女子ふたり旅
りーちゃんが寝るときまで、はしゃいでいた。
アオイさんを捕まえるポイントがわかってきたこととは、まるで関係がなかった。
それは、寝るときのベットポジションからしてそうだ。
一応ホテルであるためベットはふたつあり、わたしが簡単にカバンにおさめてきた旅行グッズを交代で使うことに合意した。
幸い夜までは出入り自由であったため、一度食事をしにでて戻り、軽めにホテルの内装を眺めて自室にいく。
これも交代でシャワーにしたあと、まるで恋人同士のように、りーちゃんはわたしと話す。
それは、愛人として嬉しいけれど、同時にあまりにも酔っているような感じもあり、女子同士も安全とは限らないのだと貞操を失わないように、律することにした。
「あまり聞いてなかったですが、アオイさんとは、普段どんな話しだったんですか?」
「アオイは一応男子もいけますが、可愛いらしい女子がお好きで、お言葉遊びをしつつ、イチャラブでしたわ」
ふたつのベットで間に少し空間がある。
でも、こちらにかなり近く、カーテンをしめたベットの上にあるライトひとつで話しする。
少し仄暗いりーちゃんの表情は、なんだかとても色気があり、あまり近づくと危険だ。
そうでなくても、オトナの女性っぽくもありつつ、まだ子どものように、わたしの眼をみつめ、それでいて少し部屋の暖房がききすぎていて、汗を少しかいている様子が変に意識してしまう。
そらくんは、よくこんな色気ありのりーちゃんの身体をモノにしようと、手をださずにいられる。
高校生のわたしだって、あまり近づき過ぎると火傷しそうなほど、りーちゃんの表情にどきどきし、ガードするために、あまり知らないフリをするように、スマホを片手にしている。
りーちゃんが、少し眠たそうな様子もあるため、そうだ、寝てしまえばいいんだと、改めて気づく。
明日の打ち合わせと、マネージャーに定期連絡だけして、あとは、寝てしまおう。
それなのに見透かすようなりーちゃんの表情に、さらにこちらはふるえる。
「ちょっとりーちゃん近い……」
ススッと顔を近づけてくる。
「それ」
「え、なんです」
「はいくずれさんぬい」
「はい。頭の上にいます」
明日の天気除けにするため、夜からもうベットの側に出してある。
もしかして、そらくんのことで目につくのだろうか。
「よく丁寧に扱っていますわ。わたくしも自身のぬいやヨジゴジのお仲間おりますが、ときどき汚れたり、引っ張ってしまったりしますの」
「前にそらくんからもらってから、ゲームセンターとかショップで少し集めています」
「嬉しいですわ。ヨジゴジのお仲間たちが、楽しそう」
ミリロリ嬢様のぬいももちろんあるのだけど、あまりにりーちゃんとお近づき、というかマネになったため、素直にだせなくなってしまった。
けれど、マネなら返って持ち歩くくらいでいいかもしれない。
「そうですよね。ミリロリ嬢様も持ち歩くことにします」
「ほ、ほんとですの!?」
「なんで驚くんですか」
りーちゃんが手を伸ばすと、はいくずれさんをなでる。
「こうしてお側に置いてもらい、触ってもらえると、なんだかわたくしもパワーが飛んでくる気がいたしますわ」
「そんな生霊みたいに」
「夜次五時のみなさま、きっとそう思っていますわ」
なんだか愛しそうに、はいくずれさんぬいをなでたり、つんつんしている。
「ちょっと照れそう」
「なぜですの」
「わたしもデビューしたら、化身が置かれたりするんですよね。いえ灰色なジンセイのぬいはあまり欲しいかたいないか」
「あら、わたくしは一番にいただきますわ。予約済み」
「予約!?」
「ご存知ありませんの?マネージャーが予約リストをつくっていますわ」
「えぇ!! わたしの知らないうちに」
「そういえば、お名前決まりましたのね」
「よく……知ってますね」
「マネージャーがとても自慢めいて発表いたしましたわ」
「マネ……」
「シルバーウルフさ……ま……!」
「ダークシルバーと迷ったのですが、狼の色をグッズにするときに、ダークだと遊びがないとか……」
「ダークもいいですが、やはりあかりさんはシルバーですものね。シルバーウルフさま」
「ミリロリ嬢様。いまからわたしになにか変なマインド与えるのやめてもらえますか?」
「わたくしの狼さまですもの。だれにも奪わせたりするものですか!!」
「マネージャーの感性っていったいなんでしょうか」
「わたくしも案にのりましたわ」
「うぅ」
「二対一」
「多数決ってかなりあてにならないことが、いま判明しました」
そろそろ寝よう。
りーちゃんのお胸が、眼の前にあり過ぎる。
寝相は悪いのかもしれない。
起きてるけど。
りーちゃんのアタマをひとなでしてから、おやすみなさいと声をかける。
「んふ……あかりさんの表情……わたくし少し昂ぶります……」
「寝てください。それじゃ」
ライトを消すと、りーちゃんの表情も薄くなる。
存在感は、ハンパないけれどそれは無視する。
これが、オトナの色気。
そういえば、何歳なんだろう。
朝から、いろいろ騒がしかった。
わたしのことだ。
りーちゃんは、いつの間にか起きていて、シャワーも終えていた。
いつ買ってきたのか、軽食のおやつを持ってきていて、髪を乾かしている。
わたしは、よく寝たらしい。
りーちゃんにはナイショだけど、会う前日まで、自身の作業にマネージャーの確認、そらくんとの連絡などを深夜までしていて、昨日の夜がここ数日ではちゃんと寝た日だ。
部屋で少しだけ食べたあと、わたしも慌ててシャワーをしてから、準備をしていると、りーちゃんはミニノートで作業している。
もしかして、りーちゃんってできる女なのだろうか。
油断ならない。
昨夜のオトナ色気のりーちゃんは、いまは姿を消していて、お仕事モードでときどきあくびをしている。
きっとかなり早起きをしてから、作業時間にしていたようだ。
部屋を軽く整えてからでたのも、まだ早い時間で、ホテルのスタッフに、お早いですね、とあいさつしていた。
提案した美容室にいくには、少し早いかもと思っていたら、その前に朝食することになった。
ホテル近くにあったバーガークイーンによる。
「もっとハイソなところにするのかと、構えてしまいました」
「わたくしヒクドナルも、バークイも好きですわよ」
「あとケーキとお水も凝ってますね」
「よくわかりになって」
バークQバーガーにして、温かい紅茶にする。
「りーちゃんは、ときどき紅茶ですね」
「以前温かいお水でと注文しましたら、とても混乱されましたわ」
「お湯だけって」
くすくす笑う。
「はいくずれさんぬいは、とても効果ありですわね」
冬とは、思えない暖かさになっている。
雨も降りそうにない。
「ミリロリ嬢様の効果も今度たしかめてみますね」
「するっとカバンにお邪魔さま」
少しずつ朝にも混んでくるため、あまりおおきい声ではないけれど、そらくんといるときとは、別の居心地よさがある。
通常の平日では、こんなに混んでいないだろうけれど、年の瀬になると混むらしい。
同じQバーガーを頼み同じように飲むも、どこかりーちゃんは、ぼーっとしている。
さきほどのお仕事モードとは違う様子は、どこかそれでも、さまになっている。
昨夜に考えていたことをなかなか聞けない。
たずねてみようか。
「りーちゃん、聞いていいですか」
「はい、なんでしょうか」
「りーちゃんって、何歳なんですか?」
「V年齢はたしか……」
「そうじゃなくて、いまいくつなんですか」
「免許は取得できました」
「わたしももうすぐできる年齢です。そうじゃなくて」
「あかりさんは、わたくしの若さの秘密の味をご所望かしら? それでしたら、一度わたくしの血を……」
「もう! そうじゃないんです」
だめだ。
「なんで、教えてくれないんですか」
「……以前」
「前?」
「マネージャーとご相談しましたところ、わたくしの年齢は業務上並び個人情報並びに、マネジメント契約のために、一切外部に漏らさないと、そうお誓いしましたの」
「それじゃ、そらくんも本当に知らないんですか?」
「万が一外部に漏らさないというのは、いずれにしてもそうですわね」
たしかに言われてみれば、そうなのかもしれない。
わたしだって、これから狼として活動するのに、そのたび何歳ですか、と聞かれるのだろう。
そこに悪気がなくても、言わなくてもいいこともあるのかもしれない。
「わかりました」
「それで、あかりさんは、少し経つと高校二年生ですわね」
反撃きました。
「高一受験がいよいよ高ニ受験になるだけですよ。わたし学習研修先を秘書にしましたよ」
「研修……まるでお仕事ですわね」
「マネジメントの研修です。Vって最近のお仕事だから、まだあんまり情報がない」
「あかりさんは、ご自身はどうなのでしょう」
「いまわたしのことなんですけど」
「ふふ……なんだか」
「なんで笑うの?」
「おかしいですわ。だって、あかりさんはもう既に、こちらの事務所で研修期間ですわね」
「うっ……!」
「ということは、学習研修する前に、本格的な研修をしています」
「よくわからない自体ですが、頭痛くなってきます」
そうだった。
学校で研修する前だったから、そちらでは希望を悩んでいたけれど、ミリロリ嬢様のマネージャーになることは、すぐに決めてしまったため、いまその期間であることは意識しなかった。
高二になると希望調査やオープンキャンパスもいくけれど、Vや秘書のオープンキャンパスは、どこで開かれるのだろう。
朝食をゆっくりめで終えると、りーちゃんが少し買いものをしたいと言う。
「お化粧品とかですか」
「お帽子とほかですわ」
話しながら近くのショップに向かうと、風があるから、髪が乱れるのだという。
ショップで探して手に取ると、同じようなデザインであったため、わたしもひとつ購入する。
ほかもあるというから、また歩いてショッピングセンターにいくと、りーちゃんが若干明るい。
「楽しそうですね」
「あかりさんとおデートに、ショッピングですわ」
「マネージャーですけどね」
「マネージャー……と、おデート……」
「そんなに、急にダウンしないでください」
「なんだかお仕事でついてきている気がします。あかりさんは、お仕事なんですのね」
そんなことか。
いや、これはわたしが悪いのかもしれない。
「そうですよね。お仕事で来られてると思うの、なんだかいやでしたよね」
「あかりさんは、やっぱりお仕事のマネージャーですものね」
明らかにがっかりしている。
「愛人ですから……ですよ」
「愛人でしたわ!」
パッと明るくなる。
りーちゃんって実は、けっこう面倒くさい女なのでしょうか。
いやそんなことをいうなら、わたしが厄介な高校生であることは、明らかだ。
ふらふらと寄るのは、プチプラが並ぶコーナーだ。
「りーちゃんは、こういうのも好きなんですね」
「もちろんですわ。それに」
「それに?」
「あかりさんとご一緒にみて回りたいと、想っていたんですわ」
りーちゃんって実は、けっこう女たらしの素質があるのかもしれない。
思わず、そんなこと想ってたんだと、嬉しくなる。
いくつかのうち、少なくなっていた化粧水とクリームを取る。
りーちゃんは、冬限定とかかれているミニ香水をマジ見している。
手に取ればいいのに、と思っていたら、やめてしまった。
お会計に並ぶときに聞いてみる。
「よかったんですか?」
「ええ……やめにしました」
「なんでです。よさそうだったのに」
「そらくんが……どうかなって」
「そらくん?」
「そうです。あまり香りをつけ過ぎるのも、男の子っていやなのかなって……それで、今度にします」
わたしに刺さってしまう。
りーちゃんは、こういうところが本当に可愛いらしい。
お会計を支払うと、思わず抱きしめる。
「りーちゃん、今度一緒に選ぼう」
「な、どうしましたの!?」
「わたしがスキンシップしたくなっただけです」
わたしは高校生だけど、りーちゃんはときどきとても寂しそうな気がして、そんなとき、りーちゃんとクラスメイトでもよかったな、と思う。
もし、りーちゃんが同級生なら、遠慮なく触ったり、恋話とか秘密をもっと話せるのにと、感じる。
車に入り、エンジン音を聞きつつ装備を整えてから、美容室にいくことにする。
「わたしが主に聞いてみますから、りーちゃんは次の場所でお願いします」
「でも、いいのかしら。一日に美容室をいくつも」
「三軒でおさめます」
「やっぱりあかりさんは、頼もしいですわ」
「マネ……愛人ですから」
そのあとなんて言ったのか、よくは聴こえなかったけれど、りーちゃんがわたしの眼をみつめている。




