表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の俺は今日も死ぬ  作者: 和水鯛(なごみたい)
2/4

第一話 物語のはじまりはじまり

——20××年。世界は変わった。


何の前触れもなく、突然、それは現れた。

まるで神の気まぐれのように。


ある日、太平洋のど真ん中に、それはあった。

昨日までの地図にも、歴史のどの記録にも存在しなかったはずの巨大な大陸が、まるで最初からそこにあったかのように、悠然と広がっていた。


各国の政府は混乱し、学者たちは言葉を失い、軍はただ戸惑った。

GPSは沈黙し、衛星写真はありえない光景を映し出す。


「こんな馬鹿な……」


誰もがそう呟いた。

地盤隆起? そんな次元の話じゃない。

天変地異? それで説明がつくようなものじゃなかった。


だが、それは確かに「そこにあった」。

幻覚や錯覚なんかじゃない。

人が歩けるだけの地面があり、山があり、川があり、吹き抜ける風の匂いまで感じられる——確かな現実として、そこに。


当然、世界はすぐに動いた。

未知の大陸、未知の資源、未知の生命。

これが何なのか、何を秘めているのかを探るために、各国はこぞって先遣隊を送り込んだ。


国連主導の調査隊。

各国が誇るエリート研究者たち。

そして、軍の精鋭部隊——。


彼らは皆、期待と不安を胸に、その未踏の大地へと足を踏み入れた。


だが、それが悪夢の始まりだった。


最初の調査隊が上陸してから数日後、彼らは忽然と姿を消した。

最後に送られてきた映像を見た者は、皆、息を呑んだ。


——闇。

どこまでも広がる、地獄の底のような暗黒。


その闇の中から、“何か”が現れた。


鋭い爪を持つ巨躯。

蠢く触手。

炎を纏う獣。

人の形をしながらも、人ではない“異形”たち。


彼らは、先遣隊の人間たちを喰らい、引き裂き、踏み潰していった。


悲鳴が響く。

銃声が鳴り響く。

それでも、惨劇は止まらなかった。


そして、映像は唐突に途切れた。

——それが、彼らの最期だった。


この大陸には、人類の常識が通じない。

この大陸には、人類が未だかつて出会ったことのない脅威が存在している。


各国は事態を重く見て、最精鋭の部隊を送り込み、慎重に調査を進めた。

そして、その過程で驚くべき事実が判明する。


この大陸には“大穴”と呼ばれる巨大な裂け目が存在し、そこから無限に怪物たちが湧き出している。

それだけではない。

この大陸には、人類に似た異種族が住んでいたのだ。


彼らは言った。


「この大陸は、遥か昔から“迷宮”と繋がっている」

「そして、その迷宮の奥底から、果てしなく怪物たちが生まれ続けている」


彼らは長い年月をかけ、怪物と戦い続けてきた。

だが、迷宮の奥深くから絶え間なく現れる怪物を封じる術も、完全に殲滅する手段もなかった。

この戦いは、彼らの文明が誕生するよりも、遥か昔から続いていたという。


「……私たちだけでは、この戦いに勝つことはできない」


だからこそ、彼らは異世界からの訪問者——すなわち地球の人類に、救いの手を求めたのだった。


共通の脅威、迷宮の怪物たちに立ち向かうために。

世界の存亡を賭け、人類と異種族は手を取り合うことを決意する。


——それは、新たな時代の幕開けだった。


長き戦いの果てに、人類はこの大陸に都市を築き、迷宮の調査と攻略を日常としていった。

人々は富と力、そして名誉を求め、次々と迷宮へと挑んでいく。


そして、時は流れ——


かつて世界を震撼させたこの大陸も、今では冒険者たちの活躍の舞台となった。

大穴の奥深くには、未だ解明されていない神秘が眠り、数えきれぬ猛威が待ち受けている。


だが、それでも、人々は挑み続ける。

夢を見て。

未知を求めて。

名声を掴むために。


そして今日もまた、新たな冒険者たちが、大穴の闇へと足を踏み入れる——。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ