表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あい/抵抗  作者: 十矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/101

ラストバトル?

 社長は、スラッとした長身。

 グレーのパンツスーツ。

 少し高さのあるパープルのヒール。

 アイシャドウと、薄くピンクの口紅。


「ミリロリ嬢、お久しぶりね」

「えぇ、事務所の契約手続き依頼かしら」

「すっかり、トップにまでなっていて、わたしは驚きよ」

「それは、わたくしと、それに皆様の応援がありますから」

「それで、今回の用件は。きたからには、なにかあったのかしら。それに、この隣のひとは」

「あぁ、紹介しますわね。わたくしのいまの恋人であるアイですわ」

「アイです」


 アイは、頭を下げてから、イスに座る。

 それぞれ、イスに座ったところで、社長が話す。


「これは、驚きね。まぁ、女の子同士も珍しくないけれど、そのことなの?」

「いいえ。違いますわ。実は、今日のスケジュールが、外部に流出していて、それで、アイと一緒にいるところ追いかけ回されましたの」

「追いかけられた?」

「そう。朝からですわね」

「少し待ってね」


 社長は、その場で持っていたバックから手帳とスマホをだして、机に置く。

 手帳をみながら


「配信者のスケジュールとプライベートは、ほぼマネージャーに任せていて、あるのは、連絡先くらい、かしら」

「でも、社長もご存知ですわよね」

「さぁ、なにかしら」

「わたくしたちのスケジュールなどの情報が、どこかに漏れているのでは」

「それは、ないはずよ。たずねるけれど、あなたが、ご自身では、心当たりはないと」

「ありませんわね」

「ふぅ」


 社長は、一度、視線をはずして、少し長くなっている髪をかきあげる。

 少しだけ、窓に目を向けたあと


「もしかしたらと、確認だけはしないと」

「え」

「ここ数ヶ月、不審な電話や事務所あてのDMで、怪しいメッセージが届いているの」

「ええ」

「その大半はいたずらやセクハラ、プライベートを聴きだそうとしたり、ということがあるわ」

「はい」

「ミリロリ嬢が、直接狙われているってことでいいのかしら」


 アイがうなづく。


「はい。わたし、動画も撮ったのですけど、お見せしましょうか」

「いえ。動画は、まだ」

「なぜ」

「わたしが、言ってそれだけの話しじゃないでしょう。警察にいくのか、弁護士になるのか、とにかく、マネージャーとそれに、何名か、まずは確認をしてみて、それから、照らしてみましょう」

「この動画は、どうしましょうか」

「ミリロリ嬢の、あなたの個人フォルダが、たしかあったわよね。それに、保存しておいて」

「わかりましたわ」



 席を立ち、社長は窓ぎわのパソコンに近づいていく。

 起動させると、いくつかのファイルを表示させた。


「電話かけてくるわ。もし、気になるファイルあれば、みていいわよ」

「はい」


 そのまま、歩いて部屋からでていく。


「ふぅ」

「ねぇ、これ」

「ええ、気になるわね」


 社長が表示させたものは、

 防犯カメラの映像と、いくつかのメッセージファイル、そして、社長のプライベートファイルのなかに


 "マネージャーおよび、事務員の動向予備調査"


 とあった。


 電話をおえて、また会議室に戻ってくる。


「いま、あなたのマネージャーと担当事務員、それと、わたしの秘書に、連絡だけはしたわ」

「あの。社長」

「なにかしら」


 アイが思いきってきいてみる。


「プライベートのなかに、予備調査ってありますけど、なにかあったのですか」

「それね」


 少し言葉をきって、考えているようだ。


「ミリロリ嬢は、覚えているかしら。消失事件」



 会議室のイスに座りながら、社長は話しだした。


「同時アカウント凍結」

「そうね」

「あのときは、配信者の不手際で、脅迫されたってことになって、事務所対応としても謝罪したわ」

「ええ。それで、対応アカウントのいくつかをしばらく凍結指示したのですわね」

「でも、それは、ただの(おもて)の対応なのよ」

「表と裏がありましたか」

「リスナーのひとりが、配信者にひどく暴言を吐くようになり、それで怖くなって、話し合いをしている際に、個人情報が流出。これが表の対応よ」

「それでは」

「実際は、事務員がわに、配信者にいたずらをしかけている人かいるらしいの。しかも、いたずらというの悪質なものね」

「そう」

「その事務員が、相手に配信者の情報をあげていたの」


 アイは、ミリロリ嬢と、顔を見合わせてしまう。


「それでは、わたくしの今日の情報、もしかして」

「えぇ。調査はしてみます」


 社長の眼をジッとみる。

 まるで、嘘情報というわけではなさそうだ。

 社長の電話が鳴りだし、ごめんなさいね、と言って電話にでる。



「ねぇ、アイ」

「うん」


 二人して、パソコンのそばにあるイスに座り、電話の社長に聴こえないように、話しをする。


「ヤバいですわね」

「えぇ、ヤバいね」

「マジで、マネージャーか関係者ですわね」

「そうね」

「わたくし、アイたちのこと、誰にも相談していませんわ。スケジュールだけ、マネージャーに提出したの」

「うん」

「だから、尾行してきた二人組は、これは、もう事務所関係者か、雇われた誰かさんと」

「シーッ」


 社長が、電話をおえて、戻ってくる。


「マネージャーだわ。いま上の階にいっているから、降りてくるわ」

「はい」


 アイとミリロリ嬢が、だまってしまったからだろう。

 社長が、ふっと笑う。


「ミリロリ嬢は、よくやってくれてるわ。むしろ、配信者ではなくて、アイドル部門でもよかったのかも」

「こちらに、アイドル部門があったのかしら」

「えぇ、一度だけね。けっこう前になるわね」

「あの。マネージャーがくる前に少しだけ」

「なにかしら?」

「ミリロリ嬢が、尾行されて配信でも、危ないめに遭っているのを、社長はホントに知らないのですね?」


 アイが、真剣に問い詰める。


「そうね。あなたたちが、つきあっているのもふくめて、知らないわ。いまは、理解しているわ」


 アイは、胸にあるネックレスをぎゅっとつかんだあと、うなづく。


「わかりました」



 アイは、スマホを取り出して、連絡をする。

 ミリロリ嬢は、窓の外を眺める。

 ホンの少しの時間だけ、三人がだまっている。



 コンコンコン。


「入って」

「はい」


 マネージャーは、社長よりは、背が低めでグレーの長めスカート。

 少し色があるシャツ、同じグレーの上着、

 後ろで少し長めの髪を束ねて、目は切れ長だ。

 イヤリングをしている。


「いそがしいところ、ごめんなさいね」

「いえ、社長。それより、電話の件ですよね」


 入ってきて、立ったまま話しはじめる。


「あ、窓のところにいるわ」

「ミリロリ嬢。配信いつもおつかれさまです」

「えぇ」

「それで、隣のかたは」

「ミリロリ嬢の彼女です」

「か、彼女ですか。お付き合いされていると」

「そうです」


 ミリロリ嬢が、やや照れている。


「そうですか。本来でしたら、プライベートですので、口だしたくないのですが、一緒に話しをしてもいいのかしら」

「アイにも、話しをぜひ」

「わかりました」


 ええと、と言って、マネージャーは、抱えていたバックを机において、手帳を取り出す。


「ミリロリ嬢に、尾行がいた、というお話しですね?」

「はい」

「いつからの出来ごとですか?」

「はっきり確認できましたのは、今日の一日。でも、前からハラスメントの発言や卑猥ネタ、少し脅喝もあったかと」

「事務所に報告は」

「何度もしましたわ。スクリーンショットも提供しましたし、スケジュールだって、添付しましたわ」


 マネージャーは、手帳を確認したあと、今度はスマホをだして、なにか確認している。


「ううん」


 マネージャーは、少し不機嫌そうに、考えている。

 少し化粧はしているものの、ミリロリ嬢より少し上くらいの年齢であろうマネージャーは、汗ばみつつ答える。


「尾行については、連絡ありがとうございます。すぐに確認します。スケジュールのは、届いてますね」

「はい」

「それで、卑猥なネタや脅喝については、わたしのところには、来ていません。社長は」

「わたしも、それはいま聞いたわ」

「そうなんですね」


 アイは、少し不自然さを感じていた。

 このマネージャーは、なにか、隠している気がする。


巻瀬(まきせ)さん」

「はい」

「わたくしのスケジュールをご存知なのは、マネージャーだけですか?」

「いえ。あと、事務員にデータを渡したのと、もしかしたら、入力は」


 そういったあとで、マネージャーの顔が、険しいような気がする。


「あの、なにか」


 急に、スマホをとりだして、

 だれかに連絡しているマネージャー。


「事務員のひとりが、体調不良がおおくて、それで、入力作業をお願いすることがあるんだけど、そのひとあまりよくないのよね」

「え」

「以前、喫茶店かな、でいたひとで、だれかのファンになることがおおくて、よくチェックするって」

「そんなひとが」

「仕事はできるひとよ。まだ、二十代かな」

「う〜ん」


 社長が、聴いてくる。


「そのひととは、ちゃんとコミュニケーションはとれてるの?」

「それが通常の会話は、あまりしない子で、メッセージアプリでなら、話しをしてくれる子なんです」


 アイは、少しいらいらしてくる。


 なんとなくの会話から、わかるのは、スケジュールの流出は、そのひとなのでは、と疑いたくなるけど、ミリロリ嬢やこの社長の前では、言いたくない。

 この社長だって、まだ信用していないのだ。


 ミリロリ嬢が落ち着いて、たずねる。


「それでは、わたくしの尾行と、それから配信の際のハラスメントは、対策してくださいますね」

「はい。任せてください」

「それから、アイさん」

「はい」

「あなたも迂闊(うかつ)な行動にでないように、してください。調査をした上で、判断しましたら、アイさんにも連絡しますので」

「わかりました」


 アイは、スマホの連絡アプリを開くと、社長に転送して、連絡先を交換した。


「あ、わたしのは、電話をお願いします」


 今度は、マネージャーと連絡先を交換する。


「では、お願いいたしますわ」


 その場を去るときに、

 扉の前で、丁寧にお辞儀をするミリロリ嬢。

 アイも頭をさげる。

 アイは、違和感が残ったままだ。



 事務所でも挨拶をしたあと、下の階までいき、そらくんと合流する。


「りーちゃん、アイさん」

「おまたせですわ」

「ど、どうなりましたか?」

「まずは、決着はつかず、といったところかしら」

「えぇ」

「でも、収穫もあり」

「そうなんですね」

「ひとまずは落ち着いて、どこか休むところは」

「あ、こっちです」


 そらくんは、待ち時間にビルのなかで、飲食店を探してくれていたようだ。


「ふぅ。アイ撮影した動画、送っておいてくださる?」

「もちろんよ」



 そらくんと、喫茶店に入る間、もう尾行はついていなかったけど、代わりに別の予感をアイは感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ