第8-4回「小さな決意」
エディさんに代わるという、砦の遊撃役が自分に決まったという事もあり───。
あらためて彼から、交代に入る日数や、大まかな仕事の内容についての説明を、スタックスさんから教えてもらっていた。
話しているうちに、裏手から出たセシリーさんも、洗い終わった食器を手に持って、帰ってきている。
皿に残されていたあのオレンジも、話しているうちに手が進んで、もう皿の上から無くなっていた。
「今日、明日と休んで、次の護衛について向かったタイミングで、入れ替わる事になるけれど・・・・・・」
その言葉に、大丈夫ですよ、と頷き返す。
「すまないね、本当。入ったばっかりなのに」
「いえいえ、持ちつ持たれつですし。俺もずっと、お世話になりっぱなしですから。これでもっと力になれるのなら、平気ですよ」
「アール君、すまないね・・・・・・」
ようやく彼の表情も緩やかに、穏やかないつもの顔立ちに戻っていった。
話も終わり、それじゃあ頼むよ、と言いながらスタックスさんは席を立ち上がる。
俺も自分の皿を洗おうと、立ち上がった時───。
ふと、あの悪夢の事が、頭の中によぎった。
「アール君?」
そういえば、これも言おうとしていたんだよな。
ここで言うべきかな・・・・・・。
と、ふと窓に視線を向けると、オレンジ色の空も、すっかり暗くなっていた。
いや、ちょっとこれまで話したら長くなるな。
止めておこう────紙に書き残して、また後で話す事にしよう。
「いえ、大丈夫です。紙と書く物、借りてもいいですか?」
「うん。自由に使っていいよ」
去り際にもう一度支部長に頭を下げてから、あの空き皿を手に裏手から中庭へと足を運んだ。
ふと、視線を上に向けてみると、昨日と変わらず穏やかに、星がゆったりと輝いている。
───結局、言ってしまった。
支部長の力になりたい一心で、言ってしまった。
自分で言った手前・・・・・・俺、上手くやれるのかな。
先の読めない新たな仕事に、また胸が高鳴り、不安がふつふつと湧いてくる。
でも、いずれやらなきゃいけないはずなんだ。
あの護衛が上手く出来たんだ、今回だってやってやらないと。
そう思いながら、ふっと視線を上げて自分を鼓舞する。
頑張ろう、やらなきゃと思ったんだ。
思って、機会が貰えたんだ、やってみよう!
そう、心の中で呟きながら、井戸に向けて1歩を踏み出していく。
伸びる建物の影から覗く星も、心なしか強く───。
頑張れ。
そう言うように、輝いてくれているような気がしていた。
-続-




