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§第16話 極秘会議計画

潤  今からちょうど一週間後です。ロー国とアミ連邦の緊急特別極秘首脳直接会談が開催されます

ゴウウ  アミ――アメミチ共和国連邦

潤  はい。国内外に一切知らせず二国の首脳陣のみの直接会談です。この件はごく限られた人間しか知りません

朔次  直接対談なら首脳同士のホットラインがあるだろう

潤  いえそれがホットラインではなくネット上のバーチャル空間でやりたいそうなんです

一同  バーチャル空間?


 一同の疑問の視線。潤はにこりと微笑み、手に握った小さなデバイスらしきものを操作した。すると空中に五十インチ程度の四角い画面が現れた。平面ではない。立体だ。しかも向こう側がうっすら透けて見えている。空間3Dバーチャルディスプレイ。これもタテヤマの技術なのか。


 と、画面に可愛らしいキャラクタが登場してきた。ニコニコして手を振っている。ん?なんだこれ。


潤  会談を持ちかけたのはアミ連邦側。それが三日前でした。ロー国首脳部の検討を経てゴーサインが出たのが昨日。ゴウウさん達が別任務でここニン国に入国した後でした。ロー国トップは状況から第三国である私共ニン国の民間人を利用すると判断した様ですね。


 画面の3Dキャラは潤の解説に合わせて楽しげにアニメーションする。あくまでもにこやかで楽しげだ。緊張が疑問にすり替わっていく。


 アニメーションといっても作り込まれた動画ではなく、潤の動きにリアルタイムに反応して顔の向き、視線、表情が同期している。いわゆるアバターテクノロジーだ。この空中ディスプレイは潤を見ているのだ。どこから?これはテクノロジーなのか。魔法か。

 潤は朔次の方に向き直った。キャラも向き直る。


潤  タテヤマ通信さん。ロー国宰相からのご依頼です。そのバーチャル首脳直接会談のセキュリティ全般をタテヤマ通信工業に委託したい。ここには来ませんがアミ連邦情報部の協力も取り付けており すでに先方のネットワークインフラの整備は終えているとの事です。


 朔次が眉を(しか)めた。


朔次  そんな重要な事を取締役会の判断もなしにここで決断しろって言うのか

潤  ご安心ください。うまくいけばタテヤマさんの取締役会には後日ニン国から正式に依頼と報告がなされる手筈です。

朔次  うまく行かなかったら?

潤  この話はきれいさっぱりなかったことになります


 朔次は唸った。


朔次  ううぅ。この依頼は誰が受けたんだ

潤  今現在この事を知っているのは、タテヤマさんでは一人しかいません


 皆は暁を見た。


朔次  お前……ミカドとロー国とうちの三重スパイか!イタタ


 暁は暗器を朔次の喉に食い込ませる。その表情はなぜか辛そうだ。朔次の喉からはさらにツゥーっと血が滴って……いない。もう塞がったのか?丈夫な皮膚だな。


朔次  そういえばお前!三重出身だったな!三重だけに三重スパイか!


 暁はさらに悲しそうな――いや残念そうな表情をして顔をそむけた。暗器を持つ手が震えている。喉に突き付けたままプルプルしたら痛かろう……


朔次  イタタタ


 ほらやっぱり。暁の目に涙が浮かんでいる。


 と、潤が遮った。


潤  それは一番三重県人に叱られるやつですね

暁  謝れ!三重県人に謝れ!


 暁の涙は三重県人の誇り……だけなのか?


朔次  イッ!謝らねえよこの三重みえスパイ イテテテアアア

潤  まあその辺で焼尭さん。三重県人には私から謝っておきます


 潤が取りなした。どうやって謝るんだろうか気になりすぎる。潤が事の仔細を話し始めた。


潤  まずミカドの情報はタテヤマさんの情報部を動かす材料でした。そしてこの焼尭さんはタテヤマさんのフロントパーソンとして私共と打ち合わせしていたに過ぎません。そして私はロー国からの打診を受けたニン国の内閣から依頼を頂きました。ゴウウさん達に接触する様にと。お分かり頂けましたか皆さん?


 淡々と話す潤とは対象的に、暁の顔には縦スジが入っている。漫画か。何に落ちこんでいるのか。


暁  よく言われるんす。寝る時の掛け布団は三重だろうとか家には鍵が三重にかかってるだろうとか三重県人だけ瞼が三重だろうとか三重のうな重は三重だろうとか


 そっちか。どんどん溢れ出す「三重あるある」を遮り、急に暁をハグした。突き付けられていた暗器からは一瞬で躱している。


暁  え え?


朔次  暁もういい。すまなかった俺が悪かった。そこの兄ちゃんには俺の小粋な洒落が通じない。俺の力不足だ。ウけなかったギャグについて深く謝罪する。三重県人代表として謝罪を受けてくれ


 朔次は暁に頭を深々と下げた。暁は何故か真っ赤に頬を染めながらツッコミだけはやめない。


暁  いやそこっすか謝るポイント プッシュ~

朔次  アフン


 朔次をつつきながらも頭から湯気が出てるぞ暁。一方の朔次は誠意を見せてイイコトしたっぽいドヤ顔で頷いている。バリむかつくわこいつ~。そして暁の暗器を自分の喉につき立て直した。わざわざか。


 元の体勢に戻ったところで、潤に言った。


朔次  何でこんなに手の込んだ事をする?セキュリティ業務の依頼なら正規ルートで構わんだろうが……イフン


 暁はまた脇腹をツン。イフンって。――あ アフンの次だからか。


暁  それができないからこんな事やってんすよ

朔次  エフン


 飛んだ。ウフンを飛ばした。さっきから「ウ」がないぞ。「ウ」に謝れ朔次。


潤  タテヤマさんのセキュリティ技術は世界的に見ても他の追随を許さない。それは必然的に世界各国とグローバル巨大企業の両方から強力なプレッシャーがあるって事です。例えばミカド――世界トップシェアのミカカドコデモ通信社とか。違いますか

朔次  まあな。おかげでコソコソとお前らみたいな怪しい情報屋を相手にしなきゃなら――そうか

潤  そうです。だからこのやり方なんです。


 場の空気がキュッと引き締まった。今ここで展開しているのかまさに、世界最先端の情報員による攻防あるいは交渉なのだ。そして――


 空中ディスプレイの可愛いアニメがまた始まった。緊迫感薄れるわ~。


潤  正規ルートとタテヤマさんとの契約までに二国――あるいは嗅ぎつけた第三者の介入などで政治的に握りつぶされる可能性が非常に高いんです。本来無関係なわがニン国にすら何らかの政治力が介入する可能性がある。国家レベルのネット会議を他国には一切知らせずしかも世界のメディア・ネットニュース・SNS民にも漏らさないという特殊な状況においてセキュリティを守れるのは誰か


 朔次は暁の顔を見た。暗器を突き付けているのでかなり近い。距離にして百飛んで三ミリ。暁の頬がまた赤く染まる。だから何故?


暁  オレ達しかいないっすよプシュー ウッ


 湯気。そして鼻血がツゥ~。訝しむ朔次。自分の所為だとは一ミリも思っていない阿呆面だ。


 潤はゴウウ達に振り向いた。


潤  そしてロー国さんは

ゴウウ  そうか。タテヤマ通信工業から技術提供を受けて会議を成功させる。そのために私たちはここに呼ばれたのか

潤  ご明察。そういう事です


 潤は微笑む。デバイスを操作すると立体ニコニコ映像はシュン、と消失した。


 朔次は暁を見た。


朔次  そういう事だったのか暁


 朔次は真っ直ぐ暁を見ている。顔が近い。距離は八十三コンマ五ミリ。暁はもう――ちょっと――三度目のプシュ~寸前。いや なんか涙目になってるし。


暁  あうぅ……分ってくれた……っすか?

朔次  ああ。分ったよ分かった。もういいから武器を下せ


 朔次は珍しく優しい表情を向けた。暁は厳しかった表情を緩め、半泣きで嬉しそうに暗器を下した。その瞬間にそれはもう手にはない。マジシャンか。


 暁は嬉しそうに朔次を見上げる。それまで険しい顔をしていたのは朔次に武器を突き付けるのが辛かったのだろう。


 次の瞬間。


 朔次は暁をヘッドロックした。ゲンコツを頭にグリグリグリグリグリ


暁  ああいいいいうううぅぅぅ


 朔次はいったん離した。が、二コンナ六秒後には再びヘッドロックでグリグリ。気が治まらないのか。野人だな。


暁  ぇぇえええぉぉおおお


潤が止めに入った。が、声が……


潤  サクさんや。も~ういいでしょう


 ご老公か。柔和だが眼力のある翁。何が降臨したのか。あ ご老公か。


 朔次は潤を睨めつけつつ暁を離した。が、まだ怒りは納まらぬご様子。


朔次  馬っっっっ鹿野郎!今度俺に相談なしにやったら頭齧る!


 朔次は暁の頭を抱えて齧る真似をした。が、暁は抵抗せず完全無防備。そして目に涙を溜めている。


朔次  え あれ あれ?


 暁の目から涙が溢れ出した。ツツー、と頬を伝いポタリと地に落ちる。


 意外な暁の反応に戸惑う朔次。あ~あ朔次が泣~かせた~。どうするんだよ~。先生呼ぶぞ~。


ライウ  しかし!


 と、ライウが割って入った。訳の判らない二人のじゃれ合いに終止符が打たれた。


ライウ  しかし我々としては話の確証が持てない。本部に連絡を取ります


 ライウは通信機を出そうとした。暁は涙目ながらハッとして手を伸ばした。やめさせようとする。


 が、先を制したのは朔次だった。


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