偽りのスベテのアイ
目が覚めたときには、ベットで下着姿のりーちゃんが、ブランケットにくるまり隣で寝ている。
て、おい。
まずいでしょ。
なんて格好。
いや、いい写真チャンスなのでは。
もしかして、貴重な一枚として、今後わたしのお宝になるのでは。
わたしは、そーっと、ベットのそばにある机に手を伸ばす。
スマホを手繰り、充電コードをはずす。
「まだ、起きてない」
カメラモードにして、写真を撮ろうとすると
「アイ、起きたの?」
ババッと、スマホを背中に隠すと、
目をあけるりーちゃん。
いいや、と罪悪感を捨てて、わたしは、スマホを構えて写真を撮る。
「う。なにするの」
「りーちゃん、寝起き写真」
「ふふっ。アイ寝ぼけてるのね」
「寝ぼけてるのは、りーちゃんなのでは」
「そうかしら」
「うふふ」
「ふふふ」
うまく誤魔化せたわ。
「朝ごはん」
「えっ」
「どちらがつくりますの」
「りーちゃんは、自分で作れるの?」
「まぁ。ひとり暮らし配信者ですのよ」
「そうでした」
「それとも、このまま仲睦まじく、いやんなことしますの?」
「いやん、て」
「アイが、服を脱げば、それでわたしたち、始まりますわね」
「おいおい」
りーちゃんの顔は、まだ眼がトロンとしていて、まだ夢のなかにいるようだ。
「もう一回寝る?」
「えっちですのね。アイは」
「そんなこと、言った?」
「あら、寝るイコール、えっちと教わりましたけれども」
たしかに、そうだけど、そうだけども。
「りーちゃんは、百合なの? 興味あるの?」
「愛に興味のないひとなど、いませんことよ」
「いまの、 "愛" は、真実の愛? それとも、偽りの "アイ" ?」
「貴女のことよ」
「そらくんがいるじゃん」
「あら。そらくんをここに呼びますの?」
違うと言いたい。
「そらくんと、裸のお付き合いは、まだ、早いですわね」
「わたしなら、いいの?」
「ええ。貴女なら、そして、貴女次第よ」
「重くない?」
「わたしの体重は軽いかと」
「愛のことよ」
「貴女は、太ったのかしら?」
「それも違う」
「それは、アイのこと? 愛のこと?」
「はぁ。アイめ。ややこしいなぁ」
「貴女は、 "アイ" で、そして、わたしたちの間にあるのが "愛" で、想いは "愛" で、重たい "アイ" に、わたしは惹かれていますわ。いや?」
「まてまて。あいがごった返してるわ。変換追いつかないんだけど」
「アイたす愛いこーるあいで、あまり逢いで、秘密 "アイ" ですわ」
「もう。理解ったわよ。みんな話すから、全部話すから、 "あい" の変換で遊ばないの」
「ふふっ。秘密教えてくれるのね。それって」
わたしは、結果的にりーちゃんに、全てを話すために、ここに連れてきたのかもしれない。
あのときの ”アイ" のやったことが、わかった。
そして、 "スベテ" に、あの "ヒミツ" が含まれていないことが、わたしの全てである。
わたしは、朝食を準備する。
ベットに寝転ぶりーちゃんに、話しながら。
途中でりーちゃんは、下だけジーンズをはいて、わたしを手伝ってくれる。
テーブルに、朝食を並べて、食べはじめ、
片付けをしながら、
テーブルに、違うものを並べて、説明をしていく。
スマホには、リリスタの画面。
偽りのスベテを話したときには、
りーちゃんは、泣き笑いの表情をしていた。
「そんなこと、言われても、困りますわ」
「いや? それなら、わたしのこと捨てて」
「そんなこと言われたら、受け止めるしか、なくなりますわ」
わたしは、偽りを話したことを後悔なんてしない。
きっと、アイならそうしたから。
あのときのように。
「ふふっ。いきなりこんなこと言われても、困るよね? いいよ。ゆっくりで」
「え、えぇ」
スマホから、リリスタのいくつかを投稿していき、そのあと、わたしは、またベットに入ろうか迷う。
今日は、大学はないから、
急遽のレンタルバイトが入らなければ、ブルーの仕事もなしだし、一日りーちゃんに、時間を使える。
でも、りーちゃんはそうはいかないだろう。
配信者は、きっといそがしいだろうし、
仮にまた事務所のヒトに、いまの状態を観られでも、したら、スキャンダルで立場が、わるくなるかも。
早めに切り上げるか。
「あとは、わたしのカードの説明と、ここの合鍵をつくる。それに、銀行にひとつレンタル金庫もあるからね」
「そんなに」
「ま、覚えきれなかったら、もう一回聴いてね?」
「アイ、死にますの?」
「え。あぁ、そう想っちゃうよね」
「まるで」
「うん。そうだよね」
りーちゃんは、下を向いて、ベットに座る。
わたしは、あのときと一緒なんだと、考えてしまう。
前のアイの状況とよく似ている。
ベットに、再び横になると、りーちゃんは、そのキレイな顔のまま、たずねてくれる。
「アイは、なにかを抱えているのね」
わたしは、返事をできない。
「そして、わたくしに、重荷を渡そうとしているのでしょう?」
わたしは、返事をできない。
「いいですのよ。勇者に選ばれた魔法使いのように、わたくしに、おまかせ」
「ね、りーちゃん。りーちゃんって、男前だよね」
「わたくしは、それを勝負下着と呼びますわね」
「どういうこと」
「○ックスをする前に、お相手に、わたくしの姿を魅せつけて……二度と離れないように、網膜を焼き尽くす魔法じゃないかしら?」
「それ……よく理解る」
「ふふっ、今後アイがつかって」
わたしもベットに、寝そべると、りーちゃんの顔がすごく近くにあり、ホンの一瞬だけど、このミリロリ嬢というモンスター級配信者をわたしのモノにしたような錯覚をして、キスから支配をはじめてみようかと、本気で想ってしまう。
でも。
「わたしには、 "あい" がついている」
「なんですの」
「ううん。りーちゃん好きだよ」
「そらくんとアイで浮気しろと?」
「それも、いいんじゃん」
「ふふっ。たしかに、楽しそう」
甘くりーちゃんの首にキスをした。
四ヶ月後の猛暑の一日。
アイが行方不明になった。




