ミリロリ嬢とストーカー
そらくんとの打ち合わせで、愛について語った。
いやそうだけど、しっかり打ち合わせはできたため、
そらくんとミリロリ嬢を会わせるためのさまざまな手段をつかった。
コスプレ喫茶のブルーの仕事もあるため、夏休みの間の課題と喫茶バイトとそらくんの依頼と、リリスタをしつつ、アイとして、ミリロリ嬢との話しを進めていた。
抵抗はあったものの、以前連絡したことのある "アオイ" であり、名前がアイとなったことを伝えると、りーちゃんは、すぐに連絡してきてくれた。
とはいえ、忙しいらしい。
アオイってアイじゃん、というやりとりのあと、短時間電話した。
「さん、に、いち、ミリ単位〜」
「いやそれ長いから、短くして」
「ちょっとぉ、最後まで、言わして下さいまし〜」
「はいはい」
「ミリ単位でみなさまのお心にお邪魔さま。そっと側に置いてくださいまし。ミリロリ嬢でございます」
「はやくち、あと前とちょこっと変わってない?」
「ときどき、変えてますのよ」
「へぇ」
「それより、アオイ、違う。アイ、おげんきね」
「えぇ、まぁ」
少し間があく。
「ごめんなさい。しばらく連絡とってなくて」
りーちゃんの声のトーンになる。
「そんな配信も歌にも、って忙しいでしょ」
「そうなんですけど、アイとはせっかく仲良くなったし、レンタルでお世話さまなのに、途中でリリスタチェックくらいしか」
「りーちゃんは、リリスタも桁違いだし、そんな、みんなにそれぞれ個別にお礼やコメント、返せないでしょ」
「でもぉ」
「それより」
「ええ」
わたしは、りーちゃんの話しも聴きたいのだけど、用件を先にする。
「アイのリリスタで、みかけたのだけど、そらくんと、あまり仲良くいってないの?」
「えっ、えと、投稿かしら。わたし、そんなの投稿したの?」
「ううん。わたしの "アイ" の力、甘くみないでね。そらくんっぽい写真のひとのアカがあって、試しに会話してみたら、やっぱりそらくんだったの。でも、なんか、つきあってるひとのことが、不安ってなってて」
半分はウソ情報なのだけど、たぶんそこまで、りーちゃんは、チェックまわっていないだろう。
「えぇ。そうだったのね」
少し、電話ごしのりーちゃんは、黙ってしまう。
「なにか、事情あるの?」
「え、うん。その」
「なによ?」
「ストーカー」
「うん」
「脅迫」
「うん」
「ハレンチな投稿と写真」
「あん?」
「捏造記事」
「あん?」
「身バレ要求」
「は! なにそれ」
「ですわね」
「ふざけないでよ。警察は」
「ふざけては、いませんわよ?」
「いや、りーちゃんじゃなくて、そのストーカー投稿者」
「うん。それでなのですが」
「あ、うん」
「まぁ、わたくしの魅力がパネェと?」
「いやいやいや」
「わたくしの声が、犯罪と?」
「いやいや」
「わたくし、罪深いと?」
「いやいやいや、それつっこみ待ち?」
「おほほほほほ」
なんだ、りーちゃん、そんなには、落ちてはいないのかな。
「なんだ、りーちゃん」
「およよよよ〜」
「いや、なによ?」
「泣いてるんですのよ。うぇーーーーん」
そうよね。
りーちゃんも
メンタルサイキョー配信者を語ってはいるけど、
素直だからね。
「うん。りーちゃん頑張ってるよ。それより、その投稿者なんなのよ。いつごろから」
「それが」
「うん」
「そらくんとのレンタルを依頼したあと、少ししてからなんですの」
「えっ」
わたしは、言葉がでてこない。
レンタルのバイトは、守秘義務もあるし、社長以外は、レンタル本人のわたししか情報を持っていない。
ほかのレンタルの子たちは、自分の受け持ちのを管理しているし、あとは、そらくんからの情報しか、漏れることはない。
「だから」
「そらくんを疑ったの?」
「ううん。そんなことは、しませんですわ」
「じゃ」
「ただ怖くなったし、ハレンチな画像とかは、誰に相談していいものか、わからなくって」
「それは、所属の事務所にでも」
わたしは、いいながら、はっと気づく。
「そうね」
「ねぇ、もしかして、事務所の関係者なの?」
「えぇ、わたしもそれを一番にあげていて、ますます混乱のさなかにありますのよ」
わたしも聴いて混乱してくる。
所属の事務所からの嫌がらせ。
まさか、そんなことは。
けど、そうでなくても、関係者ではあるのかもしれない。
そらくんとのことは、誰にも明かされていなくても、ミリロリ嬢に彼氏ができた、という噂を誰か流しているのかも。
「うん。事情ありがとう。それでなんだけど」
「はい」
わたしは、レンタルバイトのそらくんの依頼は隠したまま、さりげなく会話する。
「そらくんと、また会ったりはしないの?」
「わたくしも、スケジュールはその都度確認しているのだけど、空きができて一ヶ月に一日かしら」
「それじゃ」
「けれど、この日だけ逢いましょうって、わたくしが、勝手にそらくんの日にちまで、決めてしまっていいのかしら」
「そんなの、聴いてみればいいじゃん」
「ラルルンで、会話ほぼなくて、その自信がとても」
りーちゃんも精神面で弱っているのかもしれない。
そらくんには、空きがあったら、必ず押さえてと伝えてあるから、一回で済むはずだ。
「じゃ、この電話おわったらすぐにね?」
「えぇぇぇぇ」
「そして、すぐに知らせるのよ」
「うぉぉぉぉ」
「なにその変な声」
「しつれいしましたわ」
「それじゃ」
「あ、まってまってまって」
二つ、三つ話したあと、電話をやめにする。
そらくんは、まってるはずだ。
わたしは、休憩としてスタバに入って、冷たいハニーティーを頼む。
席を探して、ハニーティーを飲むかくらいの時間、十分くらいだろうか、したあとに、りーちゃんから電話がきた。
わたしは、席から離れて、店の外側で電話する。
「は〜い、アイよ」
「アイ〜〜〜〜」
「なにぃ?」
「# % ^ * & "" () ; ` // ? % ! ##」
「いや、なに言ってわかんない」
「きゃーいやーどわーーにぬなーー」
「余計、わからない」
「はぁはぁふぁ。とり乱したでございますわ」
「はいはい」
「わたくし」
「うん」
「勝ちとりましたわ。やってやりましたわ」
わたしは、おおかた予想はついているものの、聴いてあげる。
「なにをそんなに慌てて。そらくんとの話しでしょ」
「えぇ!」
「それで」
「勝った!!」
「いや、だから、なによ!?」
「おでーと、日時を設定して、好きいただきましたわ~~!」
それは、たしかに内容が気になるわね。
「それで、どういう内容だったのよ?」
「えっ、そんなハレンチな」
「そんな、えっちぃ会話したんかい!?」
「いやん。アイのえっちぃ~」
「さっさと、話さんかい」
「そんなぁ、でもぉ」
「いいからね」
「えぇ、ではまず、わたしたちの馴れ初めから」
「そこから?」
「は、省いて」
「だね」
"電話の内容でございますわね"
「あのぉ、そら、くん」
「はい」
「しばらく、あまり電話とかぁ、ラルルン、お返事できなくて、ホントに申し訳なく想っている次第でごさいますわーーーー」
「はい。りーさん」
「この旅は、なにとぞわたくしの不手際が重なり、大変長らく」
「いいですよ、りーさん」
「りーちゃんでございますわ。そして、なにより、変な噂のかずかずで」
「りーちゃん。いいですよ。それより、お身体とか、メンタルでまいってませんか」
「おやさしいですわーー!!」
「えぇ、そんなこと。とりあえず、配信で忙しいのはわかってます」
「およよよよ」
「そんな、泣かないで」
「だって、泣かせようとしてらっしゃるから」
「そんな、りーちゃん」
「りーちゃん、って、もっと呼んでぇ」
「りーちゃん」
「はい」
「りーちゃん」
「はい」
「あの」
「はい」
「それで、なんですけれど、話しがありまして」
「びくっ、ですわ。もしかして、もしか、わたくしに、愛想がつきたとか、もう、お会いしとうないとか、もしかし」
「いいえ。そんなことないですよ」
「それじゃ、そのぉ、なにかしらぁ?」
「また、逢いませんか」
「えっ」
「逢いたい」
「えっ。もう一回?」
「逢いたい」
「いやん」
「え、だめですか」
「いいですわよ~~!」
「それじゃ」
「でも、その前に、確認したいことがありますのよ」
「はい」
「わたしのこと、どう想っているのかしら」
「え、その、好き」
「えっ。聴こえないですわね」
「わざと、だよね」
「えっ、もう一回?」
「だから、好き」
「えっ、もう一回ですわね?」
「好き」
「ふーん。わたくしのことぉ、そんなに、そんなに、好き、ラブなんですのね」
「りーちゃん。やめてください。恥ず」
「ふーん。にやにやですわね」
「りーちゃん、だから、そのもう一度、デートしてください」
「ええ、いいですわよ。スケジュールは、それで」
"スケジュール確認のあと電話おわりですわね"
と、こんな感じですわ。




