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あい/抵抗  作者: 十矢


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翠華祭

 クラスの準備も、部活の飾りつけもほとんど日程があわないため、不参加だったため、三日間ある文化祭をすっかり忘れていた。


 部活参加の文集つくりも、一年ということもあって数ページしか載せなかったため、実際の参加は、前日夜までの飾りつけと当日の文集当番、それにクラス展示に顔をだすだけだ。


「あかり眠そうだね」


 隣の友だちが声をかけてくる。

 それは、その通りだ。


 前日の飾りつけの参加は、ほぼ全員ですることになったため、夕方の下校時刻ぎりぎりまでそれを行い、バイトは学祭ということでズラしてもらったけれど、その分前日までフル稼働で、しかも大学の内職までしていたため、なんだこの忙しさは、という感じだ。


「文化祭といえば華だよ!」

「高校の文化祭ってあるんだね」

「なにいってるの、あかり」

「文化祭って大学生のことだと思った」

「ウチの高校の文化祭って、けっこう有名なんだよ!」


 れむが力説してくれる。

 どうやらここの高校は、三つの華があるらしい。

 近くの女子校ダンス部とのコラボで校庭や中庭で広くつかって盛り上がる。

 普段は、地味で目立つことのない子も、普段は眼鏡で制服もきちっとの子も、派手な衣装と、短いスカートで歓声を浴びる。


 屋上からの花スタンドも人気だ。

 華道部を中心に、柔道も剣道も競うように、花を飾る。


 体育館のバンド活動も人気らしい。

 ここの文化祭で拍手をたくさんもらえたバンドが、後にメジャーにいってランキングに載って活躍したらしい。


「どれもわたしに、縁がないな」

「あかりなに言ってるの」

「れむこそ。このがらんとした教室をみてよ」


 わたしたち文芸部の文集の販売と、限定の立ち読み、それに部員の紹介冊子があるけれど、それも隣の教室のキャッキャッした掛け声が聞こえてくるだけで、売り子は暇だ。

 持ち量もひとり三十とか、少ないひとで十五ほど販売すればいい数で、二年生一年生が中心だ。

 三年生のも掲載されているけれど、受験時期なため、文集内容に参加したところで、引退だ。


「隣の縁の御守りすごい人気だね」


 こちらは、わたしも少し前に知った話しだ。


 通常体育館で、ドリンクチケットの販売のおまけでついていた御守りなのに、その初回の年に、その御守りを持っていた、その日に出逢ったばかりの二人が恋人になったという伝説がある。

 そのため体育館でずっと恒例になっていたのに、ドリンクチケットを捨ててしまうひとも増えてきたため、販売場所を移動させられた。


 それがわたしたちの隣にきた。

 果たして人気店の隣のお店は、ひとがくるのだろうか。


「さうは、お店番は?」

「いやその前に、あの男の子文芸部じゃないんだけど」

「それでも、なにか書いてたよ」

「さうってさ、ぜったいあの御守り買ってくるよね」


 たしかに、それは同意しかない。

 縁とか御守りとか、恋の話しとか、すごいのり気になる。

 わたしは、そのたび引く。

 そういうところが、シルバーと言われるところなのだろう。


「お店番おわったらどこいくの?」

「そりゃ三大華のどれか……」

「それなら、わたしとはべつね」

「えぇ! まわろうよ」


 そもそも翠華祭(すいかさい)のことも前日準備までは、周りのひとたちをみて、思い出すくらいだった。

 どこかに少し休めるところあれば、いいけれど、今日からはどこもひとがいるだろう。


「文化祭楽しめるのは、貴女みたいなひと。わたしは眠だるいから、これ交代したら、どこかで休憩して……」

「あ、さうだわ」


 いらっしゃいませ、と声をかけていると、さっそく一部とってくれる。


「一部三百円、二部五百円、三部七百円です」

「二部買いたいけど、ほかのもみたいし」

「二部五百円です」

「それ買ったら、なにかおまけつくとか?」

「もれなくわたしの笑顔とかついてき……」

「買います!」

「チョロい……です」

「あ、それ」


 れむがやっぱりと言ってみている。


「御守り」

「買ったんだね」

「並んだよ!」

「はぁ、ウチのはおかげでこのような状態ですわ」


 手を示さずともわかる、お客さまの数。

 入口部分で案内をしている部員と、こちらの販売二人で三人。

 いまはここには四人だ。


「お店番はいつまで?」


 五百円を渡してくれながら話す。


「四十分交代で、残り二十分」

「そっか」

「二部です」

「ありがとう。あれ、笑顔は……」

「……購入していただきありがとうございます!」


 にこやかに一瞬だけ笑った。

 わたしだって、笑うくらいはできる。


「三人でまわろうよ」

「さうは、お店はいいの?」

「クラスと部活は午後だから」

「わたしいいや」

「え、なんでよ」

「つかれちゃった」

「つかれるほど、ひといない……」


 にこやかに、にらみつける。


「ほら、三人で」

「あと二十分どこかで待ってるから、呼んでください」


 勝手にいってしまう。


「さういっちゃったよ」

「いいんじゃない、文化祭なんだし」

「三大華? とかいきたくない」


 いまだってつかれてるのに、さらにつかれるところは、寄りたくない。

 いまのお店当番がおわったら、こそっとひとりで違う場所にいこう。

 たしか、ポケットに文化祭案内があった。


 ときどき、縁の御守りを持っているひとがこちらに来るも、買ってくれるのは二、三人だった。


「あとは午後だね」

「そうだね」


 わたしの割り当ては三十なため、せめて二十部くらいには、届きたい。


 割り当て時間の三分前に、走って交代の部員がきた。

 いまの売上と、手元の余分にある両替の金額を確認すると、れむもわたしも任せて、廊下にでる。

 廊下には、隣の教室の列がみえていて、廊下の先に続いている。


「あ、荷物とってくるね」

「あかり、荷物あったの?」

「そうだね」


 そういって、れむから離れる。

 さうと合流してしまうと、れむとも一緒に三大華をずっとみてくることになりそうだ。

 でも、わたしがいなくても二人でみてまわってもいいだろう。

 そう思って、私物が置いてある教室に向かう。


 基本は、部室集合部室解散でもよくて、クラス展示は、三日めだけ全員で揃えばいい。

 けれど、荷物をわけてしまった。

 クラスの仕上がり具合が、朝気になってみにいったのだ。

 教室に入っていく。


 わたしたちのクラスは、スポーツ系の部員が多く、文化部の生徒と一部の生徒会や文化祭委員に選ばれた者以外は、消極的だった。

 そのため、その一部のやる気の生徒たちにある程度まで任せてしまい、決まって展示される内容は、少しマニアックともいえた。

 任せた部分があるため、わたしはバイトにでられてよかったともいえる。


「あ、あかりさん。今日は受付入ってないよ」

「うん。荷物あるから」

「荷物は、あの仕切り向こうね」

「はい」


 クラス展示は、青春輪回曇モンスターと名付けられた。

 美術の分野なのだけど、一部星や宇宙、深海という仕掛けをつくり、輪廻は曇り空というメッセージが、いろんな部分でみられる。

 発案者のひとり男の子は、深海をテーマにしたらどうかと言い、宇宙の生徒ともめていたけれど、教室に入ってみた絵と水音、それに窓からの演出は、わたしもこの男の子に任せてよかったと思うほどだ。


「それなりに入ってるね」

「スポーツの生徒たちは、あまりよくわからないって言ってたよ」


 暗幕でみえなくされている部屋の向こうには、ひとがいるため、こちらの荷物と更衣室の部分でコソコソ話す。

 照明も暗くしてあるため、ライトで集計をみると、まだ始まったばかりにしては、いいほうだろう。

 少しだけ話したあと教室をでて、廊下を歩くと、すぐに首あたりに手を回された。


「きゃっ!!」

「……そんなにびっくりした?」


 みると、れむだ。

 後ろにさうもいる。


「どうしてこっちにいるの?」

「尾行したの」

「えぇ!」

「さ、いきましょ」

「ちょっと……」

「高校生の文化祭、楽しもうよ」

「そうそう!」

「はぁ二人でいけばいいのに」

「わたしはあかりにもみてほしいな」

「ぼくは、あかりさんがいるといいな」


 よく手元をみると、さうが御守りをもうひとつ持っている。

 さらに、れむもある。


「それ……」

「はい!」


 どうやら、れむとわたしの分の御守りまで買ったらしい。


「なんでそんなに気合い入ってるの……」


 あきれるしかない。

 一応、りーちゃんとそらくんに、文芸部の案内は渡したけれど、来るかどうかは聞かなかった。

 わたしの書いた短編も、どちらかというと、読むためにというよりも、わたしの気持ちだけのものにしてしまった。


「まずは!」

「屋上!」

「次に」

「ダンス?」

「ダンス部の中間時間で、踊れるらしいよ」

「まじやめてほしい」

「ホント灰色」

「高一受験なため」

「それは、このイベントのあとでね」


 妹に、案内を三部渡してみたけれど、妹からいまのところ連絡はない。

 くるとしたら、土曜日だとは思う。


 三日間あるうち土曜日が一番混むけれど、日曜だと、もう売り切れやイベントの内容が変更されてしまうこともあるのが、よくあるらしいと先輩たちが言っていた。

 そういえば、妹と休日にでかけたのは、どれくらい前だろう。

 来るとは言っていなかったけれど、最近妹からは、よくお報せのような短い話しが通知されるようになった。



 三大華。


 屋上のフラワースタンド、生花を華道部中心につくったらしい。

 剣道、柔道も一緒に制作するのは、柔よく剣の道も華からという、まるで三者をあわせた言葉から、らしい。

 空手部や弓道部は、はずれたおかげか、文化祭では、別のものに参加しているらしい。


「こっちのなかなか色が細かいね。花も小さなものばかり」

「それは柔道部が主にだって」

「こっちのは、器可愛いらしいね」

「そっちのは、剣道部だって」


 それじゃ、と真ん中に大きく堂々としたみるからに立派そうなのが、華道部らしい。


「部活のイメージと随分と違うんだね」

「新鮮……かも」


 屋上が開放されて、自由に散策できるのは、文化祭のいいところだ。

 幸い曇ってはいるけど、特別な理由や許可がない限りは、屋上に上れる機会は少ないため、たしかにここからの眺めはいい感じだ。

 ここの屋上の展示では、入場料はないものの、台に気にいったら収めるアンケートと簡単に受付があり、そこで、いま展示されている花の写真を買える。

 ほかに道ができていて、真ん中の通路に花束も買えるようになっている。


「恋花束だって」

「友花束もあるよ」

「なんかバレンタインみたいな……」

「しーー。そういうのは言わないの」

「そうだよね」


 でも、それぞれ企画がある辺りは、屋上でのみどころにもなっているらしい。

 わたしたちは、花のアンケートにだけは応えてみた。

 帰りの通路でにこやかに、手を振っているのは、男子柔道部員らしい。

 胸に花の飾りをつけている。


「花たくさんだったね」


 屋上から降りていくひとたちは、みんな花の話しをしながら、降りていく。


「次は、体育館?」

「ダンス部はいいの」

「いまの時間は?」

「ちょうど休憩時間になってるよ」


 それじゃ、観にいってもだれもいないだろう。

 降りて体育館に向かう間も、廊下や階段でいろんな勧誘をうけてしまう。

 あまりに必死な部活もあり、少し怖くなってしまう。


「あかりさん平気?」

「なんとか」

「勧誘こわい」


 いやこわいといいつつ、わたしたちの文芸部もそれなりに、宣伝しないといけないのではないかとは、思ってしまう。

 体育館の前につき張り出されているスケジュールをみると、いまから始まるのは、バンド結成三か月にして、名前が四回も変わりましたと書いてある。


「これ仲良いのかな?」

「仲わるいんじゃない」


 一応ただでもらえるチケットを受け取り、なかに入ると、前のバンドの写真会がまだ続いていた。

 前のバンドボーカルがイケメンだったらしいと、話し声が聴こえる。


「バンドは歌だよね」

「歌より顔だよね」


 こうまでファンがわかれていて、この先平気なのだろうか。

 だんだんと前の観客が帰りはじめて空いてくるため、前に向かってしまう。

 今度のバンドは、女子三人に男子ひとりの編成で、ボーカルは女子らしい。


「ギターの男子やけにかっこいい」


 さうが珍しく、男子に眼をやっている。

 ほかの女子三人は、帽子やサングラス、眼鏡など小物があり、顔がはっきりしない。

 観客もまだそんなに入らないのに、そのままMCもなく始まってしまう。

 サウンドは、かっこいいし、ボーカルの女子生徒は、素直にいってとても可愛らしい声だ。

 始まってから、観客が増えてきたように思うけれど、わたしたちは前列なため、あまり後ろがわからない。

 これで、なんで名前が四回も変わったのか不思議だ。

 体育館に歓声が響き、それが終わってから男子生徒が話しだす。


「ほかのメンバー三人は、恥ずかしがり屋で話しをほとんどしないため、ぼくがしゃべります。バンド会場のアンケートにこちらの名前を書いてくださいね。もう一曲だけいきます」


 聴けてよかった。

 なかなかひとが動かないなと思ったら、写真サービスもなしで、そのまま下がったらしい。

 けれど、メンバーがまたでてこないか、待ちになっていたようだ。


「いこ」

「う、うん」

「どうしたの?」

「うん」


 みると、れむが泣いていた。

 演奏で感動して泣いているのをみたのは、はじめてだった。


「れむめっちゃ泣いてるね」

「うるさい! 男子」


 通りすがりの男子にからかわれている。


「お昼だね。れむお腹すいてる?」

「まって……」

「お腹すいてるって」

「代わりに言わないでよ」


 校庭にでると、すっかり屋台が敷き詰められている。

 ダンス部はどこでするのだろう。

 お昼は、屋台デザートにして三種類用意した。


「あんまり種類ないんだね」

「許可もらうの大変だって調理部が話してたよ」


 さうは、いったいどこでそんな話しばかり、聴いてくるのだろうか。

 あまり座るところは空いていないため、どこにしようかと、少し歩きまわり、校舎の近くにテーブルが広がっていたため、そこで荷物だけ集めて食べはじめる。


「さうは、それで平気なの」

「デザート好き」

「いいよね」


 れむがスマホで写真を撮る。

 いくつか通知がきていたため、チェックすると、クラスのひとたちの文化祭の様子がいくつかわかる。

 ほかは、そらくんから楽しめてる、とひとことあった。

 れむとさうと、写真を撮りそれを送る。

 午後に一度、お店番があるため、ここでさうとわかれて、れむと歩く。


「さうは、ダンスかな」

「わたしたちとまた集合って言ってたよ」

「わたしはいいけど、れむは、あとでさうとまわればいいのに……」

「えぇ! さうと踊れっていうの?」

「踊れとは言ってない」

「じゃ」

「踊ればいいよってこと」

「あかりってけっこうニブいよね」

「え、直感で生きてる感じ」

「自身に関して、めっちゃニブいとおもう」


 れむが教室の前で、なぜか注意するようにいう。

 そんなことは、ないと思うんだけどな。

 そらくんのことを隠しているから、そうみえるのかもしれない。

 でも、れむには、言っても内緒にしてもらえればいいと思うけど、さうは誰かに、言ってしまいそう。

 隠しておけるなら、そのほうがいい。

 それにそらくんのことは、まだいい。

 りーちゃんのことは、できる限り周りに、知られてはいけない。



 お店番の間、まだにぎやかな隣の縁の御守りの列から、話し声が聴こえてくる。

 たしかに恋に効くなら、それなりに人気になるだろう。

 けれど、高校生の子たちがつくる手作りの御守りで、そんなに伝説になるほど、効果などあるだろうか、疑問だ。


「これそんなに人気なんだね」

「あかりは、信じてないんだ」

「信じてっていうか、神社で買ったわけでも、なにか魔法がついてるわけでもないし」

「さうは、信じてるんだと思うよ」

「れむは?」

「わたしは、けっこう信じるけどね」

「そんなもんかなぁ」


 いままでの経験から、健康や受験の御守りを買ったことはある。

 けれど、いってみれば少しの安心くらいで、それが頼りなくても蹴飛ばしもしないし、当たっていても、それのおかげとまでは、思わないでいる。


「あかりは、もっと恋とか友情とか、興味くらいはもってもいいんじゃないかな」


 ようやく何名かお客様がくるため、少しだけ販売をする。

 そのため、れむの話しは、途切れてしまう。


 文芸誌が少しずつでも減るのは、とてもいいことだし、それが隣の魔術だか、御守りだかの効果でもいいのだけど、わたしが想うのは、別のことだ。

 もし、さうが一緒にいたいのが、れむで、れむのために、御守りを買ってきたのなら、わたしのはついでだ。

 そしたら、れむと長くいたほうがいいし、二人が付き合えば、わたしは簡単にいって邪魔者になってしまうんじゃないかな。


 それでいくなら御守りの効果はあっても、三人でこれまでのように、お昼を一緒にいたり、部室に集まることは少なくなるかもしれない。

 そらくんに無理言ってでも、翠華祭に来てもらえばよかったかもしれない。



 文芸誌は、何度か買われていった。

 お店番も一日めのは、これで終わりだ。

 けれど、午後の空き時間にさうと合流しても、ダンス部の時間は合わなかった。

 席も埋まってしまっていて、入れなかったのだ。


 なんとなく、二人の会話の間に入りずらくなり、一日めの放課後に部室で集まったときも、その帰り道も、あまり積極的には話さなかった。


 この三日間は、翠華祭のためにシルバーは休みだ。

 アルバイトでも、入っていれば気が紛れただろうか。

 翠華祭、そんなに期待すらしていなかったけれど、夜の通り雨の音がして、まだ残り二日あるのかと、なんだか沈んでしまう。



 寝る直前通知がきたと思ったら、妹からだ。



 明日まだいけるかわからない。

 何時にお店番なんですか。



 うっかり時間を忘れていて、手元にお店番の時間割もなく、朝もう一度確認してから、返事をしよう。

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