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§第09話 クロストーク

 間。


 あれ。――誰待ち?何待ち?


 と、


音  ガガッガガガ


 ノイズ入りの音声が二人のヘッドセットから漏れてきた。ヘッドホンから漏れるのだから余程でかい音だろう。暁が顔をしかめる。


声  (ガガ)あのぅ。(ガ)そちらよろしいですか?


 間。


朔次  えっ?あ いま俺ら待ちだったか。OK。パスコードをどうぞ

声  (ガッガガ)『ロビンソン(ピーガッ)クルーソーは蟹……(ガガ)がお嫌い』


 これは。二人は知らんだろうが、あの自転車筋肉野郎の無駄にでかい声に違いない。


 暁はそのパスコードを聞いて通信装置のキーボードを操作した。キータッチの音はリズミカルだ。復唱する暁の声はそのリズムに乗っている。


暁  『ロビンソン ウッ クルーソーは 蟹が お嫌い』ッヒィハァ!ほい。認証したっす イェァ!


 ラップしとる。キーボードから手を離した暁はスッと通常営業に。


暁  これ ミカドの認証コード体系っすね

朔次  去年から変わってないな。ずっと蟹が嫌いなのかねぇロビンソン君は

暁  意味不明なのが照合フレーズっすから。あ~まあ……蟹にあそこチョン切られたんすかねロビンソンってば。ゲヘヘ


 朔次はヘッドセットを少しずらした。


朔次  お前下品だぞ。小綺麗な顔してるのに

暁  え こぎれい え キレイって……


 暁は不意を突かれたのか。また顔を赤らめた。


暁  急にずるいっす

朔次  え?

暁  だから天然は


 暁は独り言モードだ。朔次はヘッドセットのマイクに話しかけた。


朔次  よし 今チョン切った

潤  え


 微妙な間。暁が黙して笑う。朔次は暁の頭をはたいた。


朔次  いや失敬。今認証した。ミカドの違法諜報活動の証拠は確かなんだろうな

潤  確かです。ミカドとの交渉に使える十分な情報です


 認証後の通信音声は明瞭だ。この声はやはり潤間潤に間違いない。


朔次  分かった。ではデータのダウンロードアドレスをくれ

潤  まだです

朔次  何?

潤  今そちらの声紋照合をしていますので


 潤がどんな装置を使っているのかは分からない。しかし声紋を照合するのであれば基準となるサンプルが必要な筈だ。


朔次  声紋照合?声紋なんていつ採ったんだ?


 朔次はマイクをずらして暁を見る。


朔次  おいどういう事だ

暁  さあ。とりあえずあちらのおっしゃる通りにするしか

潤  一度お会いしていますよ。おっと

暁  アウチ


 潤が何かに気づいた様だ。暁も同時に小さな声を上げた。


潤  ちょっとマズいですね。すいません何か世間話をしてください

朔次  何だと?

潤  田吾作精工のゴンベさん。お疲れ様です。そういえばゴンベさんの飼い犬 ピッピでしたっけ

朔次  え?ゴンベ?


 朔次は暁を見る。暁が装置を操作しつつ小声で話す。


暁  回線がクロストークしてるっす

朔次  ん?

暁  クロストーク。よくいえば混信。悪く言えば盗聴。もっと悪く言えば電波ジャックっす。ヤバイっす


 朔次の目つきが変わった。


朔次  同じ帯域にウロチョロしてる出歯亀野郎がいるって事か

暁  ほら話合わせて!ゴンベ!


 と、暁が促す。朔次は慌て気味に、


朔次  あ~うん ゴンベだ。あ~ピッピねピッピ。ピッピ元気だよピッピ。もう俺が帰るとね。嬉しくて尻尾をピッピピッピ振るんだよ

潤  かわいいポメラニアンですよね

朔次  ぽめ?いや?ええと。ポラ……ピラ……ピラニアンだよ

暁  魚っす

潤  ああ違ったシェトランドシープドッグでしたっけ?それともロングコーテッドミニチュアピンシャーだったかな?

朔次  しぇ、シェ~?……ピンシェ~?

暁  完全におちょくられてるっすね

朔次  いや違う!ゴンベは知ってる!

暁  おぉ

朔次  ロンゲーピラニアンだ!

暁  ロン毛の魚!

朔次  いやもう可愛いの可愛くないのって。うん。可愛くないよなピラニアン。君。コハチ君だっけ

潤  コハチは隣の家です。私はデンエモンです

朔次  そうそうデン……エモン?まあいいや ホラこないだうちに来たときに懐かれて腕を(かじ)られてたじゃないか

潤  いえ私はお邪魔した事はありませんよ。いつもご一緒のマゴエモンさんじゃないですか?そこにおられるんでしょ?


 二人顔を見合わせる。朔次はマイクを切り、暁に指で指示した。


 と、暁にギャル降臨。


暁  マゴチンでぇ~す!そーそーそー!カレシのぉ~ウチにいってぇ~してたのぉ~エッチを~キャハ。そしたらぁ。何?ヤキモチ?みたいな感じでぇ~いきなりぃ~ガチ噛んできたのぉ~ピラちゃんがぁ~!これってやばくね?チョーやばくね?ここ。ここ噛まれたのここぉ~。って。チョー見えないしチョーうけるぅ~キャハ!


 朔次はマイクをONにした。


朔次  何やってんだよ俺ん家で。カレシって誰だよ。てかマゴエモンなのかお前は

暁  やっだ~パパ妬いてるしぃか~わ~い~いぃ~

潤  なるほど。ピラニアン飼うのは結構スリリングですね

暁  そそチョーヤバヤバなの~ピラちゃん。そうよコハチ君もぉ~いっぺん齧られてみ?

潤  遠慮しておきます。そして私はデンエモンです

暁  エモンエモいわ~キャーハハハ!それからクロストーク


 瞬間。


 暁の声が戻り、潤の声とシンクロした。


暁/潤  消えたっすね/消えましたね

朔次  声がクロストークしとる!


次回は……「第10話 認証とデータ送信」

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