表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あい/抵抗  作者: 十矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/100

年あけにVデビュー

 りーちゃんが側にいてくれる。

 そう思えば、少しだけ落ち着く。

 そらくんは、いまは、はいくずれさんといるだろう。

 ミリロリ嬢様のマネージャーがわたしなのに、りーちゃんがある程度の要領を教えてくれていたため、わたしのマネージャーは、カタチだけ確認したら、あまり言ってこない。

 わたしのマネージャーは、ミリロリ嬢様みたいなことになっていて、頼もしいような立場がよくわからない。


 灰色のジンセイが幾ら進んでも、灰色ではあるはずだ。

 けれど、少なくともVtuberとしてデビューさせてもらえることになったのは、りーちゃんとそらくんの力だ。

 それだけは、わたしの誇りにしよう。


 画面にもスマホにも時計を表示させているけれど、緊張からか始まりの時間を何度も確認してしまった。

 はじまりのセリフは、噛まないようにしよう。

 はじめのあいさつ文章が流れる。



 三、二、一……


 はじめまして。

 あけましておめでとうございます。

 デビューになるこの日に、集まっていただいたみなさまに、一瞬一瞬のわたしを楽しんでいただけるよう、これから頑張ります。



「みなさま、はじめまして。シルバーウルフと申します。あけましておめでとうございます。夜次五時の事前発表により、たくさんのコメントがありました。まだなにもわかっていないわたしを歓迎してくださり、ありがとうございます」



 なんだかはじめから、コメントがざわざわしている。

 なんだろう。


「見ため、こういう感じですが、どうでしょうか。見ためと同じだと思います」


 まだざわざわしている。


「自己紹介は苦手分野なため、はじめに……」


 いくつかのコメントを読むと、つまり性別のことらしいとわかった。


「あ、そうです。そうなんです」


 どちらか性別わからないとなっている。

 嬉しい。


「……それじゃナイショにしますね」


 ええええ、でうまった。

 ええええって言われましても。


「はい。それじゃ続けて、いくつかわたしの好きなもの」


 コメント欄がもう、ええええしかみえない。


「わたし狼の格好、けっこう気にいっていまして、色も灰色のなかでも灰色でして……」


 もうなにを言っても、ええええ、だ。

 ある程度違うコメントを拾うも、八割のえがいる。

 いいのかな。


 三十分の短くした配信で、お披露目と本当に自己紹介しただけでも、みなさんの反応が嬉しかった。

 ええええ。

 だけど。


 何度か丁寧にお辞儀したあと、配信をとめて、ちゃんと画面が閉じられているか確認したあと、部屋で待機していたりーちゃんをみると、すっかりうるうるしている。


「え、なんで泣いてるんですか」

「よかったですわぁ!!」

「そうなのかな」

「伝説級の狼になりますわよ!」

「そんなほめないでください」


 りーちゃんをなぜかわたしがなぐさめる。

 できるだけ、暗くなりすぎないようにはしたけれど、わたしにしてはしゃべったほうだ。

 りーちゃんの置き自然水で、ささやかなデビューかんぱいをして、そのあと各所あいさつをしていた。

 夜次五時の影響と営業を甘くみていた。


 配信終わりから一時間ほどしたあと、スマホでれむとさうの様子でもとみるついで、ニュースをみたら狼デビューとある。


「狼ってわたし以外にもいるんですね」

「……あかりさんどこを突っ込めばいいのですか?」


 りーちゃんがあきれるのがわかった。

 ニュースは、シルバーウルフのことで、コメント欄をええええで埋め尽くす。

 デビュー、一日めでファンが大勢と見出しだ。


「これわたしのことですよね。へぇ……そっか。ファンのかたできたんですね。ニュースって」

「鮮烈デビューですわ!」

「そんな……ほめニュースにのるほどじゃないですよ」

「あかりさん、もっと自己承認欲求あげあげにしてくださいまし」

「そんなこと言ってもですよ」


 自分のことながら、簡単な記事でもほめ記事があるのは、少し嬉しい。

 一日めでニュースになるなら、いい出来だったのかもしれない。

 まだ、わたしは甘くみていた。



 シルバーウルフ名義のアカウントは、つくったばかりで、ミリロリ嬢様もそこはフォローもなにもしてくれないため、登録時フォロー二、フォロワー三で、フォロワーのひとりは事務所だ。

 あとは、はいくずれさんが入ってくれて、もうひとりは、黙っているけれどおそらくそらくんだ。

 あまり聞かないようには、しているけれど、こっそりとそらくんはシルバーウルフの応援活動をしてくれているっぽい。

 シルエット発表の時に、二十名ほど来てくれたけれど、それがいまみたら、三百を越えている。


「承認欲求とは……」

「え、うそ……百も見ないうちに、三百って」

「通知はとめてあります?」

「それはコメントははじめのうちは、荒れるかもだからって、設定簡単にしかないですよ」


 そう話しているうちに、また一人。

 怖い。

 SNS怖い。


「まだまだ伸びますわよ!」

「これお話ししたほうがいいですよね」

「あ……わたくし少しおでかけの準備を……」

「ちょっと待ってください」

「あかりさんも狼なんですから、あとはご自由になさってくださいまし」

「うぅ……りーちゃんってところどころで反撃をしますよね」


 りーちゃんは立ち上がると、キッチンで片付けをはじめてしまう。

 でも、その通りなのだろう。

 できるだけ炎上は避けつつ、わたしが言いたい伝えたいことを現さないと、これからは新米でもヨジゴジの配信者だ。

 まだ続くフォロワーの数をみつつ、十分は考えてから発信する。


 みなさまありがとうございます。

 まだ伝えきれない部分はこちらで言います。

 わたしの配信は、きっと静かな配信が多くなります。

 そして、伝えたいことははっきり伝える者を目指しますね。


 伸び率がハンパない。

 これがVデビュー。

 リリスタの拡散は、思う以上らしい。


「あとは……明日にします! 明日!」

「そうですわね。それでは気分も替えて」

「でかけましょう! うん! スマホから離れてみます」


 せっかくでかけたのに、なぜかびくびくしてしまう。

 おおかみの、お、の文字の言葉がでてくるたびに、もしかして、わたしのネガティブなことかもとか考えてしまう。


「りーちゃん」

「なんですの」

「なにかお話しして」

「そうですわね……」


 スタバOO店にいる。

 なんで、ここのお店はOOなんだ。

 まるでおおかみじゃん。

 いやOOじゃない。

 これはゼロだ。


「なにか」

「スタバOO店って」

「それはなしで」

「なぜに!」


 りーちゃんが話題を探し続ける。

 仕方ないわねと、いちごマジフラペを眺めつつ話すのは、この前のふたり旅のことだ。


「あのとき当たりかもでしたよ」

「そうですわね。でも、アオイの尻尾のほうが逃げ尻尾が早いんですわ」


 あのあと、美容室にいった。

 一軒めでは、先にりーちゃんが軽めにはさみを入れてもらった。

 本格的に切らなくても、話しだけでもいいはずだけど、りーちゃんは嬉しそうだ。

 わたしは椅子で待っていると、ところどころでアオイさんについて聞いているのがわかる。

 わたしがカップで飲めるお湯を、三度ほど飲むと、りーちゃんがお会計になった。

 お話し聞けましたか、と出てから話すも、アオイさんのことではなかったらしい。

 けれど、二軒目にいき今度は、わたしが席に座りさっそく話題をだすと、あれ、と思うようになった。


「知り合いなんですけど髪の短い子で、男の子っぽくもみえる子なんで、よく間違いじゃって言われるみたいです」

「あぁ! ときどき来る子みたいですね」

「知り合いかなぁ、最近元気なくて、美容室もときどきしかって」

「そうなのかな。話しは明るいけれど、たしかに大変そう。イケメン」

「そうそう! でも、女の子なんですよ」

「そっかぁ、知り合いなんですね」


 気持ちどきどきしていた。

 男の子っぽい子もたくさんいるとは思うけれど、最近来るようになったらしい。


「ときどきなんですけど、おしゃれで変わったネックレスしてるんですよ。ほら、これ?」


 帰りがけにりーちゃんから見せられた、アオイさんがよくつけていたネックレスの写真をみせる。


「そうですね! おしゃれで可愛い。よく似合うんですよね」


 外にでてから、りーちゃんをみると驚いているのがわかった。

 手をとりぎゅっとすると落ち着いてから、車に戻る。

 わたしはアオイさんについて、ほぼ知らないのと同じだ。

 喫茶店の前のブルーで、レンタルのお仕事で、複数台スマホをつかいこなすヒト。

 それでも、わかるのもある。


「りーちゃんを置いていくなら、よほど言いたくないことがあるんです」



 同じように、フラペがくるくるする。


「お仕事……」

「そんなに危険なんですか」

「そうらしいですわよ。何度か、男女仲で間に挟まれたり、マッチング会場だったのに、中身は身体目的のだったり」

「そっ……か」

「いえ、アオイは充分対策はすると。でも、少々やりすぎるため、スタンガ……ビリビリするやつで感電させたり、煙のでるやつで雲隠れしたりとかそういう」

「忍者じゃないですか。すごいですね」

「そういう見方もありますのね! 現代版忍者はレンタルのお仕事なのですわ」


 そう明るく話しつつ、いちごが目立ち過ぎるため、少しずつ減らす。

 りーちゃんのは、まだくるくるしている。


「アオイさんも、りーちゃんのこと気にかけてると思いますよ。いろんな意味」

「あかりさん、しばらくはわたくしひとりで探しますわ」

「なんで」

「あかりさんは、これから活動に忙しいですし、あまりご無理なさると」

「マネージャーですよ。どこまでも」

「マネージャーって、そんなお仕事でしたか?」


 考えてしまう。

 マネージャーって……マネージャーって……


「そうです! マネージャーってそういう仕事なんです!」


 無理を通してしまった。

 けれど、あってるはずだ。

 今度、学習研修のときに質問してみよう。


 りーちゃんのフラペが少しずつ減っていくため、わたしも慌てて飲みはじめる。

 ぐるぐるしている。

 りーちゃんは、なぜ急に来ないでいいと言うのだろう。

 わたしもりーちゃんの役に立てるはずなのに。


 しばらくスマホを見ずに過ごし、狼の文字もなんとなく気にならなくなった。

 そらくんからだ。

 マナーにしていた。

 ため息をしつつ、リリスタのアカウントを開くと、もう九百は越えている。


「な、なにがあったの……」


 わたしが画面の数字で唖然とすると、りーちゃんが察して話す。


「ほら、ご覧なさいな。あなたの活動は、もうスタートしているんですのよ?」


 りーちゃんが意地悪だ。

 そうか、わかってきた。

 そらくんの第一彼女がわたしになったからだ。

 だから、それでわたしに対しての意地悪お嬢様になったんだ。


「マネですから……どこまでもりーちゃんのサポートします」


 こちらは意地になってきた。

 これがセカイに蔓延するという女のバトルなのだろうか。

 スマホをみるのは、しばらくやめにしよう。

 さうとれむに、ひとまずの話題だけ返信すると、そらくんには、また連絡しますとした。


「そんなに、わたくしのこと好きなんですの?」

「そう! 好きです!」


 わたしも笑顔で応対する。

 周囲にいた女性が、こちらをみている気がする。

 恥ずかしい。

 りーちゃんのせいだ。

 でも、いまの受けこたえで嫌いといえる人などいるだろうか。

 りーちゃんがにやにやしている。

 やっぱり罠だ。


「そう……ですの。そんなにわたくしのことが、好きなんですのね。そんなに好きなんですね。わかりましたわ」


 好きとかそんなに、連続で言うことない。

 りーちゃんと話すと火傷ばかりだ。

 好きとか言われ過ぎて、胃が痛い。

 わたしが言ったのだけど、これは罠だ。

 思い出せば、りーちゃんとの話しはそういったことの連続だ。

 どうして女のひとの愛人になったのか、もはや思い出せないけれど、それもそういう話しのきっかけがあったし、マネージャーの仕事も、喫茶店をやめにして別の場所にしようかと考えていたら、事務所でデビューしないかと言われた。

 マネージャー契約だった気がするのに、それはそらくんのほうで、気づけばデビューだ。


 たしかに、いちごはおいしかったけれど、もしかして、そらくんの第一彼女になったのもりーちゃんの罠で、実はなにかを誘う口実にさせられたのかもとさえ、ぐるぐる思う。


「おおかみは、りーちゃんですよ。騙すばっかり。人狼ゲームしたら、りーちゃんが王女さまの位置に居座る」

「貴女の心にするっとお邪魔さま。でも、違いますわよ。ゲームメイカーは、あかりさんですわ。手札が一番お強いんですもの」

「人狼は、人の心を支配するんです。りーちゃんは、そういうの好きなんでしょ?」


 スッと表情を消した。


 りーちゃんの目線には、本当にはなにが写っているんだろう。

 おかげさまでシルバーウルフのアカウントの存在は、すっかり忘れていた。

 りーちゃんがそらくんのことを聴いたのは、そらくんから着信があったかららしい。

 わたしの電源は、消していた。

 灰色の狼はお嬢様の使い獣なのか、それとも、いずれ喉元にかみつくのか。


 そういえば、お嬢様の影となって働く不明な黒いのがたしかいる。


 鳥なのか竜なのか、まだよくわからない。

 そのうちに、わたしは対戦することになるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ