VしてKする予定
もうあと少しで、Xデーだ。
十月、十一月ともう過ぎていく。
恋人たちは、ロマンティックだろう。
わたしは去年も一昨年も、ケーキなどなくて、中学からの高校受験と、親からの仕打ちで、闇堕ち寸前だった。
なんとか受験を済ませてからは、一週間くらい熱がでていて、妹が心配していた。
その妹も中一女子で、ときどきみかけるもキラキラしているはず。
来年はいいけれど、そのあとは、わたしと同じで高校受験になるのだから、来年のこの時期から少しずつ、焦りはじめるかもしれない。
「わたしが、Xデーのことを考えはじめるなんて、悪魔の計らいとしか思えないけど、一応いるんだよね」
セカイの女子の彼氏持ちが、いくら幸せオーラでまくりだからといっても、総てがXデーを楽しめるとは限らない。
特に、第二彼女である立ち位置のわたしは、少しは可愛いさアピールでもしないと、いつかはそらくんが離れてしまうかもしれない。
なぜか、そんな不安がある。
あのことだ。
浮気調査をしないといけないのかもしれない。
放課後、部活なしの時間、自習室となっている教室に入る。
浮気調査……とSNSでの項目を打つと、探偵やグッズ、浮気相手を発見、修羅場、事件とでてくる。
わたしがそのうち、そらくんをカバンに入れた小さいナイフでぶっ刺す想像をしていると、隣から声をかけられる。
同級生の女子だ。
「クリスマスに流血沙汰とか、血のメリークリスマスだね。ホラー映画?」
ちょうど流していた映像は、メリークリスマスと文字があるなか、女性が浮気男を刺す瞬間のものだ。
なんとか抵抗しているけれど、通行人が避けて逃げてまわっている。
たしかに、ホラー映画みたいだけど、数年前の映像だ。
「ホラー映画のほうが、怖くないよ」
「って、ホンモノなの! うわぁ、あ、刺されそう……これどっちがわるいの」
解説などはないため、昨年の映像としかわからないけれど、ただの意見を伝える。
「刺したら、やっぱり刺したがわだよね。でも、恨まれたってことは、通常はトラブルだから、わからないよね」
わたしがそらくんを刺したら、そらくんがわるい。
「え……そうかな。だけど、女性に刺されるってことは、手出したってことだよね。手だけ出しておいて、なにかあったらすぐに逃げるなら、はじめから、来るなよって思う」
「うん。でも、付き合ってみると、いろいろあるんじゃないかな。刺していいことなんてないよ」
わたしたちが放課後話していると、さうが苦笑いだ。
「それ……浮気現場の末にってやつなのかな。どちらにしても、試験勉強になにも参考にならないと思います」
さうは変わらず、まっすぐに言ってくる。
この場合、息抜き……には、ならないため、今後の浮気調査の進行次第だけど、試験勉強の合間に、みるものじゃない。
そういいつつ、さうも画面をみている。
そろそろ逃げられないだろう。
こうも拡散されているのだから、ホンモノだろうし、撮影しているヒトは、部外者なのだろう。
それにしても、通行人も巻き込んだ事件になりそうで、これが都会かと思う。
「日常にあるんだよね」
「都会だね」
「わたしたちも気をつけてだね」
「さうに、刺されないといいな」
「ぼくは、刺されるほうなんじゃないの」
この場合は、どちらだろう。
さうは、れむが好きなんだと思う。
いつも、構ってちゃんしている。
その場合は、わたしが恋敵かもしれない。
わたしがれむといると、れむはわたしとよく話すことになる。
待って……そしたら、わたしが刺されそうだ。
「さう、わたし刺すとかある」
「え! なんかあかりさん、ぼくにナイショで、悪いことしたの? なにか話してよ」
「そうよ! あかり、相談あるよね」
いまのところ刺されないらしい。
でも、油断はしないようにしよう。
「勉強しよ」
さうもすぐ隣に座り、カバンから取り出す。
試験自習期間に入り、部活はなしだ。
その代わり、遊びにいく予定をたてているほかのクラスの生徒もいるなか、担任は、この期間に補導されたら受験がなくなったり、しそうだよなと、脅してきた。
教師ってなんで偉そうなの、とほか女子が文句を言ったけれど、実はここのクラスは、そんなに派手なクラスではないため、他クラスの情報をいっているらしい。
文化祭でも、ここのクラスはお化け屋敷だったけれど、そんなに無理することもなく、打ち上げ時も、のんびりしていた。
たぶん、これからの進学のことを頭に入れてあるヒトが、多いのだろう。
「ここは……」
「問い、四がわかりやすいよ」
「そう」
さうもれむも、なんだか高一だから、楽しめばいいのに、と思う。
わたしは、高一受験だけどね。
しばらく勉強モードにしていたら、れむがつついてきた。
なんだろう。
ノートのすみに、Xと書いてある。
問題を間違ったのかもしれない。
「え、れむなに?」
もう一度つつかれる。
あまりしゃべらないほうが、いいということらしい。
「ここの英語のは、どれだった」
「ここだよ」
さうが勉強について、細かく教えてくれるなか、れむは、また違うことを書く。
Xとは、ばつではないらしい。
予定は、あるのというところで、ようやくクリスマスのことらしいとわかった。
「プレゼントとか……」
「しーー」
そうだ。
話してはいけないらしい。
なぜこうも女子高生という生き物は、遠周りなコミュニケーションをとって、ややこしいことをするのだろう。
仕方なく、英語のノートを書きつつ、その横に手帳を拡げて続きをかく。
相手とかいるの。
わたしは、予定はまだないけど、これから入るかも。
なにそれ。
Xにまで、バイトするの。
バイトじゃなくて……ま、いいや。
それで、もしかしたら、れむとは日程をずらそうかなって思ってるよ。
わたしは、三日くらいはいそがしいかもね。
何日のこと。
二三と二四と二六。
じゃ二五日は。
もちろん、あかりとのラブな予定だよ。
いつからわたしとの予定は、ラブになったんだ。
はじめからだよ。
……ややこしい。
勉強をしているのか、予定を話しているのか、ナイショ話しをしたいのか、なにもわからない。
VやらXやら、なにかよくわからない単語で手帳がうまり、さうは、ときどきスマホでなにか確認している。
そういえば、文化祭などでときどき連絡先を渡されていたらしいけれど、それだろうか。
れむのことは、いいのかな。
少し気になってしまう。
さうは、どうなのだろう。
れむとXで待ち合わせして、VしてKしてわたしは、そろそろアタマが痛くなってきた。
さうなんとか言って欲しい。
「それで、お二人は、クリスマスとかはどうするの?」
「わたしは、二五日は空いてるよ」
「二四、二五って平日だよね。どうしよ」
「そっか。三人で集まるとかしますか?」
「さう、なんだわたしとデートしたいんだ?」
「え、クリスマスさうはいいの?」
れむとわたしで別のことを聴いてしまった。
「デートって、クリスマスに集まったら、すべてデートなんですか。集まるのなら、まだ予定は入れてないけど」
「そっかぁ、さう寂しいね」
「クリスマスに異性といないから、寂しいって偏見じゃ」
「へぇ……じゃわたしとデートしないんだ?」
「集まることをデートって変換し続けないで欲しいです」
くすくす笑っている。
れむは意外と魔性の女なのかもしれない。
わたしは、二五日の予定よりも、浮気調査が先かもしれない。
彼氏が浮気していたら、調査するのは、当然だし、調査して発覚したら、デートどころじゃない。
クリスマス当日に発覚したら、とりあえずそらくんを刺そう……
血のクリスマスになる。
いやいや、いつからわたしは浮気ひとつで彼氏をナイフで刺す、血まみれ女子高生になったのだろう。
どうせ血まみれになるなら、着るのは赤い服装だろうか。
鮮血に染まる女子高生というワードで、SNSで調べてみよう。
わたしが血にあう服装をイメージしていると、いつの間にか、れむは三人で集まる話しをしている。
わたしとの話しは、よかったらしい。
それにしても、プレゼントの話しをしていたけれど、れむは四日間も予定を入れていて、クリスマスに何人の友だちや恋人とデートするのだろう。
それとも、さうとの話しのように、集まることをデートとしているだけで、本命はいないのだろうか。
とりあえず勉強をひと区切りして、解散するかと思ったら、一緒に帰ることになった。
帰り道、わたしは寄る場所があるため、途中でわかれることになる。
相変わらず、さうが、れむにからかわれている。
さうは、学校では地味な扱いだけど、私服ファッションや小物は、それなりにイケている。
れむも、そんな姿があるためか、学校でからかうと、ときどき変な目でみられている。
でも、地味な男子でも、れむが気にかけているとされるのは、そんなに悪いことではないだろう。
さうも、はじめは、なんでいるのみたいな感じが、少しずつ冗談くらいは、言うようになった。
「さうは、なんで学校だと、モテないのかな」
「いらないよ。学校でモテるとかしても、男子から距離置かれたり、女子からは、変な噂になったりして、混乱するし」
「変な噂とかあるんだ」
「そりゃあるよ」
「ええ! もっと明るくして、目立とうよ」
「れむさんは、目立つよね」
「目立つのは、あかりみたいなだよ。もうまぶしい」
「そんなわけない」
「なんで、あかりまでそうかなぁ」
れむが苦労しているのは、知ってるけど、さうは、そんなに目立つことはしないだろう。
勉強もできるし、それなりに運動できるし、そういうヒトは、地味なほうが集中できるかもしれない。
返って少し派手めな隣のクラス男子は、キャーキャー言われている割に廊下などで、女子生徒とケンカしたり、ときどき空き教室で、知らない女子が泣いている隣にいる。
クズなのかは、わからないけれど、その男子には、わたしは興味がない。
「じゃ、こっちいくね」
わたしが違う道を指すと、れむが急にカバンを引っ張る。
「ちょっと……」
「なに?」
「えと……」
なにかスマホを取り出して、その場でメッセージを送ってくる。
プレゼントなにか考えてる。
れむにあげるやつのこと。
違うよ。
それじゃ……さうのことね。
そう、さうにプレゼントあげようよ。
なんだか、おかしくなる。
さうが側にいるのに、さうのことを話している。
でも、少し嬉しい。
れむは、わたしと同じで考えていたらしい。
わたしも、なにかプレゼント考えてるの。
そっか、わかった。
「それじゃ」
「うん」
さうは、気にしていないようで、じゃと応えている。
れむとさうは、並んで別の道をいく。
わたしは、このあと電車移動して事務所だ。
また制服姿だけど、仕方ない。
今度は、変装をカバンに入れなくてはいけない。
駅で電車に乗り、はいくずれさんぬいぐるみをカバンから出す。
もうこの時期は、電車の窓の外は、暗くなる。
風は、まだそんなに強くないけれど、冬場の風は、冷たい。
そのうち、はいくずれぬいぐるみの冬バージョンを手に入れることにしよう。
すぐに、降りる駅になる。
またカバンにしまう。
事務所への道をいきながら、さうとれむのプレゼントを考える。
プレゼント交換会など、小学生のイベント以来で、しかも男の子のプレゼントなんて、よくわからない。
けれど、れむも探しているようだから、わたしもいいのがあれば、れむと話してみよう。
まだ間はあるけれど、そろそろVの準備も本格化させないといけない。
マネージャーからの一応の目標は、クリスマスで、間に合わなかったら、そのあとの年始にはスタートらしい。
知り合いの知り合いは、そらくんの知り合いということだけど、そらくんの話しだと以前Vtuberをしていて、そのあと事務所から独立して、野良配信者となっていていろんなクリエイターのお手伝いをしているらしい。
名前は忘れたけれど、問題を起こしたわけではなくて、ただ事務所に属しているとできない仕事がしたいという変わり者だ。
そらくんは、なにか別ので知り合ったといっていた。
「怪しいけど、普通のクリエイターさんだと、資金足りないし」
世にはびこるのは、いつだって資金のあるヒトらしい。
だから、まず初めにその謎クリエイターに頼み、そこから、ひとつランクアップだ。
「おはようございます」
受付で、だいぶ見慣れてきた美人受付嬢にあいさつして、そのままエレベーターにいく。
エレベーターのところには、日付で今度、点検しますと書いてある。
年末ぎりぎりだ。
上がると、すぐに事務所がある。
もらっているカードでタッチしてから入る。
マネージャーの姿をみつけた。
「あっ……」
声をかけようとしたけれど、電話していて話せそうにない。
くるっと周りをみると、ほかのスタッフがあっちと指差してくれる。
お客さまの座るソファではなくて、会議室にいってということらしい。
少しずつ、顔を知られてきたらしい。
いや制服姿だから、目立つのか。
「今度は、やっぱり私服で変装しよ」
会議室でカバンを置き、すぐにはいくずれさんぬいぐるみを隣に置く。
まだ私室には、そんなに種類はないけれど、前にそらくんが大量にもらったおすそ分けなため、大切にしている。
少し待ちそうなため、来ている通知をチェックしていると、マネージャーが来た。
まだ、スマホでなにか確認している。
「おはよう」
「おはようございます」
「ちょっといくつか連続で、連絡きちゃうから……」
「いえ、いいですよ。試験期間なので、家いっても落ち着かないし」
「そうなの」
そう話していて、またスマホが鳴っている。
ごめんね、と合図だけだして、また出ていってしまう。
「マネージャーいそがしそう」
少し時間がありそうなため、会議室の広いテーブルの上に、荷物を拡げていく。
まだ一年だからなのか、英語と数学は、それほどに悩む問題がなく、教えてもらえれば進んでいくものだ。
国語は、まぁで、けっこう問題になるのが総合だ。
体育系の分野は、すべて無視している。
テキストをみつつ、政治や経済のことを考えているわけではない。
二年時より、事前進路選択をしなければいけないらしく、そのためのアンケートやそのための総合がある。
進路といわれても、大学進学をする気でいるし、上手くマネージャーの職業にもいるため、大学では、動画や音楽、配信について詳しくわかるところがいい。
けれど、迷っているのは、そこの部分だけじゃない。
「職業見学や学校研究っていわれてもね……」
事前アンケートには、そのあとの研究したい分野、興味のある職場、それについての仕事が含まれている。
対象Vtuberで見学先、ミリロリ嬢様かはいくずれさん、研究は、動画配信か秘書とかじゃだめなのかな。
「わたし勉強が活かせるのって……秘書?」




