アイを Iにかえよう
「そらくん、覚悟してくださいな」
「なにをです?」
「わたくしたちの、今後が決まってしまいますわ」
「りーちゃんに、計画性って存在しましたっけ」
「まぁ。失礼なかたね」
そらくんとのでーとの最中に、お店の前で、そらくんと話している。
季節は、もう秋になりつつあるけど、まだ日差しはゆるまず、気温三九を記録。
「たしかに、入るには、少し覚悟が……」
ジュエリーヴァリテルという看板があり、少しのぞくショーケースには、ダイヤモンドやエメラルド、アメジストが並ぶ。
「そらくん。設定は、覚えていますわね」
「婚約指輪を買いにきて、ケンカするふたり」
「違いますわよ。婚約するために、指輪とネックレスがいいか悩み、予算を話しあう二人ですわ」
「誕生石は」
「ペリドット」
「でも、りーちゃんが知りたいのは」
「このネックレスのダイヤモンド」
理音の首にかかるダイヤモンドは、推定3.0 ct、百万以上で、でも、鑑定にだすのはためらっていたところ、そらくんがジュエリーショップで、参考価格をみてこようとなったのだ。
せっかくの宝石を観にいくのだから、そらくんの予算の範囲で、ペリドットのネックレスか指輪も探してみる。
「いらっしゃいませ」
そらくんの腕に、めいっぱい胸を押し付けて、店内に入る。
そらくんは、左側から周ろうとするため
「あ、キレイ」
と言いながら、腕を放してあげる。
理音は右側から、店内をみていく。
小さめのペリドット、指輪のルビー、ピアスのアメジストやトパーズ。
そらくんが、いくつかのショーケースの前で、とまると、ショップ店員さんが、
「なにか、お探しですか?」
と声をかけている。
理音は、ダイヤモンドのネックレスや指輪をみてみるけれど、サイズをみると、1.0 ctから1.5 ctほどの大きさだ。
「誕生石で、ペリドットか……」
とそらくんが説明しているのが聴こえてくる。
「それでしたら、こちらにありますね。ネックレスとか、ピアスとかありますが、どちらがよろしいのでしょうか」
店員さんの接客をうける、そらくん。
理音は、ダイヤモンドを中心にみてまわると、やはり1.5 ctのものが最大のようだ。
「そうなのですわね」
ほかにも、いくつかの種類をみたあと、そらくんの近くによる。
「そらくんは、どれがいいのかしら?」
「えと、ペリドットのネックレスかな」
そらくんの前のショーケースのなかには、
少しサイズは小さいものの、雫型の枠にペリドットが収まっている。
「そうね」
そらくんとちらっと、眼をあわせると、予算で大丈夫そうだ。
カウンターに、それをだしてもらいつつ、話しを進めていく。
「その他に、ダイヤモンドのホワイトチェーンので、少しおおきめなのが、いいのですけれども」
こう話すと、こちらです、とペリドットのをだしたあと、案内されたのは、先にみていたケースのところだ。
「もし、よろしければ」
こういいつつ、店員さんがショーケースから、ダイヤモンドのネックレスをだしてくれる。
「はい。なんでしょうか」
「こちらをご覧ください」
カウンターには、小さめ粒のダイヤモンドが二つ置かれていて、カットが違うようだ。
「ブリリアントとハートキューピットで、かがやきが違うんです。どうぞ」
ルーペを手渡され、なかのかがやきをみる。
わたくしは、本格的な受け答えで戸惑いつつ、ルーペでみると、たしかに光の入りかたや表面にでてくる光の観え方が違うように感じる。
「わぁ!」
「こちらですね」
そばに置いてある説明書きを今度は、みてみる。
少し眺めたあと、思いきってきいてみる。
「ショーケースに並ぶのは、1.5がおおきいですけれど、3.0以上のは、ございますの?」
この女性店員さんは、少し驚きをみせたあと、
「お待ち下さい」
カウンターのなかに戻っていく。
少し待つ。
「ただいまご用意できるのは、そちらにある1.5ですが、3.0のものをお探しですか?」
わたくしは、そらくんと眼をあわせて、うなづいてみる。
「ええ」
「婚約指輪などでおつかいですか?」
「いいえ。ネックレスで探しているのですが」
「そうですね」
少し店員さんが考えこんでいる。
不安になり、そらくんがたずねる。
「およそ、値段などわかりますか」
「そうですね。目安になりますが、こちらですね」
表示をみせてくれたのは、ネックレスのダイヤモンドで、0.5と1.0のものだ。
「現在このお値段ですので、これの三倍ほどで、あるという目安ですね」
「う〜ん」
「もし、よろしければ」
女性店員さんが、ポケットから名刺と、それに販売のバイヤーの説明会のことを教えてくれた。
少し、店員さんがカウンターに戻ってなにかを確認してくれている間、理音は話す。
「三百万以上ですわね」
「カットや品質でもっと上かも」
店員さんが戻ってくると、次回の説明会の日付などを教えてくれた。
丁寧にお礼をいってから、ペリドットのお会計をすませる。
お店をでるときにも、その店員さんである高宮さんは、笑顔でこたえてくれた。
「ふぅ。なかなかキレイなかたでしたわ」
「うん」
「三百万以上ですわね」
理音は、自分の胸元に手をもっていく。
そらくんが、少したちとまったあと、聴いてくる。
「そのネックレス、りーちゃんが受け継いだものなんですよね」
「そう」
「そんな高価なの、教えてもらっていうのも気が引けてしまいますが」
「ええ」
「かなり大事に扱わないと。なくさないように」
「ええ」
「でも、いまのりーちゃんなら、買えるのでは」
「あら! そらくんが、買ってくださるものかと」
「え! それは、くっ。あ、あと、五年は待ってくれると……」
「ふふっ。冗談ですわ。これは特別」
「えっ」
理音は、そらくんが買ったばかりのアクセサリーの入った袋を落とさないように、そっと、肩に手を置いて、頬にキスをした。




