かっこいい僕のサンタさん
サンタを信じる子供は見ないでね。サンタさんを信じる子供がサンタに会った時のリアルな行動を想像して書いてみました。短編小説です!
明日は12月25日。サンタさんが来る日だ。
クラスのみんなは「サンタなんかいないよ。」「まだ信じているの?」なんて言ってくるけど、耳の近くを飛ぶ蚊のようにその言葉が不快に感じる。
だけど、僕は見たんだ。かっこいいスーツ姿のサンタさんが、お願いしたゲーム機を、クリスマスツリーの下に置いたところを見たんだ...!
あの日は、部屋も暗くて、向かいにあるツリーの小さなライトだけが冷たい僕の部屋を照らしていた。そのライトが温かく感じ、睡魔に招かれるように意識がもうろうとした瞬間、ドアから確かに白く長い髭に、真っ赤な帽子を被ったサンタさんが現れたんだ。声をかけたかったんだけど、僕に見られたら、サンタさんがもう2度と来ないような気がして、自分の口を力いっぱい唇ごと嚙み締め、サンタさんが出ていくのを、辛抱強く待つしかなかった。
だけど!今年のクリスマスこそはサンタさんにお礼を言いたい!
そのために今日は、お母さんとサンタさんのためにクッキーを作って、手紙を書いて待つことにした。
「サンタさん、遅いわねー。」
「うん・・・。」
そろそろ焼き立てのクッキーが、だんだんと固く冷たくなってきている。ほんとうに遅いなー。サンタさん。
「今日サンタさん来ないのかなー?お母さん・・・。」
「きっと来るわよ。もう少し待ってみましょ。ね?」
「うん・・・。頑張って待ってみる。」
お母さんの優しい笑顔を信じて、もう少し待ってみよう。あの時のサンタさんにお礼を言うんだ。意志の強さをお母さんに見せつけるように僕は、重いまぶたをもう一度大きく開き、お母さんを見返した。
がちゃ・・・
「ただいまー。」
扉が開くと同時に、男性の囁き声がリビングまでほのかに響く。
「おかえり。あなた。」
「ごめん、残業が長引いて・・・。」
「遅いわよ、もう眠っちゃったわ、あの子。あなたに会うの楽しみにしていたのに・・・。」
セットして整っていた髪型も、アイロンをかけてあげたスーツ姿も乱れ、見るからに走ってきたみたい。息がまだ荒い。
「頑張って帰ってきたみたいだから、今回は見逃すけど、そのかわりあの子に手紙を書いてあげてよね。」
本当は、今夜のクリスマス、サンタさんに変装したお父さんが、柊太に直接プレゼントを渡してもらいたかったけど、こうなっては仕方がない。
「ああ、ほんとにごめん。」
背中を丸め落ち込む夫に優しく手を添え、ソファに寝ている柊太を起こさないように、椅子に座るよう、誘導して、ペンを握らせた。
「柊太が作ったクッキーも食べてあげて。」
「クッキーを焼いたのか?」
ゆっくり視線だけをクッキーに向け、そろりそろりとクッキーに手を伸ばした。
「うぅ、うまいよぉ・・・。」
「あの子が頑張って、作ったの。あと手紙も読んであげて。」
「うぅ、ごめんなぁ。柊太~。」
冷えてしまった、焦げたクッキーを、かわいらしい少女のように小さく頬張り、もう片手で手紙を握り、涙がじりじりと夫の頬を伝っていく。
「柊太に申し訳ないと思うなら、気持ちを込めて手紙を書くのね。」
そう助言すると、夫はすぐにクッキーを食べ上げ、ペンを握り直し、手紙に強く押し当てた。
「クッキーと手紙ありがとう。とってもおいしかったし、うれしかったよーっと。えーと、今日しゅうたくんに会えなくてごめんね。」
「よし、書けた。」
手紙を書き上げた夫は、後悔したようにソファで眠る柊太を見つめた。
「かっこ悪いお父さんだな、俺。」
「そんなことないわ。確かに、いまは少し自分のことを惨めに感じるかもしれないけど、こうやって夜遅くまで家族のために働いて、柊太のために欲しがってたプレゼントも買ってあげて。わたしにとって、柊太にとって、充分、かっこいいお父さんよ。」
ぼそっと零したその言葉に私は納得いかず、机にぐったりしている夫の手を両手で包み、頬が少し赤く染まって、素直な気持ちを夫に伝えた。
「うーん。は!」
カーテンの隙間から差し込む光が、僕に朝が来たことを告げてきたと同時に、体を跳ね起きあがらせ、何かを必死に求めるように、リビングに急いで向かった。
「お母さん!、サンタさんは!?」
「おはよー柊太。サンタさんなら来てたわよー。ほら、プレゼントもツリーの下に置かれているわ。」
「どうして起こしてくれなかったんだよー!」
「起こしても、起きなかったのよー。」
「えぇー。」
もおー。お母さんちゃんと起こしてくれたっていいのに。サンタさんにお礼言いたかったなー。
「大丈夫よ。ありがとうの気持ちはサンタさんに伝わってるわ。」
「本当に?」
「そうよ。サンタさんから手紙も預かってるわ。読んでみなさい。」
そう言われ、机の上のほうに目を向けると、確かに見覚えのない手紙がある。なんて書いてるんだろう?と惹かれるように手紙に手を伸ばし、書かれている文字を読んだ。
「お母さん。来年も一緒にクッキー作ろうね!」
「ふふっ。頑張って作りましょうね。」
はぁ、はやくクリスマス来ないかなー。
いかがだったでしょうか。短いストーリでしたが、心がほのぼのしてくれたら、作者としてはうれしい限りです。私は中一のころにサンタの正体を親から聞きました。びっくりです。子供のアイドルのサンタさんが親なんて・・・。まだ文章はつたないですがこれから文章を磨いていくので、見守っていただけたらなと思います。こんどはファンタジーな物語を書いてみたいですな。ほなまた~。