表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あい/抵抗  作者: 十矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/101

コスプレ喫茶トキメキ♡マジカルフェアリー

 土曜日は、昼から夕方までバイトが入っている。

 そのため、バイト前までの時間で、大学の課題を早めに片付けて、そのあと家での作業をしたいところだ。

 まだ夏場のこの時期は、早くに起きてカーテンを開けると、もう光が入ってくる。


「まぶしい」


 机に置いて、寝る前に充電してあったスマホを確認すると、昨日の続きのようなリリスタと、ラルルンのメッセージが入っている。


 ラルルンをひらくと


 "おやすみ

 おはよう

 目覚めてる

 迎えいこっか


「きてっていったら、マジくるよね」



 ここ何度もアオイちゃんと話してみて、わかったことは、けっこうわたしにマジなようだ、ということ。


 でも、アオイちゃんのバイトっていったいなに。



 朝の日常の通りに、かんたんに朝食をとり、洗面やトイレをすませて、それでも眠いときには、シャワーをサッと入ってみる。


 昨日の夜にもシャワーは、入ったのだけどね。

 着替えをもって入る前に


 "シャワー中!

 のぞくべからず


 と、送ってみる。


 二十分くらいででて、着替えて髪を乾かしたあと、机の側にあるイスに座る。


 ラルルンをみてみる。


 "シャワー入るなら先に言って?

 玄関のカギあけといて


「いや、開いてたら、ヤバいでしょ」


 一応、玄関まで見にいくと、しっかりと閉まっていた。

 ホっとする。


 "ざんねんね

 しまってるよ



 小さめの冷蔵庫から、自然水のペットボトルをとり出して、コップに入れる。

 一口ふた口飲むと、わたしの体内で、水がほしかったのだな、と想う。



 スマホを隣に置いたまま、なんとなくパソコンをとり出して、課題の内容をみていく。

 キーボードを打ち込み、なぜたか、そのまま課題を始めてしまう。

 ときどき、スマホでリリスタを開いて、思いつきの言葉を投稿していく。



 "大学の課題けっこうムズい


 "計算ソフトと文書打ちこみ、結局両方つかうよね


 "あぁ、調べものあるんだった


 そのたび、いくつものリリスタマークがつくため、見てるひといるんだなと想う。



 ラルルンでときどきメッセージを送る。

 リリスタを投稿する。

 パソコンで、文書を打ち込む。




 二時間集中していたらしい。


 気づくと九時の数字は、もう五分で十一になる。


「そろそろヤバいか」


 バイトの始まり時間は、十三時なのだけど、お昼を軽く食べてから移動時間もあるため、もう食べないといけない。


「お腹すかないんよね」


 課題のレポートをまとめおえると、提出用のフォームから、送信しておく。


 "受付ました"


 を確認すると、パソコンをとじて、冷蔵庫をたしかめる。


「そっか。買いものもしなきゃだね」


 ある残りもので、サッとサンドイッチをつくった。

 写真を撮って、リリスタに投稿する。


 "どうだ。わたしのサンドイッチ


 反応をみることなく、パクパクっと食べると、着替えを探しはじめる。



 結局は、バイト先でまた着替えるのだけど、それでも少しのお洒落はしたい。

 姿見がないため、軽く下を見たり上着をチェックしたりして、バックも中身をたしかめると、まぁ、ちょうどいい時間だ。

 机に置いてある手鏡で、髪とめだけチョコっと、位置をなおす。

 カーテンをしめて、電気を消すとすぐに部屋をでた。

 オートロック式なため、鍵は自然と閉まるのだけど、それでも二回は鍵を確認する。


 "カギしめたよん


 ラルルンでひと言送信をしてから、駅までの道を早歩きでいく。



 駅まで十五分。

 電車で二十分。

 また少し歩きで十分。



 部屋から自転車を使えば、もう少し早いし、実際買いものだけのときは、自転車も使うけど、駅前の駐輪場がこの前に値上がりしていたのだ。


「なんか、悔しいし」



 無事、喫茶店につく。

 従業員用の入り口から、中に入る前に、また投稿しておく。


 "バイトはじまり

 みんな、きて


 もちろん場所を知っているのは、アオイちゃんだけだけどね。



 わたしのバイトしているここは、メイド喫茶ではなくて、コスプレ喫茶だ。

 チェキも撮影する喫茶で、毎回お客さまにアンケートを集計して、その都度日替わりでコスプレをして接客にあたる。

 なかには、いかがわしい注文をしてくる変態さまもいるけど、基本的にはわきまえているファンのようなお客さまが多く、お店の従業員に固定ファンがついている。


「おつかれさまです」

「今日もお願いね」

「はい」



 ここのお店の所有者と店長は、どちらとも女性で、雇用するときもビジュアルと声と、なにより地下アイドルのようなキャラを大切にしている。


 たぶん、アオイちゃんは、リリスタで前からここのお店を知っていて、それでわたしのネットの固定ファンになってくれたんじゃと、想っている。


 お店の名前は、トキメキ♡マジカルフェアリーだ。


「えと今日のコスプレはなに」


 廊下を歩き、

 従業員用の休憩室兼オフィスになっているスペースで、発表されている衣装をみると、第一位、魔法少女ドッキリユリリン。


「はぁ。アレかな」


 衣装コーナーで、何着もあるなかから、選らんでいると、もう二人同じ時間シフトの子たちが、集まっていて


「この衣装、ちょっとエ○系なんよね」

「下着、見せ下着持ってきてよかったね」

「てか、アニメみたら、ホントえっちぃやつ」

「えーー」

「チェキポーズはなん種類あんの」


 と、まるでアイドルたちの会話をしている。


「うん。たしか、四種類みたい」


 わたしは、掲示版に書かれているポーズを決める。

 それぞれ衣装が決まると、更衣室で着替えて、お互いに衣装チェックと声だしに、ポーズ確認。


 それが終わると、無線機で交代を知らせて、前のシフトの子たちが、チェキプレゼントを手渡して、戻る。

 交代していく通路の前には、おおきめな姿見が、二つ置かれている。



 わたしは、衣装をもう一度確認する。


 青い色のもので、胸にいくつかの記号が縫ってある。

 胸にリボンがあるけど、ボタンは、首よりも少ししたにあり、胸の上が少しはだける。


 スカートはフリルで短い。

 靴下も衣装の色だ。

 靴は、魔法少女っぽくローファーに飾りがついている。

 頭にはカチューシャと、手にはステッキ。

 たしか、青担当はクールキャラのツンデレで、ときどき言葉つかいがおかしい。



「いらっしゃいませ。トキメキマジカルフェアリーにようこそ!!」



 ここは、魔法少女たちの国で、飾りつけも華やかだ。

 メニューは少し割高設定だけど、客層は女の子のほうがやや多めにくる。

 でも、お客様が男の子じゃないからと油断はしてはいけない。

 わたしは、ややツンデレなため、セリフがときどき変化するのが、不自由だけど、いかにも甘えん坊なピンク担当じゃなくてよかった。


「どちらをご注文なさいますか?」

「ピンクロイヤルティーとマジケーキ二つでお願いします」

「ストレートティーでよろしいですか?」

「はい」

「途中で注文を変えられないんだけど、それでもいいわよね」

「はい」

「そのほか、なにかありましたら、タブレットからご注文くださいませ。というか、メンドくさいんだから、もう呼ばないでよね」

「うん」


 ステッキで、メンドくさそうにしながら、


「マジマジミラージュ」


 と魔法を唱える。


 二人の女の子のお客様は嬉しそうだ。

 ピンク担当の衣装をきた魔法使いは、同じピンクの色のステッキを持っている。


「マジマジミラージュ」


 クルットまわってから、ウインクをして、去るときには手もふる。

 ある程度、テーブルを接客し終えて、見えないバックヤードや厨房の側まで戻ると、それぞれで感想を言い合う。

 もちろん、これが役目なのだから、あまり文句は言えない。


「ピンク担当の場所、すぐにおかわりくるよ」


「グリーンの場所は、もう少しで帰るかな」


「ブルーちゃん、しっかりチェキではデレてよね」


「ホワイトは、いつものひとか」


 汗をふきつつ、テーブルに持っていく料理ができると、また笑顔に切り替える。

 いや、わたしはどちらかとツンなのだけど。


「はい。お待たせしました。あまり、ゆっくりしないで、サッと食べてよね」


 クルッと、すぐに背中を向けると、声をかけられる。


「また、ブルーちゃんはデレ隠し」


 わたしは、少しだけ振り向いてあげてから、手をふる。


「きゃーー!! 手ふったよ」


 こうすると、なぜか喜ぶのだ。




 二時間交代なため、二時間で一度休憩室に戻れる。でも、正式な休憩時間ではなく、お水休憩と呼ばれる。


「ふぅ」

「今日も忙しいね」


 話しかけてくれたのは、ピンクのフリルをつけた、ピンク担当だ。


「ねぇ、知ってた?」

「なに」

「ときどき、ここのお店ストーカー被害でてるの」

「そうなんだ」


 わたしは、なんとなくアオイちゃんの顔を浮かべる。


「お店終わりに待ち伏せされたり、写真撮られて、脅されたりするみたい」

「なんで、ここのお店で脅されるのよ」


 若干えっちぃ格好もよくするけど、サービスで性的サービスなど一切やらないし、会社に正式にお願いすれば、ガードもつけてくれるから、どちらかというと軽く芸能事務所に近い。


「それがね」

「うん」


 ナイショ話しをするように、声を小さくして、わたしのすぐ隣にきて、顔を近づける。


「なんだって」

「えっ」


「休憩終わりだね。さ、また二人と交代だね」



 わたしは、通路の鏡の前で、姿を確認する。

 一応ハンカチで、汗もふく。



 それにしても、さっきのは、なに。

 接客に入る前に、なんだかモヤモヤしてしまう。


 ピンクちゃんは言ったのだ。


 "二人組のホワイトファンに気をつけて。そいつら、有名な恐喝グループらしい"



 わたしの終わり時間手前になって、交代で、夜に入る子たちの無線が聴こえてくる。


 バイトを終えるギリギリで、ブルー目当てのお客さまに、デレっとしたチェキを撮って渡してから、帰りの着替えをする。

 更衣室では、今日の衣装をきちっと戻すハンガーがあり、そこに戻すと、洗濯がされて、二日後には使えるようになる。

 盗難防止もあるらしい。


 なぜ盗難、と聴いたことがあったときには、ここの衣装を持ちだして、ホテルで撮影会をしたり、男の子の希望で衣装デートに使ってしまった先輩がいたらしいという話しだった。



 わたしは、ハンガーに戻すと、名前を書き、持っている社員証カードで退勤する。

 それから、リリスタで投稿する。


 "バイトおわり

 今日も青いツンデレ

 ピンクよりはいいけど


「ブルー、一緒に帰ろう」

「うん。いいよ」

「ピンクは」

「わたし、バイク」

「そっかぁ」


 お店のスタッフ用出口に向かい、ロックを外してから、外にでる。


「おつかれさま」

「おつ」

「おつかれさまね」



 今日の帰りは、ホワイトちゃんと一緒になった。

 ピンクちゃんは、スタッフ用の駐車場においてあったバイクで、エンジンをかけて、手をふっていってしまう。



「ねぇ、ブルー」

「なに」

「いつもリリスタかな、投稿してるけど、怖くない?」

「ううん」


 駅までの道を歩きつつ、話しをする。


「わたし、このトキマジフェアリーに入ってから、特にホワイトだけど、ファンも増えてくれたけど、けっこう身バレ寸前までいったり、住所調べようとしてきたりして怖いよ」

「そうなんだ」


 わたしは、アオイちゃんがいるからかな。

 そんなに怖くなく、反対に、ひとりきりのとき寂しいのを紛らわしてくれている。


「ブルーはツンデレだからかな」

「ううん。でも、衣装可愛かったり、チェキ撮ったりするのは、アイドルみたいな感じだから、くるお客様も地下アイドルに逢う感じでくるのかな」

「うん」


 ホワイトちゃんは、たしか住んでいるところが、駅近くで、歩きで帰るのをわたしは、思い出す。


「あ、わたし駅入るけど」

「あ、そうだよね。リリスタ、いつも見てるよ」

「そっかぁ」


 駅の改札口は、上にあるため、階段の下部分で、少しだけ会話してから、ホワイトちゃんとわかれる。



 "帰ってからまた課題かな

 あ、バイトはそんなに苦しくはない

 でも、きいてほしいことあって

 また戻ってから



 リリスタに投稿する。


 そのあと、投稿はまだしないけれど、書こうとした続きだけ、下書きしておく。

 わたしのスマホからの投稿には、

 いくつか未投稿の下書きで残っているのがある。



 階段を上がる。



 今日は、スカートではなくてショートパンツだから、下を気にしなくてすむのだけど、スカートのときのクセで、バックをやや後ろ向きに持つ。



 うつむき気味に、階段を上がっていたけど、ふと気になり、上のほうをみている。

 階段を急ぎで降りてくるひとがいる。



 でも、わたしは、その先にいるひとが見える範囲にきたことで、瞬間安心してしまい、降りてくるひとが、こちらに寄ってくることは、注意していなかった。



「あ、アオイちゃんじゃん」



 わたしは、直感がはたらくほうだし、注意力もある。

 そして、さっきの先輩の言葉が、頭に浮かんだのは、気のせいではなかった。



 "ホワイトのファン"



 階段から慌てて降りてくるひとに、見覚えがあった。



「あっ」



 とわたしが気づくのと、そのひとがすぐ側にきて、わたしの胸あたりをつき飛ばすのは、同時になった。

 わたしは、手に持っていたバックを離して、とっさに丸くなろうとする。

 階段の上方では、アオイちゃんが顔を青ざめて、手を伸ばしているが、とても届く範囲ではないだろう。



 なぜだかは、わからない。

 でも、数週間前から準備していた"こと"は、ムダにはならないだろう。



 遠くのほうで悲鳴がするのと、わたしが転げ落ちるのは、一瞬のことだ。

 あ、とか、うっとか、自分の悲鳴なのかもわからない声をだし続けながら、さまざまなところを打ち、景色もよくわからなくなったところで、頭を打った気がする。

 意識が途切れるまでのホンの短い時間で、ボンヤリと思考のかけらを繋いでいると、



 アオイちゃんという貴女に出逢えてよかった



 でも、もっとちゃんと好きって言いたかったな



 そんな、感情だった気がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ