第14-1回「進軍」
・時系列的には、前回の翌日になります。
昼下がり、食事を早く済ませた俺達は、ホーホックの森に向かって、薄暗がりな空の下を歩いていた。
昨日に話し合った手はずの通りに、自分を含めて、6人横並びの隊列を組んでの、各班が集まっての、進軍。
自分達の班列の先頭には、モーリーさんが居る。
その後ろにトミーさん、俺と続き、後ろにはリリスやエディさん、ディアナさん。
そして、それを挟んで、囲むようにして、ダンフォード商会に所属する兵や、アウターバンから派遣された兵達で、森攻めに動く先行班・中班・後方班が構成されていた。
聞こえてくる足音はバラバラだが、向かっている先は、皆同じ。
とはいえ、敵地にこれから攻めていくというのに……。
こんなに目立つような、進み方をしていても、大丈夫なのか……?
そんな不安が、森へ近づいていく度に、どんどん強くなっていく。
「安心してくれ。班ごとの分散は、森に入ってからになる」
と、出発する前に指揮官のオッドマンさんは言っていたし。
「アール。全体進軍は目立つ。目立つ分、注意を引く効果が期待出来て、場合によっては威圧の効果を与える事も出来る。副部隊長もバカじゃない。考えあっての発言が出来る人だ。信頼したらいいよ」
と、モーリーさんも、補足するように言っていたので、もっと安心するべきなのだが……。
防具の擦れる音と、バラバラな足音が聞こえてくる度に、どくどくと、胸の高鳴りが早くなっていく。
今にも、息が止まりそうだ。
どうにかなるだろう、なんて、甘い考えを持っていた、さっきまでの自分を叱りたい。
静かにしろ、と言い聞かせるように、胸を押さえてみるが───。
それはちっとも言う事を聞いてくれず、ますます鼓動が大きくなる。
とうとう、一番前の1列が、森の中へ足を踏み入れてしまった。
まだ明るい空は見えているが、どんどん向こうの方からは、鬱蒼とした深部が近づいてきている。
「よーし、止まれ!」
後ろから聞こえた指揮官の声で、ピタリと足音が止まる。
耳に入ってくるのは、どくどくとした鼓動と、木々を吹き抜けていく冷涼な風だけ。
止まった瞬間、前に居るモーリーさんが、斜め後方に目を向けている。
手を上げる指揮官。
彼の手を見つめている、周りの皆。
上がっていたその手が、グッと力強く、森の風を握る。
それを合図に、モーリーさんは何も言わずに、前を見据え直してから、足音を殺すようにして、深部へと歩き始めた。
彼が動いたと同時に、周囲に居た他の先行班も、ぞろぞろと森の中へと進んでいく。
後ろに居る彼女達も、躊躇う事なく、ぞろぞろと。
とうとうこれから、始まるのか……。
浮かんできた、先の見えない不安と共に、染み出てきた唾を飲む。
俺も、前を行く彼らの背中を見据えながら、足を進めていく事にした。
-続-




