第17-3回「眠れない夜」
…………。
体が疼いて、どうにも眠れない。
朝は、まだこないのか。
ふと、頭の中によぎった言葉で目が覚めてしまい、枕から顔を上げて、周りに目を向けてみた。
窓から見える空の色は、まだ暗い。
耳に入ってくるものも、冷涼に流れる空気と、いびきだけ。
朝日を拝む時は、まだまだ先だ。
そう言ってくるように、俺の耳を、ただそれが抜けていくばかり。
疼く体を静めるように、板敷きの堅いベッドに手を付けながら、今日あった事を思い出してみる。
早朝に行なった強行偵察を、必死の思いで果たしてからは、平穏無事そのものだった。
朝を食べてからも、やり返すような敵の偵察も無く。
昼を食べて、少しだけこの休憩スペースで休んでから、夕食を摂った時も。
とうとう、敵の反撃や強行偵察が、この砦に襲いかかってくる事も無かった。
ふう、と溜まっていた息を吐き出して、真っ暗な天井に目を向けてみる。
平穏無事なら、それでいい……。
戦いばかりの日々よりも、何も無い事ばかりの方が、本来は良い事なんだから。
そう、言い聞かせるように、胸の中で呟いてみるが───。
頭の中で浮かんでくる、ホーホックの森での奪還戦や、あの、ゴーレムとの戦いが、目の奥でつい、ちらついてしまい、気持ちがソワソワとしてくる。
決して、消化不良と、言うつもりでは無いが……。
もっと、こう……動きたい。
自分の力を、もっと試してみたい。
使える力を、もっと、色んな人に、色んな場面で、使っていきたい。
体の中から、そう語りかけてくるような、そんな気がして仕方がなかった。
湧き立つ気持ちを静めるように、もう一度辺りに目を向けてみる。
他の遊撃手達は、皆眠っており、遠くで横になっているモーリーさんも、動く気配はまったく無い。
みんなが、眠りについている中で。
自分だけが、目を覚ましている。
手を握ったり、ついたりしながら。
独り、夜が明けるのを待っている。
ダメだ……眠れないや。
眠れないなら、仕方ないか。
モヤモヤと、まとわりつくような気持ちを振り払うように、胴当ても付けずに、枕元に置いていた、いつも腰に差している、あの剣を手にする。
体を動かせば、少しはこの疼きも、収まるだろう。
そんな事を、胸の中で呟きながら、スクリと立ち上がり、部屋を後にしていった。
-続-




