お仕事のサブリーダーだし
わたしは百合っぽいよねと言われた。
もちろんシラクラだ。
百合じゃないし。
男性たちがあまりに頼りないから、頼れる女子のほうが好きになってきただけだ。
特にこういうお仕事をしだすと本当にそう思う。
参加したパーティで女子だけというのは多いし、男性参加のでも色目使いのわかりやすいのもあって、ほかの同僚メンバーの盾にならないといけない。
わたしが好きでそうするのだけど、そういう態度は、シラクラには百合にみえるらしい。
「それじゃシラクラさんは、わたしはタイプじゃ」
「タイプっちゃ好みに近い」
「いやどっちなの」
「頼れる女子っていいよね」
「クズ男子のいうセリフだね」
この前の愚痴を聞いていたはずだけど、いつの間にか好みの話しだ。
事務所のほかのメンバーは、笑うだけで参加しない。
ここも事務所ではない。
用具を貸し借りできる倉庫みたいなところだ。
部屋だけどね。
「いいから丁寧に」
「怪我は少しはよくなったんだね」
この前事務所に報告にいったときには、額と腕に傷をつくっていた。
依頼人と相手とのトラブルだったらしく、ビジネス上ではあったけれど、相当恨みがあったらしい。
シラクラに聞いたところ、結果的には依頼の内容は護衛をしてほしかったらしい。
「腕はまだ痛い」
「額のはそんなにではなかった?」
「包帯巻いてたら、仕事にならない」
「いいじゃん。怪我しながらのビジネスマンも様になるかも」
「そんなのいるかよ」
文句を言っているけれど、簡単な椅子に座っている。
一応怪我をみせてもらっている。
病院でも診てはもらっているけれど、反省しているのだ。
「……やっぱりあのときいけばよかった」
「そんなに悔やむなよ。なんか申し訳ないな」
「嫌な予感」
「へぇ」
わたしの嫌な予感は当たる、と想っている。
おそらくお仕事を続けるうちに自然と身についてきたのだろう。
男性たちの会話や連絡の頻度、女性たちの印象などを聴くとだんだんとわかる。
「ごめん」
「謝るなよ。でも、それじゃ今度食事しないか」
「……いいわよ」
「まじ?」
「シラクラさんがそれでいいなら」
「そうだな」
よかったねと周りにいるほかのメンバーがからかう。
だけど、わたしのミスかはわからないけれど、少なくともなんか感じがあったのだ。
倉庫では、いろんな道具がある。
わたしが買ったものもあるし、事務所が仕入れたものもあるらしい。
よくわからないのは、増えたり減ったりしているためだ。
鍵と電子キーがあり、倉庫部屋という名前のここで、ときどき集まることにしている。
周辺にはあまり人気のないような場所のビルだけど、シェアハウスという名前の看板もある。
怪しいけど。
鍵を渡されるのは登録して少し経ってからだ。
ほかのレンタル事務所からの潜入を警戒しているのだろう。
ときどき探偵事務所と案件がかぶることもある。
「道具なにか必要なのありそうかな」
「ひとまずは救急道具だな」
「一旦休むでしょ」
「そうも言ってられない」
「次のも入れたの?」
「次のは三日後だ」
額の傷は、隠すのは無理だろう。
包帯で巻かないと目立つ。
腕は長袖なら、なんとかなる。
「わたしその日助っ人になるわね」
「無理するなよ」
「また怪我したくないでしょ」
怪我人にあまり厳しくしたくないけれど、やはり人数は手間でもかけたほうがいい。
「事務所は手続きしてくれって」
「保険だけでしょう。それ以外は自己責任の自分始末」
「あまり事務所と喧嘩しないほうがいいと思うんだが」
なんで知っているんだろう。
以前のことがあってから、たびたび事務所には、連絡というクレームを入れている。
仮にもこのグループのサブリーダーとなっている。
本当にはリーダーなどいないのだけど、こういう曖昧なお仕事なため、だれかは必要だ。
「一応サブリーダーだから」
「リーダーいないだろ。それに、辞めるも辞めないも条件次第のお仕事」
「仕事だけど、やっぱりだれかは文句くらい言わないといけない」
レンタルの事務所は、いい意味で放置で悪い意味で放置だ。
登録はしやすいしお仕事もすぐだけど、辞めるときもすぐだ。
契約書は秘密事項も多く、辞めても基本的には続く。
入るときに辞めるときにも秘密厳守と言われるのだ。
その代わりに自己責任だから、稼げることは多い。
危険かどうかは仲間うちで測る。
「まぁなにか相談くらいはのるさ」
「じゃまずは怪我しないこと」
「優しいんだか、そうじゃないのかわからないな」
わたしだってわからない。
そもそもレンタルのお仕事に常識が通じることが少ないのだ。
探偵事務所のほうが、よほどわかりやすいのかもしれない。
あまり関わりたくはない。
シラクラが入れたのは三日後というから、この二日は、わたしは入れないようにした。
聞きたいこともあったため、倉庫に集まってからの二日後に、シラクラを呼び出した。
駅で待ち合わせだけど、少しだけ可愛い格好を選んだ。
このところ気分が落ち込みがちで、お仕事でもハードで気分を変えたいからだ。
「待たせたかな」
「いえ、平気」
「デートだな。可愛い格好じゃん」
「シラクラさんが素で言うと、胡散臭いですね」
「なに、お仕事なのこれ?」
「違いますけど」
「それじゃデート」
「まぁ勝手にして」
なんだかシラクラが浮かれている。
お仕事の場所では、冗談でそんなことを言っているのかと思っていただけに、思っていたより嬉しそうでなによりだ。
「よし、じゃどこに」
「あそこいくかな」
駅の改札に入っていく。
目的があったわけじゃなかったけれど、怪我も思ったほどじゃなさそうだし、お目当ての所を目指す。
電車は空いていた。
「そういう格好普段からしてるの?」
「普段っていうか、お仕事じゃないときにはときどき」
「センスいいな」
「シラクラさんこそ、なんかデートって感じ?」
「いいだろ。格好つけさせてくれ」
隣に座ったシラクラは、それなりに格好つけている。
単純だ。
お仕事の環境でも、こういったくらいに扱いやすいならいいのに。
通常あっているのがお仕事場所なため、キリッとしているかヘラヘラしているかで、好みとか意識とかしたこともない。
向かう場所は、あの場所だ。
シラクラはいったこともないだろうけれど、特にどこにいきたいとかは言っていないため、勝手に決めていいだろう。
電車のなかでは、服装の好みや髪型でなにかこだわりの話しをしていた。
「ここよ」
「降りるか」
駅のアナウンスのなか降りると、だんだんと混む時間なのか駅は人が多い。
「こっちだったかな」
「何番なんだ」
「ビルだから、向こう」
駅ビルに入ると、二階だったらしい。
よくわからないため、一度一階に下る。
「案内どこだ」
「あの人だかりじゃない」
通路の真ん中辺りで、柱のようなところをみんな見ている。
「やっぱりわからないよな」
「いつ来てもね」
ビルのショップはわかっても、それまでの通路で何度も迷う。
入ってきた場所もまた違っていた。
シラクラは、はじめてなのか案内の後ろからジッとみている。
「ファッションフロアに、インテリア、ゲームに」
「ファッションかな。雑貨もなんだけど」
「ファッションフロアふたつある」
「とりあえずそれじゃふたつね」
わたしが歩きだすと、こちらに来るも不思議そうだ。
「来たことないのか?」
「一度だけだったかな。でも、扱いは知ってる」
「よく来るところじゃないんだな」
三階にいくと、ほとんどがレディースだ。
夫婦が多いのか、それとも時間なのか、男性と女性で歩いているのがほとんどだ。
「よく来るっていうか、よく見るかな」
「紳士用のはなにもないのか」
「それは、上だったかな」
「あとで」
「いいわよ」
あまり離れて歩くのも変なため、少し距離を縮める。
「それにしても」
「なに?」
「こうして歩いてもお仕事みたいだよな」
シラクラの言いたいのは、わかる。
見るものや触るもの、どこか依頼に役に立たないかと、変装に役に立つかもと、お仕事道具を探す目つきになる。
けれど、一応これでもお休みの日なのだから、できるだけ忘れていよう。
「そうかな? シラクラさんはデートとかしないの?」
「それは彼女いないの、いないよねって言ってるよね」
「彼女とかいたら、こうして来ないか」
「そうでもない」
「どういう意味?」
「誘われたら来るだろっていうこと」
よく意味が、わからない部分がある。
彼女がいても、くるということか、それとも、誘われたら来るのは当然という意味なのか。
そのままフロアを歩くも、目当てのはこの上らしい。
エスカレーターで上り、またフロアを歩いていく。
ここのフロアは、若い世代らしい。
高校生の子もいる。
「ここのかな」
「いってきてもいいぞ」
「一緒に来てよ」
腕を引っ張る。
渋々だ。
それでもショップを歩きまわると、いろいろみている。
シラクラも買いものは、好きなのかもしれないと思う。
「この辺り似合いそう」
「着てみてもいいけど、そしたらシラクラさんもなにか着る?」
「レディースしかないぞ」
「メンズも寄るって」
試着室に持ち込みつつ、いくつか試す。
けれど、シラクラが持ってきたのは、どちらかと格好いい感じのだ。
私服の可愛らしいのとは違う。
「ねぇフリルとかのほうがよかったんじゃ」
「その顔でフリルとか着たら似合い過ぎるだろ」
「……それどういう意味さ」
さっきからときどき不思議なことを言う。
着替えて、どう? と声をかけた。
「似合うな。ていうかそのままだろ」
「なにが?」
「アオイさんが可愛い格好して似合うのは当たり前だし、誘われて断るやつは少ないだろってやつ」
「ふ〜ん? そっか」
いくつか着たあと、試着室をでた。
「意味わかってる」
「わかってるわよ。可愛いって言われたんでしょ」
「まぁ」
シラクラがどう思ってるか知らない。
わたしが選ぶものも、ここに来たのも、アイなら選びそうなもので、アイがよくここのブランドショップの袋を持っているからだ。




