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あい/抵抗  作者: 十矢


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XX"

 おかしいですわね。

 クリスマス配信は、泣きまくったけれど、なんとか泣き好評でしたわ。


 あかりさんも、まだこれからですけれど、マネージャーの仕事をはじめてくださってるわ。

 プレゼントは、まだお渡ししていませんが、それはこれからですわね。

 そらくんのプレゼントは、わたくし知りませんわ。


 そう、それですわね。


 クリスマスには恋人たちが、お互いの手を重ねあい、あったかいね、と冬の寒さをバグらせて暖冬にしてしまうというあっついイベントだと、お聴きしましたわ。

 けれど、イヴの日に彼氏を振ったのですから、それは、儚い夢でしたわ。

 そのはずでしたわ。


 眼の前の光景は、いかがかしら。

 明日クリスマスパーティしましょうね、とあかりさんがおっしゃったため、なんとか頷いたものの、その前にあった出来事が衝撃で寝て覚めても、あかりさんの言われたその事実が、上手く説明できていないんですわ。


 そして、眼の前の光景ですわ。

 なにをわたくしの眼の前で、してらっしゃるのかしら。


「それで、どうしましょうか? 飾りは、そんなになくてもよかったけど、ケーキ少ないかな」

「いいえ、平気ですよ。昨日ももらったし、今日は……りーちゃんとのパーティだし」

「そうですよね! 三人でこれからのVの成功会ですね」

「それ、パーティなのかな」


 元彼氏のそらくんといま彼女のあかりさんが、こうして眼の前に来て、わたくしは、いつの間にか第二彼女という立場になってしまいましたわ。

 いいえ、第二彼女ということは、元彼氏というのは正確ではないのかしら。


 そうですわ。


 そらくんを嫌いだから、言ったわけではないのですから、彼女なのかもしれないですわ。

 けれど、第一彼女の立場を渡してしまったのは、事実。


「なぜ……わたくしの部屋で、一度は追い出したはずのそらくんが、こちらでパーティになったのでしょうか……わたくしいまだに状況がよくは、わからずですわ」

「なにいってるんですか、りーちゃん。第二彼女なんだから、この場でも問題ないですよ。第二彼女ってことでは、わたしもまだいいため、第三彼女には、渡しちゃだめですよ」

「はい……ですわ」


 それで、と、なぜかそらくんがクリスマスの日に、はいくずれさんといたことを白状させられている現実をいまだ、わたくしはよくわかっていないですわ。


 そして、あかりさんは、さらさらと第二という言葉を二度も言われますわね。


 もしかして、これがいまセカイに蔓延(まんえん)しているという彼女マウントなのでしょうか?


「ホントそらくんって、いつからモテるタイプになったのか、意味わかんないです」

「いやモテてるわけじゃなくて、ぼくが不甲斐ないなって話しをしたら、もう少しちゃんとマネージャーの打ち合わせもしたいしって言われて、それで……」

「クリスマス当日に、それでしたら、なんではいくずれさんの部屋で密会するってことをわたしに言わないんですか? わたし彼女にしてくれるって言いましたよね」

「密会するってこと言う男は、いないと思うけど」

「それで迫られて断われなくて、そのうち刺されるんですよ。浮気ってそういうこと」

「はいくずれさんは、刺さないと思うけど……」

「ねぇ、りーちゃんもなんかお説教してください」


 わたくしは、現在もエラー中ですわね。


 とりあえずキッチンに向かって、ポットを沸かします。

 ぷくぷくといい音がします。


「クリスマスにとっても相応しいお話しですわ。きっとそらさまにプレゼントが贈られたんですわね。とってもお楽しいお話しですわ」

「りーちゃん怖いんだけど、やっぱりぼくフラれてるよね」

「はい、飲みものできたら、かんぱいしますよ!」

「これってなににかんぱいするのかしら? クリスマスも一日過ぎましたし」


 さきほど沸かしてあったからか、すぐに、ポットが返事をした。

 お紅茶を三人分用意する。

 今日は、わたくしも甘いお紅茶ですわ。

 試しにゆずも浮かべますわ。


「はい……それじゃカップ持って……りーちゃんの泣き配信がおわってよかった、メリークリスマス!!」

「「メリークリスマス」」


 カオスクリスマスですわね。


 わたくしが振った彼氏と、第一彼女になったあかりさん、あかりさんはわたくしの愛人で、わたくしは、そらくんの第二彼女、そして、いまそらくんには第三の女性との密会の疑惑があるなか、カップを持ち上げる。


「そのうち、アルコールでかんぱいするのかなぁ」


「密会じゃないんだけど……」


「わたくしそのうち鮮血のミリロリ嬢様と呼ばれる日がくるのかもしれないですわね……朱くあかく染まるわたくしの……唇……」


 これがXという由来なのかもしれない。

 わたくしは、クリスマスを勘違いしていたのですわ。

 写真にバツを刻むように、血塗られた歴史を持つクリスマス、彼氏と彼女が今お互いに、剣を構えた姿ですわ。

 きっとXは、戦うヒトたちの日なのですわね。


 あかりさんを中心に、まるで修学旅行の枕投げをしているかのごとく、枕言葉を使って話しをする。

 そらくんはメンタルを少しずつ削られ、わたくしはそのお姿をみて、うふふと笑う。

 あかりさんが、喫茶店で重宝されていたのが、よくわかる。


「あかりさんは、自身を灰色と言いますのに、みなさんによくお話しされますわ」

「そんなに、たいしたことじゃないです」

「わたくしがブルーであった頃に、ご一緒にマジコスで、ウェイトレスしたかったですわ」

「ウェイトレスの経験をこれからの配信に、役立てます!」


 そらくんがほっと安心しているのがわかる。

 喫茶店のいまのブルーとようやく離れたからかもしれない。

 昨日そらくんがなにケーキをお食べになったのか、わかりませんが、いまあるのはいちごのタルトですわ。

 もうあと少しで食べおわるけれど、ほろほろさくさくしたこの食感が、とても美味しく、あかりさんはセンス抜群ですわ。


「クリスマス……やはり勝つのは食感ですわね」

「りーちゃんも、その服とてもお似合いです。りーちゃんって、似合うのがおおくてすごいです」

「あかりさんこそ、これからどんどん素敵になりますわよ。数年でもしたら、もうわたくしは追いつけなくなりそうですわ」

「そういえば、りーちゃんって身分証ってみせてもらいましたか?」

「はい、これですわ!」


 カバンから、それは見事にデコされたカードを差し出す。


「これは、Vの身分証です。ミリロリ嬢様です」

「……なにをおっしゃるのかしら。わたくしがミリロリ嬢様ですわ」

「それじゃなくて……」

「ふふ……あかりさんは、とってもわたくしにご興味があるんですのね」

「そうでもなくて……」

「仕方ありませんわね、こちら」


 はい、と差し出す。


「これは、事務所通るときのカードです」

「その通りですわ」

「それじゃないんです……」


 あかりさんが、わたくしの身分ぼけをしっかりと受けとめてくれて、大変嬉しいですわ。

 そらくんは、できるだけわたくしと会話しないようにしていますわね。

 そうですわよね。


 つい数日前に、フラれましたものね。


 なんとなく微妙な空気をふわつかせつつ、二十六日のクリスマスが過ぎていきますわ。

 すっかりアフタークリスマスですわ。


 そらくんとあかりさんが、だんだん片付けをするなか、昨夜は忙しくて、アイの投稿を忘れていたと思い出す。



 おくれたけど、みんなメリークリスマス。



 このひとことで、たくさんの返事がとどく。

 わたくしがしていた作業をそらくんがみて、声をかけてくる。


「それって、前のスマホですよね。アオイさん」

「そうですわ」

「まだちゃんと使えるんですね」

「ええ……キャリア通信はとっくに外されていますが、なんとか」


 そらくんが少し考えている。


「それ、なぜ置いていったんでしょうか。服のポケットにも入るのに」

「さぁ……わたくしには、わかりかねますわ」


 あ、とあかりさんがなにかを思いつく。


「りーちゃんに、持っていてほしいんですよ。想い出」


 わたくしも考える。

 アオイが想い出をほしがっていたとは、なにか違う気がする。


「それは、またロマンチックですが、なにか違うのですわ」


 あかりさんとそらくんが、片付けを手伝ってくれたため、あとは、テーブルに残るものだけになった。

 玄関で、あかりさんとそらくんが仲良く、揃って挨拶をしてくれる。


「今日楽しかったです」

「りーちゃん、またあかりさんと来ると思う」


 扉が閉じて鍵をしめてから、キッチンで洗いものをする。


 年始は、また忙しくなる。

 二週間ほどは、ずっと年始挨拶だ。

 もし遠く外出するなら、明けて二週間後か、明日からの二日だ。


「貸し金庫に入っていたのは、想い出? 登記簿、現金……」


 水道をとめて、シャワーの準備をする。

 この二日で、どこまでいけるでしょうか。


 シャワーをしながら、必要なものを考えていく。

 貴女がいくさきは、常に誰かを追いかけているみたいだったわ。

 レンタルのお仕事として、ひとつ思い当たる出来事が浮かぶ。



 シャワーをとめて、雫が落ちていく。

 ポンと音がしたときには、明日いる場所の風景を思い浮かべていた。

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