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あい/抵抗  作者: 十矢
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クズなわたし

 わたしは、今日SNSで知り合った子と一日過ごす。

 集合場所は、いつも決めた場所。


 リリックスターと呼ばれるSNSでは、

 さまざまな年齢のかたが、その日の話題にのっかって、好き勝手なことを話す。


 わたしが、主に探している話題は、恋と小説と浮気と、それに大学の地元の話しだ。



 今回もわたしは、朝起きて軽めにチェックしたあと、すぐに朝の支度をする。

 大学の授業も二年生になれば、慣れたもので、電車で遅れないように、講座の教室につくと、あとはノートにひたすら授業の内容を写していく。


 ときおり教授のクセで「あぁ、研究の内容ははやめに」

 とか、

「統計と資料のエビデンスは」と、

 授業の合間に、三年次からはじまっていく卒業研究についての話しを挟んでいく。



 高校から、つきあっていたあの人とは、三年生の受験と卒業のきっかけで別れてしまい、一年フリー生活をしたためか、SNSの恋話しと、それに彼女彼氏たちの浮気別れ話しをきくのが、すっかりわたしは、ハマってしまった。


 講義終わりに、サッとその内容を復習すると、すぐにスマホを手にとる。


 "授業おわた


 わたしが発信すると、すぐに既読代わりの

 リリスタマークが二つはつく。


 リリスタは、月をイメージしていて、マークをタップすると、月が変化して既読したことになる。

 変化もいくつかあるけど、特に意味はないらしい。


「ふふふっ」


 わたしは、ニンマリする。

 ここ数ヶ月で、わたしのファンが、でてきたらしい。


 また次の講義にと移動して、昼食時間にも同じように


 "お昼きゅうけいひとり食べ


 発信すると、また既読がつく


「はや」



 ようやくこの日の講義をおえて

 サークルを少し参加したのち、帰宅するときに


 "終わた授業ねたわ、英語ムズ


 発信すると、また読んでいるらしく、

 すぐに既読がつく。


 そして、おつ、とか、ダルとか、

 ひと言の返信がくる。


 わたしも、それに、おつとか、それね

 とか、軽く返事をする。


「高校と同じね」


 わたしの高校生のときもそうだった。

 別のアプリで使うときにも、軽めの話題をだすと、大抵は速くに返事が返ってきて、ニつ三つくらい長さで、会話をする。


「でも、受験までだったなぁ」


 近く地元メンバーは、受験時期に、だんだんと返事をしなくなり、受験おわった、とおめでとう、をした辺りから、ひとは減っていった。


 あとのほうは、卒業おめでとうとありがとう、またね

 くらいだっただろうか。


「なつい」



 わたしは、帰宅する途中で、何度かスマホをたしかめて、無事帰宅する。

 最近では、大学のサークル仲間と、授業仲間がいるが、連絡事項と予定確認ばかりが多い。

 連絡事項だけの知らせが、ポンポンと何通か届く。


 どれもすぐに既読だけつける。

 返事はしない。


「ひとり暮らしもこういうときは、タルい」


 大学に入り、ひとり暮らしをはじめ、仕送りは、期待できないから、一年の途中からは学費のためにアルバイトをはじめた。


 アルバイトが休日の講義がおわると、ショッピングをしたり、ひとと遊んだりできるけど、結局サークル終わりには、すぐに帰ってしまう。


「買いものヨシ。料理タルい」


「掃除ヨシ。片付けまだ」


「講義の資料と、課題かぁ」



 仮に置いた机のイスに座り、カーテンを引いた部屋で、スマホを触る。


 "課題タルタル〜


 と送り、既読がついたのを確認しつつ、

 次のネタを送る。


 "+ わたしをみつけた時のこと、その気持ち


 これは、メタルタグという検索にもかかるみんなが発信したい内容をまとめるのに役に立つしおりだ。

 すぐに、返信がきた。


「ふふっ、なにこれぇ」


 三人が、答えてくれていた。


 "あなたとは、運命。感謝


 "みつけた。ラッキー。これからもよろしく


 "短編小説。かわよ



「はぁ。課題やろ」


 三人それぞれに、適度な答えを送ったあと、机で課題をはじめる。


 大学になると、パソコンでの課題も増えるため、高校のバイト代金で買ったもので、課題の内容と文書を打ち込む。



 しばらく、集中していたあと、

 さきほどの短文ネタに、新しいのが入った。


 スマホをみる。


 "あなたのつくる短文小説は、とても綺麗です。

 きっとあなたもキレイなひとなのでしょう!

 好き。


「やったね」


 ひとり照れていると、さらに追加で

 単独メッセージが届いた。


「えっ」


 "逢いたい

 近くだといいのに

 メッセージ、オケ?


「ひとり、きたね!」


 わたしは、余裕でメッセージを送った。


 "なんだ

 わたしに逢いたいんだ

 堕ちたね




 メッセージを何日も繰り返して、この相手と、今日逢うことになった。

 通りのショーウインドウに反射する自身をみて、全身を確認してみる。


 短い髪に、小さなリボンの飾りのついたヘアアクセサリー。

 薄い茶髪にあうように、ブルーのシャツに、茶色のダメージ長そでシャツ。

 少し短いスカートに、ハイカットブーツ。


 わたしには、似合わないとわかってる、

 ホワイトのネックレスに、おおきめなダイヤモンド。



 待ちあわせは、新宿西口駅前三分にある、妖精の像前。

 みると、 "迷宮最深部ドレス姿の像" とある。



「ホントは、どんな相手なんだろ。ま、ヨユーだね」



 言葉とは、反対にわたしは、ずっとドキドキしていた。


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