でーとと尾行
「アイさん」
アイは、りーちゃんに目配せすると、りーちゃんは、理解ってくれたようだ。
「このひと、誰ですの?」
「あ、その。待ってください。とりあえず離して」
「そらくん。静かにして」
「え」
「いいから。ミリロリ嬢もおとなしく」
「はい」
店内のBGMが流れるなか、三人は壁ぎわで、アイは、まだりーちゃんの手をつかまえている。
少しだけ、そのままでいると、アイはタメ息をついて、りーちゃんを離す。
「ごめんなさい。でも、急ぎだったの」
「アイさん。あの、連絡」
「ていうか、このかたどなたですの?」
「あ、説明」
そらくんが慌てて説明をはじめてしまう。
「あの、実はアイさんっていうかたで、今日一日なんていうんだろ、ガードしてもらってて、でーとなんだけど、一緒にきてもらってたんです」
「うん。よくわからないですわね」
「それより、さっきまで尾行されていたのよ。二人とも」
「え!」
「ゲームセンターかしら。誰かあわなかった?」
「いえ、だれも」
「入るところくらいかも」
「一度連絡」
「そう。そのあと、すぐに二人組が、ミリロリ嬢の写真とったり、ぐるぐるゲームセンターのなかを観察してた。ラルルン気づかなかったでしょ」
「あっ」
「それで、ゲームセンターから、少し離れて、観てたら、やっぱりいた」
これよ、とアイが見せたのは、
スマホで、遠めで撮った写真で、黒っぽい服を着て、メガネをかけた二人組が、たしかに、後ろにいる姿だ。
「だから、慌てて、あなたに送ったのよ」
そらくんが、慌てて走るようになったのは、アイからのメッセージを見たからだった。
「それで、その二人は」
「たぶん、ここの入口で見失ったはず」
二人は、ふぅ、とタメ息をつく。
「少し、このビルで様子見ましょ」
「はい」
自販機から離れて、階段に向かうと、その壁に案内表示があった。
どうやら、商業施設らしく、一階奥がゲームセンターとスーパーがあり、二階以降に、ショップが入っているらしい。
「あ、ミリロリ嬢、はじめまして。アイです」
「えと、はい。ゲーム配信しておりますミリロリ嬢でございますわ」
「普段は、なんて呼ばれて」
「普段は、りーちゃんですの」
「わかりました。りーちゃん」
そらくんが、心配そうに、ビルの出入りを見張っている。
「いきましょ。そらくん」
「はい」
りーちゃんは、気分は戻ったようで、階段をあがっていく。
「アイさん」
「なに」
「ごめんなさい。尾行、あったんですよね」
「気にしないの」
「ありがとう」
「それより、デートの邪魔しちゃったわね」
階段の真ん中で、りーちゃんがとまると、くるっと振り返る。
「ありがとう。ずっとみていてくれたんでしょ」
「ええ」
三人で、階段をあがりながら、話す。
「それで、つけてきていたのは、何者です?」
「たぶん、わたしの事務所関係ですわ」
「ミリロリ嬢の事務所?」
「だって、今日のスケジュールはマネージャーと、社長、それに一部の所属関係しか、話しいかないもの」
そらくんが、少し考えたあと、慎重に話す。
「それじゃ、配信のときに嫌がらせをしているのも」
「ええ、おそらく」
「でも、なんでそんなつぶしみたいこと」
そこまでいって、そらくんは、気づいたようだ。
「ごめんなさい。ぼくが今日待ちあわせなんて、提案したから、それで嫌がらせとか」
「いいえ。違うわ」
「なんで」
「だって、タイミングはそらくんと会ったばかりのときだけど、りーちゃんが、そんなミスするような配信者じゃないでしょ」
そらくんが、また考えてしまう。
アイが、少し息を整えながら、話す。
「とにかく、ここで少し遊んでるフリをして、あいつらにみつかってなかったら、わたしのバイトのところまで」
「いいえ。わたくしの事務所までいきましょう」
「え、いいの?」
「そらくんとのことは、隠しておきたいから、アイさんに頼むことになるかしら」
「それは、いいけど」
「ぼくも、いくとややこしいですよね」
「たしかに」
そのあと、ビルの三階にある、コメ四角喫茶店で、三人コーヒーと紅茶を飲み、手荷物を確認したあと、三十分ほどしてから、店をでた。
少しアイが確認をしてまわったあと、このビルをでて、駅まで歩く。
「アイさん、いけそう」
「わからない。いまのところは、いなさそう」
りーちゃんは、そらくんのうしろに隠れるようにして、手を引かれている。
アイは、二人の後ろを気にしながら、りーちゃんの後ろを警戒する。
「せっかくのデートなのに、じゃましちゃったわね」
「いいですのよ。アイさんのせいじゃなし」
交差点をこえていき、先の駅につくと、
ICカードで改札を入っていく。
「事務所は、どこの駅なの」
「あ、その前に、そらくんは、どうしますの」
「そうね」
駅のホームに続く階段の手前でとまり、壁ぎわによけながら、三人は話す。
「ぼくも、近くまではいきます」
「そらくんは、なかには入れませんよ」
「外で、平気ですよ」
「わかったわ」
ホームにあがり、すぐに電車がくるため、混んでいる電車内にのりこむ。
少し離れてしまうけど、りーちゃんとアイさんが、座りそらくんは二人の近くでたっている。
しばらくそのまま、駅を通りすぎて、
十五分程度で、目的の駅までくる。
「ねぇ、りーちゃん」
「なにかしら」
「もしかして、心当たりがあるの?」
「ううん。でも、なんかね」
言葉をにごされてしまう。
アイは、周りを警戒してみるも、まだ、あの二人は見かけない。
もう巻いたかな。
"新宿駅"とアナウンスが流れる。
「新宿もうすぐだよ」
「うん」
新宿駅につくと、
りーちゃんが先におりて、歩きだす。
配信事務所は、駅から歩いて十分くらいのところにあるらしい。
電車を降りるときに、ちらっと、二人組が、また姿をみせた気がした。




