第16-3回「激戦地でのひと息」
空高く昇った白い日は、絶え間なく押し寄せてくる雲に飲まれて、チラチラと見えたり、隠れたりを、繰り返している。
ヘクト11にやって来た、初日だったが───。
いきなりの仕事を、なんとか無事に終える事が出来た。
モーリーさんも、自分も、他の2人も、大きな怪我は無い。
偵察に来ていた敵が、ゴブリンばかりだったのも幸いした。
不意をついて2体を叩くと、向こうはすぐに怖じ気づいて、その場から逃走。
結果的に、俺達の戦闘は大きなものとはならず、五体満足で、再び砦に帰ってくる事が出来た。
「アールどうした。早く入れ」
「えっ、ああ、はい!」
また周囲の目も忘れて、ボーッとしてしまった。
モーリーさんの声で、ハッと我に返ると、すぐにその側へと駆け寄り、中へ足を踏み入れていく。
「俺が報告しておくよ。先に戻って、休憩していてくれ」
一緒に戦ってくれた2人組に、モーリーさんが声をかけている。
「そうか、悪いな」
「じゃ、お先に。俺もう腹減って仕方ねえよ……」
その言葉を、自然な様子で受け取った2人は、笑いながらその場を去って行く。
その姿を見送っていると、モーリーさんが振り返り、また口を開いた。
「アール、お前も先に行って休んでろ。遠慮しなくていいから」
「えっ」
彼の言葉に上手く言葉を返せず、ついその場で、立ち竦んでしまう。
どうしよう……。
ちょっとだけ側に居て、報告の様子も見ておきたい気持ちも、あるけれど……。
なんて考えながら、返す言葉に迷っていると、ポンと肩を叩いてから、言葉をさらに続けられた。
「いいから行け。別に大した事じゃない。そんなに気になるのなら、誰に言ったらいいか、とか。そういうのはまた後で、ちゃんと教えてやるから」
そう言いながら、行きなよ、と言うように、ポン、ポンと軽く肩を叩いてくれている。
気を遣って、そう言ってくださっているんだ……。
それなら、ここは彼の言葉に従って、甘えさせてもらおう。
「じゃあ、すいません。お先に失礼します」
「おう。しっかり食べて、ちゃんと休んでおけよ」
彼はそう言いながら、部隊長達が居るであろう、本部のある部屋の方へと足を進めていった。
去り行く彼を見送りながら、ふとお腹に手を当ててみると、忘れていた空腹感が、ポッと蘇ってくる。
ああ、腹減ったな。
初仕事……なんとか終える事が、出来て良かった。
よし、俺も食事にしよう。
緩んだお腹を摩りながら、どこからともなく漂ってくる、粥の甘い匂いに導かれるように、広間の方へと、足を進めていくのだった。
-続-




