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あい/抵抗  作者: 十矢
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アオイちゃんのバイトに遭遇

 「アオイちゃん、バイト?」


 いちおう聴いてみたけど、ゲームセンターでバイトっていう感じではない。


 むしろ、イメージは怪しい。

 ま、わたしが言えた状態でもない。


 でも、アオイちゃんのと違うのは、わたしはバイトではなくて、とりあえずのデートだけど、アオイちゃんは、バイトのはずだ。


 仮名さんが、荷物を置いて、ベンチに座るもなにも聴いてこない辺りは、少しは察しがいいひとなのかもしれない。


「うん。えとその」

「制服でなの?」

「あ、うん」


 アオイちゃんは受け答えも怪しい。

 なんだろ。

 高校の制服をきて、ゲームセンターにくるバイトってなんだろう。

 今度は、こちらに聴いてくる。


「デートしてるの?」

「まぁね」

「つきあってるの?」

「いやぁ、どうだろね」


 テキトーにごまかす。


「そっかぁ」

「あ、ラルルン、気づかなくて」

「うん。そうかも、て思ってた」


 なんだろ、やっぱりいつものアオイちゃんの感じではない。


 わたしも二年前の冬までは、制服をきていたのだから、みる限りは違和感ないし、それなら、わたしだってという気持ちもしなくもない。


「制服可愛いね」

「うん。あ、買いものしてたんだね」

「そうそう。買い過ぎてないかな。あとでアオイちゃんにも見せてあげるね」


 やっぱり、落ちつかないらしい。

 キョロキョロして、スカートからでてる足もミョーに、そわそわしている。


 あとで、問い詰めてみるかと想い、いまは、開放することにする。


「あ、わたしのとこ座る?」

「いい、いい。これから用あるから」

「うん。わかった。じゃね!」

「うん」


 眼鏡をなおして、さっていく。

 仮名さんが、話してくる。


「友だち?」

「うん」

「制服だったけど、年下の後輩とか?」

「いやぁ、違うんだけど、なんだろね」



 わたしは、ベンチに座って、歩いていくアオイちゃんを観ていると、そのうち、だれかよく知らない男の子と合流した。

 歳は同じくらいなひとな気もする。


 あちらもデートかな。


 でもそれなら、紹介くらいしてくれそうなんだけどな。


「デートかな?」

「うん。なんか違う気もするけどね」


 そのうち姿が見えなくなる。

 わたしは、バックからさっきのアクセサリーを取りだして、首にかけてみる。


「鏡ないよね?」

「そうだね」

「どうかな」


 細い二重のリングがあり、女の子っぽくも男の子っぽくもあるユニセックスなデザインだ。

 中に文字が彫ってあるのが、気になってこれにした。


「なんて書いてあるかな?」


 首元をみせながら、仮名さんに見るように促す。

 仮名さんは、首の近くまで手を伸ばして、指輪をさわる。


「one thing for you」

「どういう意味だろね?」

「あなたのために、でいいんじゃない」


 わたしは、そっかと想う。

 意外と気にいった。


「ありがとう」

「え、ううん」


 包装されていた袋を丁寧にたたむと、バックの手帳(ミニノート)にはさむ。


 スマホで、手にした指輪のネックレスを写真にとり、リリスタの画面をだすと



 "ネックレス、気にいったかも


 ひと言だけ、投稿しておく。

 仮名さんが、


「カラオケいく?」


 と訊いてきた。


「うーん。どうしよっかなぁ」


 カラオケは好きなんだけど、いまから入ると二時間計算で、二十一時過ぎてしまう。



 大学生としては、そんなにおそくはないけど、はじめて会った相手と考えると、気をもたせてしまうかもね。


「じゃ、軽く食べて、運動しよっか」

「あ、はい」


 仮名さんは、軽食の場所は調べてあったらしく、サッと立ちあがる。

 荷物を持ちつつ、歩こうとすると、さっきの自販機のところで、なにか落としものがあった。


 みると、カバンにつけてあったのか、ゲームでとったばかりなのか、小さめなお菓子のキーホルダーだ。


 アオイちゃんかな。


「さっきの友だちじゃないかな」


 わたしが、ひろった手元を見つつ、聴いてくる。


「うん。そうかも」


 わたしは、手に持ったまま、写真をとり、

 ラルルンで、その写真を載せておく。


 "落としもの


 ポケットにしまうと、また歩きだす。


「運動はどうするの?」

「ジムもいいけど、ま、散歩かな」



 ゲームセンターから、少し歩いてみた先、交差点近くのRottajan(ろったじゃん)バーガーがあった。


 通称は、ロッタだ。


「ここでいい」

「うん。いいわよ」


 店内に入ると、夕方過ぎの時間でも、まだ混んでいた。

 二人で並び、カウンターでてりやきと、お好み焼きバーガーのセットを頼む。


 飲みものは、ホットコーヒーにした。


「混んでるね」


 席を探して、二人がけ席に荷物を降ろして座る。

 わたしは、つけたアクセサリーがまだ気になるため、指でときどき遊んでみる。


「ふぅ」


 注文したバーガーを食べる前に、わたしは話す。


「今日はありがとうね」

「いいえ。こちらこそ」

「おごられてばかりだね」

「気にしなくていいよ。大学生でしょ」

「バイトはしてるよ」

「ふーん。でも学費でしょ。きついよ」


 どうやら、サラリーマンではあっても金銭面では、それなりに話しはあうらしい。



 わたしは、リリスタに少しだけ、感想を投稿しておく。



 "軽食でひといき

 まぁ、楽しめた

 そういえば、大学生の子みかけたけど、

 あれはなんだろ



 ラルルンからの返事はまだこない。


「ねぇ」

「あ、なに?」


 少し真剣な表情に、不思議におもう。


「また会ってくれないかな?」

「え、うん。会うのはいいよ」

「ホント!?」

「でも、次の予約入ってたかな」


 わたしは、リリスタに入ってくるメッセージをいくつか見てみる。


「うん」

「もう、知ってるとは想うけど、山極(やまぎわ)さん」

「うん」

「わたし、他にも連絡してるひとはいるんだよね。バイトの空いてる日はうまりがち」

「そっか」

「ま、また合うといいけどね」


 相手の山極さんは、飲みものを一口飲んだあと、置いてこちらをみる。


 失敗かな、とわたしは想う。


「ねぇ、もう少し真剣に、遊ばない?」

「真剣って?」

「だから」



 それから、バーガーを食べながら、しばらく山極さんの意見を聴いてはいたけど、あまり関心なかった。


 わたしは、こんなもんだ。


 きっと、ずっとだろう。



「じゃ、また会ってね」


 お店をでたあと、買いもの袋を渡されて、

 笑顔で言われる。


「あ、うん」

「ありがとう。じゃ」



 丁寧なひとではある。

 買いものと、夕食もおごってもらえた。

 このひとならキスくらいは、わかれ際に、してもよかったかもしれない。



 でも、わたしは恋愛よりアオイちゃんの不思議なバイトのほうが気になっていた。


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