第6-1回「初仕事の朝」
・今回から本格的に、移動パートが進んでいきます。
「気をつけて行ってくるんだよ!」
笑顔でスタックス支部長が、俺達を見送ってくれている。
町の外へ続いていく橋を渡りながら、俺も手を振っている彼に対して───。
無事に帰って来ますから。
そんな気持ちを込めて、頬を緩めながら手を振り返す。
頼りがいのあるディアナさんと、ちょっとそそっかしいトミーさん。
そして歳の近いリリスさん───。
彼女達の後ろに付き添いながら、今向かおうとしている、初仕事の集合場所の方へ足を進めていく。
橋を渡りながらふと左手に目を向けてみると、まだ空にほんのりと、夜の残り香が広がっていた。
橋の下に流れている、この川。
これが、どんどん、どんどん海へ、海へと流れていき───。
そして、周りの川と合流していきながら、流れ着いた村、カイサイにまで伸びていっているんだよな。
あんなに遠くから、俺はここまで───。
支部長や、皆の助けを借りて、お世話になって、今に至っているんだな・・・・・・。
橋の始まり、対岸に目を向けてみると、何か色んな物を積んだ無数の舟がつけている。
その前にはずらりと、色んな建物が広がっていた。
視線をまた、前を歩く彼らの方へ戻してみる。
これからどこへ行くのかな────。
ああ、これから行く場所は、どんな所なんだろう・・・・・・。
胴当て、脛当てを支部長に付けてもらっていた時に、あらためて教えてもらった、仕事の内容を思い返す。
前線のぎりぎりで、森と対面するように聳え立っている、『ホックヤードの砦』。
そこまで、物資を運搬する馬車に付き添いながら、護衛をするというものなのだが───。
その内容を聞かされても、映像がまったく頭の中に浮かんでこない。
昨日、ディアナさん達につけてもらった稽古の動き・・・・・・。
あの時の、良かったと言ってもらえた動きが、初仕事の中でも出来るかどうか・・・・・・。
頭にぐるぐると、浮かんでくる様々な不安を拭うように、何度も、何度も息を吐いているうちに、額から少しずつ汗が、じんわりと滲みだしてきていた。
「おーい、アール!どうしたんだ?」
「えっ!?は、はい!」
ディアナさんの声がしてつい、慌てて返事をする。
彼女達はもう、橋の真ん中辺りを過ぎて、かなり離れた位置にまで進んでしまっていた。
ボーッとし過ぎていた!急がないと!
両の腕を振り、彼らが待っている場所にまで駆け寄っていく。
「す、すいません。待たせてしまって・・・・・・」
「あんまりボーッとするなよ?はぐれたら大変だからな」
トミーさんが明朗な笑みを浮かべながら、野太い声で言葉をかけてくれた。
歩みを進め直す3人の後ろについて、すたすたすたと、また歩き続けていくと、少しずつ左手の方向に広がっていた、建物の様子が、はっきりと見えてくる。
橋も終わりに近づいたところで、俺達の目の前には門のような建物が立ち塞がった。
少し待ってろよ、と言ってから、トミーさんは窓口のような所へと歩いていく。
そうする間もなく、そこで何かを見せながら話し始めた。
「あの、ディアナさん。あれ何しているんですか?」
ふと気になり、横で待っている彼女に話しかけてみる。
「ああ、そうだな。ま、橋を通る前の身元審査、みたいなもんだよ」
「ここから先は一応、戦場だからね・・・・・・。アール君もそのうち慣れるよ」
ディアナさんの返事に、側に居るリリスさんも補足するように軽く教えてくれた。
リリスさんの、戦場、という言葉に思わず生唾を飲む。
ああ、遂にこれから、あの怖い所へ足を踏み入れていくんだな・・・・・・。
落ち着いていたはずの胸のドキドキが、また大きく響きだしてくる。
そうこうするうちに、おーーいと彼は手を振って、行けるぞと俺達に合図をしてくれた。
さあ、頑張らないと・・・・・・。
ふーっ、と1つ息を吐いてから、また歩みを進める彼らに付き添って、足を進めていった。
-続-




