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あい/抵抗  作者: 十矢


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わたくしひとりたび……

 風がうぉんと鳴っている。

 そのたびに、ひとつ揺れる車内。



 雪景色ではなくて、この場合は風景色でしょうか。

 葉がまた一枚と、目の前を飛びさっていく。

 ときどき紙袋が舞う。

 どこから、来ましたのかしら。



 電車で来たかったのですが、この時期帰省ラッシュ、または反規制ラッシュやらで混んでいますとお知らせされ、致し方ありませんわと、車にしましたわ。

 いつ何時も規制というものは、反対にあうんですわね。


 ぼんやりとラジオから流れる音楽にも似ているようなパーソナリティのかたの話しを受け流す。

 なんとかスペシャル番組となっていますが、普段なかなか聞けない番組なため、スペシャルでもスーパースペシャルでも違いがわからなくて、なんだか申し訳ないですわ。


 テレビもあまりみなくなり、ネットからの情報を泳ぐわたくしなため、もしこれが普段のテンションの番組でしたら、よほどみなさま、早口言葉の練習をしているのね。

 わたくしも、もっと滑舌よく練習しなくてはなりませんわ。


「かつぜぇちゅ……っっつ」


 いまのは、なにもありませんでしたわ。

 そのたびに揺れる車内。

 葉がまた一枚と、目の前を飛びさっていく。


「はみんぐ……みんたぶ……たぶくじら」


 ミントタブレットのCMの歌ですわね。

 たしか、音楽プロデューサーが関わっているといわれましたが、謎過ぎる。

 CMは三十秒が多いと云われますが、電車広告だと長いのがときどきみられ、タブクジラのあとになにかあると、きっとあるとそう想い続けて、いま一年が経過していますわね。


「たぶくじら……たぶくじら」


 そこで外の景色をまた眺める。

 車のドアに手をかけて、そのまま時間が経過しているのは、やはりこの風景ですわ。


「寒そう……」


 エンジンを停止して、スーパーまで猛ダッシュすればいいのですが、この葉が舞う光景に思わず手を停止してから、また戻して、みなさまのきゃーさむぅい、というお声を車内で聞く。


「おかしいですわね……少し前の時間(きおく)では、都会砂漠で飢え死に寸前のわたくしであったのに、いまは風に流されまいと必死でおくじらに閉じこもるわたくしですわね」


 くじらのお腹のなかは、暖かいのですわね。

 それで、避難しようとお魚たちは、お腹に飛びこんでいくんですわ。

 エンジンを停止すると、すぐにカバンを抱え、猛ダッシュですわ。


 わたくしの脚力!


「ぁぁぁぁ、お肌の敵のお乾燥がこれでもかとお水を散らしていきますわ」


 スーパーの入口の前で、これでもかと髪が乱れていますが、みなさまもご一緒ですわ。


「そうですわ、ニット帽子を被ればいいんですわ。持ってきたかしら」


 車のなかを探してみましょう。

 とにかくお化粧室にいき、そのあと、スーパーのなかで買いものをしていく。

 ここは小さめではありますが、百円ショップも入っているし、休憩スペースもあるし、冬には万全ですわね。

 プチプラをあとで、みることにしましょう。

 温かい飲みものと食べるタブレットと、軽食を探して歩きますが、あれがない。


「ミンタブ……くじらタブレットが……ありませんわ」


 ただいま品切れ中と、小さいサイズの案内がある。


「くじら……さま……」


 ここまで乾燥していると、せめて飲みものとタブレットくらいはと思いましたが、わたくしのくじらさまが、ない。

 仕方なく、違うのにしようか迷うも、やはりくじらさまの品切れ中の文字が悲しい。

 違うのを手に取る気にもなれないでいると、その間に二組ほどのカップルが、グミやらガムやらをそれは、楽しそうに持っていき、お会計に向かう。


「カップルのみなさま、グミやガムひとつであんなにお楽しそうですわね」


 そらくん……と、一瞬だけお顔を思い浮かべそうになり、あきらめて、違う場所にいく。


 軽食を小さいクロワッサンセットの入っているパンにして、お会計に並ぶ。

 混んではいるけれど、セルフレジが広めにあり、すぐにショッピングバックをかけて、お会計する。

 にゅゅぅんと不思議な音がするのは、最近になってインストールした電子マネーの音ですわ。

 電子マネーの数が多すぎて、いまやアプリが燦然と並びすぎるため、あとでいくつか削除しなくてはいけませんわ。


 まだ温かい飲みものをバックに入れつつ、百円ショップをみていく。


「あと必要そうなものは、なにかしら」


 小さく並ぶお化粧品などをみていくと、あかりさんは、どういうのをお使いかな、と浮かべる。

 もう少し値段のするものを使っていそうだけど、前にお話ししたときには、かなりの倹約生活だったから、こういう感じのかもしれない。

 一応、今日でかけることは、マネージャーあかりさんには、伝えてある。


 もう一人の普段のマネージャーには、伝えそびれてしまった。


 マネージャーあかりさんから伝わるかは、わからないですが、わたくし行方不明にはなっていないはずですわ。

 こちらでも手袋やマフラー、年始飾りをみつつ、ひとつだけ小物を手に取り、お会計にいく。

 あ、すみません、と横に同時に並んだのは男性で、そらくんよりずっと大人だ。

 おダンディさまではあるかもしれない。

 けれど、最近わたくしは、自分の好みのヒトすら、よくわからない。


 わたくしが後ろになり、背中をみている。


 小さい頃の幼いお付き合いを除き、はじめてがそらくんだ。

 紆余曲折があり、上手くいったのではなくて、どうしてもあの決断にはなった。

 そして、周りのどの男性をみても、今度は、身分を隠してお付き合いするしかないだろうな、と想ってしまいますわ。


「わたくしは、隠しごとが多いのに、お相手にはそれを許さないとか、わたくしも勝手ね」


 お会計を過ぎてから、先ほどの男性は、出口に向かう。


「さむいなぁ」


 そういう姿が、そらくんのお声に似ていて、少しだけ、暖めてあげたくなる。


 サッとわたくしのおくじらの中に入る。

 すぐにエンジンをかけた。

 鏡をみると、もう頭がぐしゃぐしゃだ。

 後ろに置いてあるカバンの中身を考えるも、ニット帽子は入っていない気がしますわ。

 なんとか手を暖めつつ、エンジン音を聞く。

 最近の新車は、エンジン音は静かで、ときどき不思議な通知を報せる。


 まったく機能がわからないのもある。


 ラジオは、またなんとかスペシャルと言っているも、通常の番組との違いは、やはりわからない。


「ナビはいい子ですわね」


 いまの現在地と、次の目的地を懸命にお報せしてくれている。

 わたくしが停まっているため、ずっと駐車場を報せるのが、なぜかかわいい。

 中で飲みものを飲みつつ、一日の行動を想像する。


 アオイのレンタルのお仕事は、あまり事務所には寄らないと言っていた。

 登録だけ済ませ、ある程度の備品を借りる倉庫のようなところを案内されると、その後は、もう仕事が舞い込む。

 わたくしが出逢ったときには、もう上級者で、八人ほどのグループで一番の売上だと言っていた。

 事務所登録をした際のマネージャーもいるらしいけれど、そのときには百名ほどの地域登録だったけれど、それは各地域の話しで、全国には、数百名そういうレンタルのお仕事のスタッフがいるとか、内緒で教えてくれた。

 その登録してあった事務所も周辺地域の事務所も、調査をしたり接触したけれど、誰もアオイのその後は知らなかった。


 いまは地方の事務所を探している。

 ここは関東の端のエリアで、ここから上は、一日では無理そうだ。

 関西も考えたけれど、違う気がした。


「ハロウィンで接触したということは、移動でそこまでかからない地域ですわね」


 いくつかピックアップしたあと、あかりさんとそらくんと向かったのは、もう少し海がわだった。

 いまは、もういくつめだか、忘れてしまった。


 目的地に着いたとしても、事務所はスタッフが連絡用に借りているだけの事務所だろうと思う。

 けれど、まだレンタルのお仕事をしているはずだ。

 マジカフェで、ブルーとして働いていたときに、もう既にひとつふたつおおきい財産があると言い、それでも、こういう仕事は辞められない、とお話ししていたのをいまも覚えている。


「わたくしのお手も暖まりましたし、ひと冬の旅の続きにいきましょうか」


 ナビをみていると、およそあと三十分ほどで、ひとつめに着く予定だ。

 けれど、予想より時間がかかりそうだとわかったのは、おおきめの道路にでてからだ。


「これが……ラッシュですわ」


 狭い道路のときは、気がつかないけれど、だんだんと車が集まっていた。

 着いたのは予想より、さらに三十分もかかっていた。

 駐車スペースをみつけて停めて、さらにナビを確かめると、この先にある。

 くるくる回り、みつけた駐車場に停めると、そこの周りは混みあってもいない静かな場所だ。

 位置は、あっていて終了してしまう。


「ここ……?」


 小さい雑居ビルで、四階建てに屋上がありそうだ。

 エンジンを止めようか迷うも、止めて小さいカバンとスマホだけ持つ。


 外に出るとやはり寒いけれど、風は収まっている。

 玄関付近でみているけれど、看板もなにもなく、一階は休憩スペースなのか、お店がある様子もない。

 一度中に入り、エレベーターをみつめるも、不安でまた外に出た。


「ここ……ですわよね」


 三階に窓の明かりは、あるけれど、二階と四階は、暗い。

 一人、エレベーターから降りてきた男性がいるため、たずねてみる。


「事務所って、ここですか?」

「三階が事務所ですよ。二階は別のお店なんですが、年末ですから」

「ありがとうございますわ」


 行きかけるその人に、また話しかける。


「いいえ、それじゃ」

「あの……アオイって誰か知り合いにいませんかしら」

「アオイさん? いいえ。事務所には、アカさんが今日いますけど、ぼくは聞いたことないですね」

「そうですか」


 そのあとエレベーターから事務所にいくも、中にあった扉からでてきた男性にたずねても、アオイは知らないらしい。


「あなたは、面接でしょうか。予定あったかな」

「いいえ。でも、以前お世話になりましたわ」

「そうですか。ここのグループは、いまは三十数人ですが、またお声かけください。あ、名刺です」


 渡された名刺には、赤意と書いてある。

 わたしが名刺を出そうか、カバンを探すと、いいですよ、アプリでまたご連絡ください、とすぐに戻っていく。


「アカ……ですが、もちろん本名の名前じゃないですわね」


 駐車場に戻ると、さっきいた車は一台なかった。

 残り二台いるけれど、ひとつは社用車かもしれない。


「ここは、違いましたわね」


 カバンから、印刷した紙をだす。

 パソコンで作成したリストで、ナビや地図で探すときに、ほかに、おもいついたことを書けるように、印刷した。

 もういくつものバツがあり、名刺の名前も、とりあえずで書き込む。

 エンジンをかけたあと、一応遠慮しつつ、車内でクロワッサンをかじる。


「今日は、もう一か所……明日」


 もうひとつの場所は、比較的近いためいけるけれど、さらに別の事務所は、もっと遠い。

 今夜は見つからなければ、安めでもいいからホテルを探し、明日また探すことになる。


 幸いここの付近は、アイドリングの注意は見当たらないけれど、早めにもしゃっと食べていると、事務所から先ほどの赤意さんが降りてきた。

 たぶんもう、帰りなのだろう。

 手で挨拶するため、なにかと思ったら近くにきた。

 窓を開ける。


「まだいましたね。これよろしければ、どうぞ」

「え……なんでしょうか」

「余りものですが」


 そう差し出された小さいバックには、なにかの景品と、クリスマスの余りのような詰め合わせがある。


「いいのでしょうか」

「寒いなか、来ていただいたし、それクリスマスのときに、歩きまわってもらって来たものなんです」

「ありがとうございますわ」


 そのあと赤意さんは、近くの車に乗り込み、少しすると、駐車場からいなくなった。


「あら……女の子のグッズもありますわね」


 ゲームセンターで取ってきた景品のようですわ。

 なにかの待ち時間で、ゲームセンターに寄ったのかもしれない。


「クロワッサンは、おいしいですが、こちらの詰め合わせは、多いですわね」


 中身を少しだけ確認してから、後ろの席に置く。

 そういえばと思うのは、アオイもコスメやゲームセンターのものをよく集めていた。

 なぜ、ありますの、とたずねてみたら、集まるときの待ち時間や見張るときの時間があるから、と言っていましたわ。

 食べおわり、飲みもので落ち着くと、また次の目的地に向かう。


 今度のは、そこまで遠くではない。

 けれど、駐車場をでてすぐに、また混みあう道路だ。

 できるだけ、すぐに発進したけれど、予想通りではある。



 一時間と少しドライブし、次の近くにきた時点で、複合施設を発見し、寄り道をする。

 ここは、混んでいるらしい。

 駐車場をくるくるしてから、ひとつみつけて停める。

 施設は広いけれど、わたくしはちょっとだけ休憩して買いものをすると、また次に向けて、車に戻ってきた。


 スマホが通知を報せる。


「あかりさんですわ」


 りーちゃん、でかけるって言ってましたけど、ちゃんとご飯食べてますか。

 いまどこの辺りにいるんですか。


「すっかりマネージャーだわ」


 いま複合施設の駐車場ですわ。

 ひとつめは終わりまして、いま、ふたつめの場所ですわ。

 混んでませんか。

 わたしは、学校はもう冬休みですが、

 Vの準備があと少しです。

 一緒にご飯でも、食べますか。

 お誘いは、嬉しいですが、ご一緒はできかねますわ。

 え、都内にいるんじゃないですか。

 遠くにきましたわ。

 あかりさんは、いまは離れてしまいましたわ。

 ナビで場所を確認しつつ、印刷した紙と見比べながら、あかりさんの通知とお話しする。

 あかりさんは、冬休みの合間には、デビューできるそうだ。

 そらくんの知り合いに、頼めたらしいですわ。

 わたくしも何名か、聞いてまわっていますが、少しずつあかりさんのカタチが出来上がりますわね。

 それは、いいのですが、通知がたくさんくるのですが、あかりさん、焦っているのかしら。

 それじゃ、遠くなんですね。

 そうですわね。

 住所わかりますか。

 いいえ、移動してしまいますので。

 駅は、どの辺りですか。

 駅……

 なにか不思議な受け答えですわ。

 駅を探すも、ここから離れている。

 一応駅名を発見したため、それを送る。

 わかりました。


「なんでしょうか。よくわからなかったですわね」


 ひとまず、今日二番めの場所に移動する。

 少し走らせると、ここだろうと思う場所に着いた。


「ここ……?」


 やはり近くには看板がみえなく、ここは五階建てだ。

 二階、三階と明かりが点いている。

 駐車場で、少し様子をみる。

 車やバイクの台数が少ないのは、年末だからなのだとわかる。


「残業……というより、年末最後のお仕事ですわね」


 三階から少しずつ人が降りてくる。

 改めて買ったペットボトルの飲みものを飲みつつ眺めていると、美容室らしく、髪を明るく染めてあるスタッフがでてきた。

 そのまま眺める。


 明るくなっている残りのが事務所だろう。

 車に乗っていく人と、バイクの人にわかれると、別の車が入ってきたりする。

 交代の別のスタッフなのかもしれない。


「美容室そういえば、いけていないですわ」


 髪を触りつつ、さらりとした感触に満足する。

 飲みもののフタを閉めたところで、決意してエンジンを止めて、降りると二階までいく。

 事務所の扉に手をかける、前に人がでてきました。


「ご依頼の人でしょうか?」

「いいえ。少しお伺いしたく思いますわ」


 わたくしが少しわざと気味に寒いと演出すると、中に入れてくれましたわ。


「依頼じゃない人というのは、なにか」

「以前にお仕事をしましたわ。アオイさんいらっしゃいますか?」

「アオイ……さん、ですか。失礼ですが、あなたはどういった関係のかた」

「わたくしアイっていいますの。アオイと何度かお仕事をご一緒しました」

「少々お待ち下さい」


 なにか机に戻ると、書類を確認している。

 他にもう一人スタッフがいますが、こちらを警戒しているようですわね。


「アオイはこの地域のスタッフにはいません。人違いですか」

「そうですか。失礼とは思いますが、ここ最近急に別のところから、派遣されてきたようなかたは?」

「面接にきたかたがいますが、その一人以外は特には」

「そうなんですの。わかりましたわ」


 丁寧にお礼を言ってから、外にでた。

 ここもハズレらしい。

 車に戻り上を見ると、窓から駐車場を伺っているのがわかった。


「かなり警戒していますわね。案件中、ということでしょうか」


 中にもう一人いたのは女性で、そのかたがこちらを見ているのがわかる。


「でてくるかしら……いいえ、ないわ」


 また通知が来ていた。

 あかりさんだ。

 少し気を張っていたせいか、あかりさんの文字でほっとする。

 ほっとしていると、電話がきてビクッとなった。


「あかりさん、どうしましたの? 夜までには、ちょっと……」

「いま向かってますから、駅にきてくださいね」


 マネージャーあかりさん、くるんですのね。

 そうなんですの。

 ……怒られる。

 まさかそんな。

 駅って駅ですよね。

 わかりましたわ。



 怒られる、逃げる、あとわたくしに選択肢は、はっぅ……これがありましたわ。

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