第10-1回「平穏な朝」
「ごちそうさまでした」
朝粥を食べ終わった俺は、手を合わせてから席を立つと、食器を籠の中へと直して、食事番の方に軽く会釈をする。
歩きながら、両の手をグッと、突き上げて伸びをしてみる。
左右に動かす度に、う゛ん、う゛んと声が漏れ出てくる。
仮眠を挟みながらの夜の見張りから、あの偵察をなんとか終えて───。
久しぶりに今朝は、ぐっすりと眠れたな。
今回は悪夢も、変な夢も見る事は無く、目が覚めた時には気持ちの良い朝日が、鳥の鳴き声と一緒に、出迎えてくれた。
ああ・・・・・・。
気持ち良く朝を迎えられて、今日はなんだかいい気分だ。
また今夜から、仮眠を挟みながらの夜勤になるが・・・・・・。
この感じなら、明日までなんとか、頑張っていけるかも。
そう思えるくらいに、体も、心も軽快だった。
「おお、アール。おはよう」
「あ、おはようございます」
壁に背を向けて、また伸びをしていると、オッドマン副部隊長が目の前を通り過ぎながら、気さくに挨拶をしてくれた。
俺も彼に、笑みを含ませながら、挨拶と共に会釈を返す。
「あれ?アールじゃないか」
また、聞き馴染みのある声がしたので、ふと振り返ってみる。
昨日、食事中に話しかけてくれた、マーカスさんが優しい表情を浮かべて、そこに立っていた。
「ああ、おはようございます」
「今日は良い天気になるぜ!向こうの山に雲が懸かっていなかったからな」
どうやら彼の中で、その日の天気を見定める、何か基準のようなものがあるらしい。
その基準が何なのかは、よく分からないが・・・・・・。
気さくに話しかけてくれた彼に、うん、うんと頷き返す。
「そうなんですね。俺もそういうの、分かってきたらいいんですけれど」
「なあに。あんたは若いから、それぐらいの事ならすぐに覚えていけるよ!今日も頑張ろうな!」
そう言いながら彼は、空になったお椀を片手に、いそいそとお代わりを貰いに立ち去っていった。
去り行く彼に、俺も軽く手を振り返す。
まだ今日で、この砦の一員として入って2日目になるはずなのだが───。
心なしか、初めて来た時よりも色んな人と知り合えて、少しずつ、打ち解けられているような気がしてきていた。
・・・・・・さて、夜まで俺は、遊撃役なんだ。
いつ、何が来ても動けるように、万全の状態で、待ち構えておかないと。
伸びをグッと切り上げてから、ポンポンと胴当てを叩いて、少し緩んできた脛当てを、もう一度ギュッと締め直す。
食卓に着いている彼らの表情は、差し込む朝日と変わらないほど、穏やかなものばかり。
その様子を見ながら、もう一度大きく息を吐いて───。
いつ来るかも分からない、その時に備えて、持ち場へと戻る事にした。
-続-
・しばらく日常回が続きます。ここまでの拝読、ありがとうございました。




