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§第11話前篇 データロスト(1)

 暁は操作しつつリズムを取り始めた。またかい。独特なラップで何やら説明を始めた。――バックダンサーを頼んどけばよかったか?


暁  い・ま!訳のわかんない単語 Here we go! いっぱい飛び交うUh! Uh! Uh! 俺ら情報員 技術必Yo! 言葉専Yo! 日進月歩でUpdate, Upgrade マジ重Yo! Yo! でも心配御無Yo! ストーリーにも 見てる人にも 何一つ 一ミリも これっぽっちも 影響 Nothing at all though! まあ雰囲気っすよ雰囲気 Yo!雰囲気Yo! Yeh!……あれ あ あれ

朔次  ん?どした?


 暁の手が止まった。目の前のディスプレイに何やらメッセージが表示されている。ワーニングかエラーメッセージらしき文字がチカチカしている。なんだ?通信の不調か?暁は急いで装置のノブを次々といじり、さらにキーボードでコマンドを叩く。


暁  う。またクロストークが……今度は……マジか……ジャミングが…まっずいな


 暁は真剣な表情でコマンドを次々と入力する。速い。一分に四〇〇打鍵は越えるだろうか。


 だが。


 ――プィーン……という無慈悲なシステム音が響いた。暁の指がフリーズした。


朔次  どうしたんだ?暁


 何とも言えぬ間。


 暁はゆっくりキーボードから指を離した。そして大きくシュラッグした。シュラッグか。ニン国人もオーベイ化したものだ。


 ちなみにオーベイとはおしゃんてぃなオーバーアクションとやたらサイズのでかい家具文化の総称である。


朔次  だからどうしたんだ

暁  あの人の言った通りになったっす

朔次  あ?あのウルマって男か?どういう事だ?


 暁が装置を操作すると画面には「Communication Cancelled」のダイアログが表示され、合成音声が発話した。

 

音声  接続が キャンセル されました

朔次  ぬ!ぬわにぃ!……て。大変なのか?


 朔次の質問に答える代わりに、暁はもう一度操作した。


音声  接続がキャンセルされました

朔次  それは分った。理由は?


 再度操作。


音声  接続がキャンセルされました

朔次  だから

音声  接続がキャン


 朔次は開いていた装置をバタンと閉じた。慌てて手を引っ込める暁。次の瞬間、暁は頭を噛まれていた。もちろん、朔次にだ。


暁  キャン


 朔次は噛みながら叫ぶ。器用だな朔次。


朔次  自分でしゃべれ!機械にしゃべらすな!

音声  接続がキャン

暁  キャン


 暁がキーを叩いて「キャンセル」と繰り返す音声をキャンセルした。代わりに暁の口から出てきたの子犬だった。


暁  キャン!キャンキャンキャンセルキャンセル!噛むのキャンセルっす


 噛まれながら朔次の顔や手を目をつぶったまま叩く。ギブアップのサイン。朔次は牙?を離した。口の涎を拭う。


暁  いって……


 暁は涙目で朔次を睨み、朔次の袖に頭を擦り付けて頭についた涎を拭いた。せめてもの反抗か。


朔次  で?何がどうなったんだよ

暁  だから……


 暁はスッと息を吸い込むと、一気にまくし立てた。


暁  ダウンロードに対するジャミングが発生したんで(あーなるほどー[バシッ])それを回避する為にスクランブルを多重にかけたらコリジョントラップを(あ それな[シュッ])かけられてその結果逆にトラフィックがバーストしてコネクションが(そーゆー事ね[パシ])ロストしたんすよ!


 朔次は言葉の途中途中で、手ではたき落とすような仕草をしつつ返事をしている。まるで見えないカタカナ専門語が投げナイフのように朔次に向かって鋭く飛来しているのだ。

 

朔次  そりゃだめだよなぁそっか~そんな感じになっちゃった訳ねーあ~~そ~~か~~

暁  そういう訳っす


 暁は出すもん出してすっきりした顔。朔次はにっこり笑う。が、突如牙をむいて暁の頭に襲いかかった。


朔次  って!わ・か・ん・ねえ・よっ!

暁  キャン!キャンセルキャンセル噛むのキャンセル!か 解説するっすか?


 暁もさすがに二度目の噛みつき攻撃は必死にブロックしている。中々の反射神経だ。


暁  ジャミングってのは電波を意図的に妨害する事っす。で スクランブルは傍受を回避する為にデータを暗号化するって事。それでコリジョンは

朔次  ち ちが 違う!


 パシッ。パシッ。朔次は飛んでくる専門用語の投げナイフを鷲掴みして制止した。


次回は……「第11話後篇 データロスト(2)」

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