第1-5回「夕日の町」
・町にやって来ました。少しずつ主人公の周りに人が増えていきます。
漁村を出発して、かなり歩いてきた。
歩いている間に村のような所を二つほど通り過ぎたが、まだニッコサンガには辿り着きそうにもない。
空にもだんだんと、燃えるような色が広がっていく。
空の変わりゆくさまに、あの時の光景がふと浮かびあがってきた。
初めて荒野で目覚めて、ゴブリン共に追いかけられた、あの時の光景が。
スタックス支部長の口数もすっかり無くなって、今にも走り出しそうな勢いの足取りになっている。
またどくどくと心音が早まってきた頃、突然、前を行く彼が動きを止めた。
「どうしたんですか?」
「あそこ、見えるかい?」
彼の指差す先には、ぼんやりとした山のような物。
そして、白や赤褐色っぽい物が小さく、たくさん広がっているのが見えた。
あそこが、ニッコサンガ・・・・・・。
彼から教えられなくても、あそこが目的地だと言う事が、なんとなく分かった。
「あそこですか・・・・・・」
「ああ。ここまで来たらあと少しだ。受付に間に合わないかもしれないからな、少し急ごう」
「はい!」
彼の言葉に、俺も快く返事をする。
地を蹴って駆け出すその後ろ姿を、俺も離されないように、腕を振って追いかけた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ぼんやりとしていた物が、少しずつはっきりと、走って行くたびに見えてくる。
小さく、たくさん広がっていた物は建物だという事が分かり、そして、想像していたよりもそれはずっと多く、ずらりと立ち並んで広がっていた。
白っぽい建物は空からの光に照らされて、うっすらと赤みを帯びている。
その色合いは、つい美しいと思ってしまうほどに、綺麗だった。
「おーい、どうしたー!ついて来てくれ!」
彼の声に、はっと我に返る。
「あ、すいません!」
はぐれたらいけない。
うっすらとした赤に染まる彼の側へ、俺は小走りで駆け寄っていくのだった。
-続-
・次回が長くなる為、分割させていただきます。