あなたのフォロワー
登録名、アオイちゃんは、なかなかの美人だ。
少し肩にかかるくらいの髪をアッシュグレーに染めている。
服装は、少し短いスカートにパンツをはき、上は肩だしのシャツに薄いパーカー。
パーカーのフードは猫耳で、眼鏡姿。
猫耳が、ミョーに可愛らしいな、と想っていたら、眼鏡をはずしてケースにしまう。
さらに素の表情になると、あれ、けっこうわたしの好みじゃん、て想った。
「ゼリーありがとう」
お礼を言ったあと、なぜだか、じっとわたしの顔を観られてしまう。
そして、向かいの席に座る。
「ううん。いいの」
「あの」
「顔色、まだ悪くない? 起きたときからなの?」
もしかして、と思いつつ聴いてみる。
「それで、ゼリー買ってきてくれたの?」
「いやー、わたしがこの時間お腹すかないだけ」
笑顔でそう話すも、テーブルに置いた袋には、残り二つプリンと、簡易スティックの食べものがある。
「アオイちゃんは、クラス重なってたかな」
「一年時に少しと、二年はけっこう見かけるよ」
「そう」
コーヒーを片手に飲みつつ、ゼリーが何故か、おいしそうに見えてきて、差し出されたプラスプーンを受け取り、それを食べはじめる。
「みかんと、いちごと、ぶどうで」
「うん」
「みかんにしたけど、いちごのほうがよかった?」
「ううん。みかんでいいよ」
「そう」
急にアオイちゃんは、スマホを取り出してポチポチする。
興味なかったかな。
みかんゼリーを食べおえて、あわないとは思いつつコーヒーを飲む。
ちらっとみると、向かいのアオイちゃんはにやにやしていた。
「ごちそうさま!」
アオイちゃんは、いちごのゼリーを食べはじめる。
わたしもスマホをだそうか迷うも、やっぱり気になってしまい、訊ねる。
「ねぇ。プリンにスティックもあるけど、食べるの?」
「え、うーん。あなたは、食べられそう?」
「わたしは、ゼリーだけでいいや。プリンも好きなんだけどね」
「わかった。持って帰ろっかな」
ゼリーを食べおわると、またスマホをポチポチしている。
あまり、興味ない話しなのかな。
「あのラルルン、登録したけど」
「あ、うん」
「特に、意味ないから、削除してもいいし」
「いやいや、せっかく話すきっかけできたし、話そうよ。送るよ!」
「いや、でも、そんなわたしに興味ないでしょ?」
「えーー! わたし、そんなに軽いかな。けっこう話すのに、緊張したんだぞっと」
わたし、ここまで聴いて、改めて聴いてみる。
「えと、じゃ、もしかして、ゼリーはやっぱり買ってきてくれたのかな?」
「う、うん! その、話したくて」
「でも、なんで。具合悪いけど、そんなののために?」
すると、なぜかスマホの画面を見せられる。
よくわからないまま、みるとリリスタの画面だ。
「て、わたしのじゃん。なんで知ってるの!?」
「ふへ。当たりだね。ポチ」
「なに?」
スマホをだしてみて、わたしの画面を確認すると、Rスターというリリスタの拡散機能で、わたしの知ってるアーティストの新情報が、表示された。
「まさか、フォロワーさん!?」
「そうね。お互い。しかも会話もしたかも?」
「マジデ!!」
「マゾリカマルマンジ」
「だれよそれ!?」
「え、知らない?」
それから、どれくらい前からだったのか、そしてマルマンジとは、何者なのかについて、体調不良のなか、笑って話してしまった。
その日の午後の講義は、ゼリーのおかげで乗り切ったけど、バイトは無理で、休むことになった。