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§第11話後篇 データロスト(2)

朔次  だから結局!俺たちの!大事な大事なだ~~~いじなデータはどうなったの?

暁  えと。はん……半分っす


 暁は自分の背嚢をゴソゴソと探った。中から取り出したのは二十センチ程度のサイズのフランスパンだ。


朔次  え 何が?何が半分?てか何それ


 暁はパンを半分に分けた。一方を朔次に差し出した。


暁  だから俺らの大事な大事なデータがっす。これはパンっす はい


 朔次はパンを受け取り、二人してパンを頬張り始めた――ながらの会話。


朔次  (むっぐ)データが半分こ?(もっぐもっぐ)

暁  (もっもっ)そ。データが半分こっす(むぐっ)


 二人はもぐもぐしながら微笑み合う。朔次は二口ほどで残りを口に放り込んだ。やにわに暁にヘッドロックする。またかい。暁はパンを咥えたままだ。


暁  ぐももももも


 頭をグリグリする。暁の口からパンがはみ出してピョコピョコ動く。


暁  もももあいいぃぃ

朔次  バッキャロー!お前あれは!俺らの命なんだぞ!イ・ノ・チ!

暁  むむむえええぇぇ


 暁の口からパンが落っこちた。朔次は手を離した。暁はハァハァしている。そりゃそうだ。


 朔次は地面に落ちたパンの欠片を拾った。暁に差し出す。暁は首をプルプル。朔次はそれを口に放りこんだ。固めのフランスパンをバリボリかみ砕く。野人か朔次。


 自分が口から落としたパンを拾って食われた暁の頬が赤らんでいるのは何故かわからぬ。


 朔次はパンを飲み込んだ。


朔次  あのデータは俺らの存在意義そのものだぞ

暁  っす

朔次  それが半分。半分か?

暁  っす

朔次  っすじゃねぇよ。会社に帰ったら俺らの命――半分こだぞ

暁  え それって


 暁はさらに赤くなった。妄想が脳内で暴走しているのか。二人の身体が胴切りされ、上半身と下半身が入れ替わったり戻ったりしている。確かに。なんかエロいな。赤くなるはずだ。


暁  あの。あのどっちかっつうと俺は下半身を残して貰いたいっす。課長は上半身で俺は下半身。二人で一つ。うっわキュン死!

朔次  あ?


 暁の妙なキュン死ポイントに朔次はまったく気付かない。いやまあ暁意外には分からんな、このモエは。


朔次  なに?

暁  え いえ!あのいえ あの いえいえ


 朔次は軽く吐息を吐いた。――どうでもいいが「吐息を吐く」のは「火事が燃えてる」みたいなダメな使い方なんだろうか。まあ意味が通じるからいいか。


朔次  いいから再接続しろ再接続!

暁  さっきからオートリロードで何十回とやってるっすよ


 通信装置画面ではメッセージが忙しなく現れたり消えたりしている。これが業務の自動化というやつか。


朔次  残り半分ならすぐダウンロードできるだろ


 今度は暁が溜め息をついた。物悲し~い顔でゆっくりとシュラッグする。


朔次  何だよ!どこ文化圏だよお前は


 暁は再びゆっくりシュラ~ッグ。朔次はいきなり暁に頭突きをくらわした。


暁  イッテ


 野蛮だな朔次。コンプライアンスのコの字もない。


 暁は瞬時に体を引いて頭突きのショックをうまく和らげていた。だがそれでも痛かろう。ただ、さっきから朔次にコンタクトされる度にちょっと嬉しそうな顔をするんだな暁は。……ううむ。


朔次  もういい!ウルマを捕まえるぞ。もう一度アドレス吐かせてやる。ウルウル吐かせてやる

暁  こちらから要求するのは難しいっすね。ウルマ氏は一度警告し俺らはそれを受諾したっす。なのであちらに落ち度はないっす。課長知ってるでしょ俺らの通話上の受諾は契約と同じ重みがあるっす

朔次  知るか!知ってるけど知るか!残り半分のデータを貰えるまでは契約不履行だ。それに上半身だけだと


 と、朔次が言葉を詰まらせた。


暁  え?

朔次  上半身だけじゃアレできないじゃねえか


 暁がまた赤くなった。


暁  えっアレってア アレ?アレっすか?そんな。それはその。二人で合体して工夫すればなんとか


 暁は言葉を切り、朔次に向き直った。


暁  俺の下半身 貰って下さい!


次回は……「第12話 ネイルアートと潤のメール」

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