だし。


朔次  あのな。お前その言葉遣い……もういいんじゃないか?

暁  もういいって何すか?

朔次  いやそのあれだ。そのしゃべり方とか。もうそんな男っぽいフリをする事ないんじゃないのか。その……何ていうか……もうこうなっちゃったんだし


 と、二人の間で指を行ったり来たりさせる。


暁  ん?え いやこれ元々っすよ?


 愕然とする朔次。


朔次  ええ?そうなのか……ずっと俺キャラか。これからもか……勘弁しろよ~

暁  勘弁しろってなんすか?俺らの愛に何か支障あるっすか?


 今までになくぐいぐいくるな暁。詰め寄られてるぞ朔次。おもろいなこの図式。それを眺めていたライウがゴウウに呟く。


ライウ  なんか大変そうだね。よかったね。僕たちはまともで


 ライウはゴウウにぴったり寄り添う。頬を擦り寄せる。


ゴウウ  そうよねぇ


 頬をスリスリ、ジョリジョリ。え。ジョリジョリって?


ライウ  ねえ


 ジョリジョリ音が大きくなってないか?気のせいか。


ライウ  そろそろ髭を剃らないとね


 二人の口元を見るとお髭が。え?二人共!?……え?


ゴウウ  そうね。お互い濃いから大変よね


 ゴウウとライウは微笑み合った。またスリスリジョリジョリする。うわ~もうジョリジョリ音マックスだよ。やめてくれぇ。


 二人がハグしている間にゴウウの髪がなんか変にズレてきた。あれ。


 取れた。落ちた。


 ヅラだった。


 そしてヅラの下は――角刈りだった。スッパリカックリした角刈り。おいおい。なるほど。おいおい。


 と、撤収しながら再び朔次にイチャ絡みしていた暁が気付いた。


暁  え。あれ ゴウウさんライウさんって。え ゴウウさん髪が!

朔次  え?あ?ああ。あ~~そうだったか


 一方。


紗綾  もう一回言ってみなよ。回し蹴ってやる

潤  言うよ何回でも。結婚してくれ。[バシッ]イタッ。結婚[ドシッ]イタイ。けっ[ドシュッ]イテテテ……


 乱暴者かつ狼藉者だな紗綾。こっちはこっちで大変そうだ。二人ともこじらしてんな~。


 潤はまったくめげずに紗綾に近づく。攻撃されながらもうまく紗綾を捉えて~からの~ハグ!


 紗綾は潤の腕の中でモゾモゾすること三コンマ三三秒。やがて観念したのか、潤の手を背中に回した。いいぞ潤!よっ猛獣使いジュン=ウルマ!


潤  音楽……ないんですかね?


 潤がどこかを見上げて呟く。誰に聞いてるんだ。音響さんいないよそこには。しかしまあ――是非もなし。盛り上げ最高潮の音楽を二人の脳内の届けてやろうではないか。――と、ラブラブ神ならそんなサービスをしてくれることだろう。信じてるぞラブラブ神。ってどこにいるか知らんけれども。


 突然。


 ものすごく珍妙な音楽が飛び込んできた。ラブソングからかけ離れたものすごく変な音楽。もはや言葉では形容できない珍妙さ。


 潤がポケットから携帯を取り出し、ニコリとした。


潤  はい。ロビンソンエージェンシーです


 お前の着信音かい。


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